白い革命
白い革命
革命シリーズ第二弾です。緑の革命とは違いインド限定のお話ですが、重要度はかなり高いのでしっかり押さえていきましょう。
「白」とは生乳のことです。つまり、白い革命とは
1970年代以降、インドで生乳の生産が急増した現象
のことです。
インドでいう「乳」は、牛だけでなく水牛の乳も含まれるため注意が必要です。さっき「牛乳」ではなく「生乳」と書いたのはそれが理由です。皆さんも気をつけましょう。
インドの食生活
インド人の多数を占めるヒンドゥー教徒は牛や豚の肉を食べない上に、ベジタリアン(肉を一切食べない)も全人口の3割弱います。
牛や豚の肉を食べない人であれば鶏肉など別の肉がありますからまだいいですが、ベジタリアンは他にタンパク源を探さなければいけません。そこで、そのような人々は主なタンパク源として乳製品を食べるのです。
さらに、鶏肉など別の肉を食べる人でも、年がら年中鶏肉ばっかり食べているわけでもなく、かといって牛肉や豚肉は食べられないのでそういった人たちも乳製品はしっかり食べます。
そういうわけで、インドは物凄い量の乳製品を消費します。一人あたりの消費量も欧米諸国より多いです。
まあ、考えてみれば納得かもしれません。インドカレー屋さんに行ってみれば、カレーのルーの中にチーズが入っているやつが必ず一つはあるはずです。それからチーズナンもあります。チーズナンおいしいですよね、、、
このようにインドでは古くから乳製品の消費が盛んなのですが、近年になって生乳の消費も増えているというのが白い革命の影響です。詳しくみていきましょう。
白い革命とは何か
なぜ、生乳の生産が急に増えたのでしょうか。それにはいくつかの理由があると言われており、
- 乳牛の品種改良
- 飼料の改善・・・緑の革命の影響
- 酪農協同組合の設立
などがあるのですが、特に3つ目の「酪農協同組合の設立」が大事です。今回はこれに絞って解説していきましょう。
酪農協同組合
インドでは、多くの零細農家が牛を持っています。日本の多くの農家がトラクターを持っているように、トラクターの代わりに牛を持っているのです。
そのほかにも、乳を搾るために牛を飼っている農家もいます。牛なら特に餌を与えなくても、その辺の草を食べさせておけば勝手に育って勝手に乳を出してくれるので経済的です。
牛の主な役割は畑を耕すことですが、副産物として(牝牛なら)乳を出してくれます。しかし、これまではその乳は自家消費される程度で、そんなに大々的に市場に乗るものではありませんでした。
自家消費しても別に良いのですが、売ったら農家の収入になりますし、生乳や乳製品の需要もあります。そこで、この零細農家が持っている牛の乳を有効活用しよう、市場にどんどん乗せようということで、行政主導で酪農協同組合が設立されました。
酪農協同組合のおしごとは、農家から乳をたくさん集めてきて、加工・貯蔵して販売することです。
農家一人一人が搾った乳を加工して、包装して、問屋に卸して、ということまでできるはずがありません。農家は他にもやらなければならない仕事がたくさんあるからです。問屋にしても、そんな小口の取引先が大量にあるような状態はめんどくさいことこの上ない。
しかし協同組合があれば、そのような問題が一気に解決されます。販売に必要な作業を全部やってくれるので、農家は乳を搾って農協に渡すだけでいい。問屋も、農協とだけ契約すればいいので手間が減って楽です。
このように、酪農協同組合が設立されたことで、農家が牛乳を販売するハードルがぐっと下がり、農家が生乳を売りやすくなりました。
これに加え、1970年代以降になると低温物流網が次第に整備されていったことも、白い革命の重要な因子の一つです。
牛乳は常温で放っておくとすぐに腐ってしまうのは皆さんもご存じでしょう。ですから、生乳を市場に乗せるためには、低温を保ったまま輸送し、加工し、店頭の冷蔵庫に並べる必要があるわけです。特にインドは経済発展が遅れていましたから、近年になってようやく生乳が市場に乗るようになりました。
このような事情が重なった結果、市場に流通する生乳の量が激増し、これが「白い革命」と言われたわけです。
まとめ
白い革命とは、
「1970年代以降、インドで生乳の生産が急増した現象」
で、これは
- 酪農協同組合の設立
- 乳牛の品種改良
- 飼料の改善
- 低温物流網の整備
によりもたらされました。
現在では、零細農家にとって生乳の販売は貴重な収入源となり、彼らの生活を支えています。