【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
最近流行っている電気泳動法によって遺伝子型を求める問題の背景や、マイクロサテライト、DNA鑑定について講義します。
●電気泳動法:ゼリー状のゲルにDNAを注入し、電場をかける。DNAはリン酸部分が負(-)に帯電しているので、+の方向に進む。
(DNAがどちらの方向に進むのかはよく問われる。)
●マイクロサテライト(マイクロサテライトDNA):1~8塩基程度の短い塩基配列を繰り返し(リピート)の単位として、ゲノム中に数個から数十個直列に並んでいるDNAの配列のこと。リピート数が変化する突然変異率が高いため(遺伝的多型の程度が極めて高く)、個体識別などに用いられる。
●分子が大きい(つまりDNAが長い)ほうがゲルの中を進みにくく、移動速度が遅いので、DNAを長さごとに分けることができる。
*あらかじめ長さがわかっているDNA(マーカーという)を購入し、一緒に電気泳動を行えば、マーカーのバンドとサンプルのバンドの位置を比べることで、長さ未知のDNAの長さを特定できる。
●マイクロサテライトは、数回から100回を超えて繰り返す場合がある。
●遺伝子をホモに持つ場合、そこから生じるPCR産物を電気泳動で流すと、ヘテロに持つ場合より(DNA断片が多くできるので)バンドが太くなる場合がある。つまり、実は、電気泳動は、DNAの長さだけではなく、DNAの相対的な量も推定できる実験法なのである(そのバンドの明るさをコンピュータ処理することで相対的な量を推定できる)。
●2塩基から数塩基の繰り返しをマイクロサテライト、数塩基から60塩基の繰り返しをミニサテライト、それ以上の塩基の繰り返しをマクロサテライトと呼ぶこともある。マイクロサテライトの例には動画に出てきたCAのリピートがある。ミニサテライトの例にはテロメア様配列の繰り返しがある。
●ハンチントン病の場合など、遺伝子に近い位置にある繰り返し回数の異常が疾患を引き起こすことが明らかになりつつある。
●本来は、サテライトDNAは、真核生物の染色体を断片化した際に、大部分の配列と塩基組成が異なるために、異なる分画に分別されるDNAを指す(その領域が、単純な塩基の繰り返しであることが分かった)。
●1918年、7月17日未明、ロシア皇帝一家は起こされ、民家の地下室に移動させられた。そして、その地下室で、激しい銃撃音とともに、ロマノフ家の処刑は断行された。血友病を患っていたアレクセイや、皇女アナスタシアも、そこで命を落とした。
1920年、アナスタシアを名乗る一人の女性がベルリン運河から救出された。「美しい皇女は、実は処刑から逃れていたのだ!」という、このドラマチックな物語は、当時大きなブームとなった(実際、アレクセイ皇太子と、皇女マリアかアナスタシアのいずれかの遺骨は、見つからなかった)。
彼女の死後、遺伝学の法則を使って、彼女が本当にアナスタシアだったのかが判定された。
ヨーロッパ人は、あるDNA領域に、5種類の対立遺伝子をもつ(A1、A2、A3、A4、A5)。
皇帝と皇后のDNAが遺骨から採取された。
皇帝の遺伝子型はA1A2であった。皇后の遺伝子型はA2A3であった。
そして、アナスタシアを名乗っていた女性のDNA(それは彼女の死後、彼女が外科手術を受けた際に保存されていた組織から採取された)を解析した結果、彼女の遺伝子型は、A4A5であることがわかった。
他のいくつかのDNA領域についても解析が行われたが、同様の結果となった。
*「マイクロサテライトを遺伝子と読んではならない」と言っていますが遺伝子の中に繰り返し配列がある場合もあります。
0:00 電気泳動法による遺伝子型の推定
3:54 マイクロサテライト・DNA鑑定
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