白い革命
簡単なまとめ
1970年代以降、インドで生乳の生産が急増した現象を、白い革命と呼ぶ。
- 緑の革命による飼料生産の増加
- 酪農協同組合の設立
- 低温物流網の発達
などによって起き、
- 農民の所得向上
- 栄養状態の改善
などのよい影響をもたらした。
白い革命
1970年代以降、インドで生乳の生産が急増した現象
のこと。「白」とは生乳のことです。
インドでいう「乳」は、牛だけでなく水牛の乳も含まれるため注意が必要です。
「牛乳」ではなく「生乳」と書いたのはそれが理由です。皆さんも気をつけましょう。
要因
- 緑の革命による飼料生産の増加
- 酪農協同組合の設立
- 低温物流網の発達
などが主な要因です。
特に酪農協同組合の設立は重要で、これにより零細農家でも酪農に参入することが可能になりました(詳しくは後述)。
影響
- 農民の所得向上
- 栄養状態の改善
などのよい影響があったとされています。
特にインドでは酪農専業の農家は少なく、多くは田畑を耕しながら生乳も販売する零細農家であり、牛も主に労役用に飼育されています。
畑を耕してもらうついでにお乳も出してもらって、それも売れて二重にお得という状態になるわけです。
補足~酪農協同組合
インドでは、多くの零細農家が牛を持っています。日本の多くの農家がトラクターを持っているように、トラクターの代わりに牛を持っているのです。
牛の主な役割は畑を耕すことですが、副産物として(牝牛なら)乳を出してくれます。しかし、これまではその乳は自家消費される程度で、そんなに大々的に市場に乗るものではありませんでした。
自家消費しても別に良いのですが、売ったら農家の収入になりますし、生乳や乳製品の需要もあります。そこで、この零細農家が持っている牛の乳を有効活用しよう、市場にどんどん乗せようということで、行政主導で酪農協同組合が設立されました。
酪農協同組合のおしごとは、農家から乳をたくさん集めてきて、加工・貯蔵して販売することです。
農家一人一人が搾った乳を加工して、包装して、問屋に卸して、ということまでできるはずがありません。農家は他にもやらなければならない仕事がたくさんあるからです。問屋にしても、そんな小口の取引先が大量にあるような状態はめんどくさいことこの上ない。
しかし協同組合があれば、そのような問題が一気に解決されます。販売に必要な作業を全部やってくれるので、農家は乳を搾って農協に渡すだけでいい。問屋も、農協とだけ契約すればいいので手間が減って楽です。
このように、酪農協同組合が設立されたことで、農家が牛乳を販売するハードルがぐっと下がり、農家が生乳を売りやすくなりました。
これに加え、1970年代以降になると低温物流網が次第に整備されていったことも、白い革命の重要な因子の一つです。
牛乳は常温で放っておくとすぐに腐ってしまうのは皆さんもご存じでしょう。ですから、生乳を市場に乗せるためには、低温を保ったまま輸送し、加工し、店頭の冷蔵庫に並べる必要があるわけです。特にインドは経済発展が遅れていましたから、近年になってようやく生乳が市場に乗るようになりました。
このような事情が重なった結果、市場に流通する生乳の量が激増し、これが「白い革命」と言われたわけです。