ナイル川に存在するダム。
エジプト南部に位置し、1970年に完成した。
第二次大戦後、独立したエジプトではナセルがダム建設を指導。
1970年にアスワンハイダムが完成した。ダムによってできた湖はナセル湖と名付けられた。
ナイル川が毎年起こす氾濫(洪水)は、エジプトに肥沃な土壌を提供していた半面、純粋に家屋やインフラを破壊する災害であるし、水がたまって虫が湧き、伝染病の原因ともなっていた。
ダム建設によって洪水が劇的に減少し、エジプトの生活・衛生環境は大きく改善した。
ダムには大規模な水力発電所が建設され、大量の電力を供給した。
この電力が、エジプトの工業化の原動力となった。
ダムの完成によって、一年中安定的に灌漑用水が確保できるようになった。
により、農業生産が増大した。
かつては洪水の時期は農地が使えなかったが、洪水の劇的な減少により、一年中農業を行えるようになった。
これにより、エジプトで
の栽培が盛んになった。
灌漑農業の発展も、農業生産の増加を後押しした。
ダムの弊害は、主に土砂流入の減少による。
かつては、洪水によって肥沃な土(沃土)がエジプトに供給されていた。
洪水の減少によって沃土が供給されなくなり、エジプトでは肥料を大量に使わなければならなくなってしまった。
現在では、エジプトは世界的な肥料の輸入国となっている。
上流から運ばれる土砂が減少したため、河口部の三角州では海岸浸食が進行している。
ダムによって土砂が堰き止められ、大量の土砂がダム内に蓄積され続けている。
これにより、ダムの貯水量が減って機能が低下することが懸念されている。
アスワンハイダムの建設により、古代エジプトのラメセス2世が建造したアブ・シンベル神殿が水没することになった。
ユネスコはこれを防ぐため、神殿を高台に移築して遺跡を保存した。
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