ヒンドゥー教
ヒンドゥー教
インドの社会・経済に大きな影響を与えている宗教です。信者も多く、約10億人。実は仏教よりも信者数が多いのです。
分布
インドを中心に、周辺地域に広がっています。
- インド
- ネパール
では、ヒンドゥー教徒が多数派となっています。
- バングラデシュ
- スリランカ
では、ヒンドゥー教徒は少数派ですが、一定数の信者がいます。
他にも、インド人移民(印僑)の多い地域にもヒンドゥー教徒が住んでいます。
- シンガポール
- ガイアナ
- フィジー
などがその例です。
また、インドネシアのバリ島ではインドから遠い昔に伝わったヒンドゥー教が残っており、バリ・ヒンドゥーと呼ばれています。
カースト制度
ヒンドゥー教の大きな特徴の一つにカースト制度があります。
カースト制度は人々の身分を決める制度で、身分の貴賤と職業が生まれながらに決まっており、一生変わることはありません。低いカーストに生まれたら一生差別されて暮らすことになります。
差別から逃れるためには、
- 他の宗教に改宗する
- これまで存在しなかった新しい職業に就く
といった方法しかありません。
カースト制はヒンドゥー教の教えに基づいた制度なので、他の宗教に改宗すればカースト制から逃れられます。そのため、低いカーストを中心にイスラム教への改宗が相次ぎ、インドでは人口の1割程度がイスラム教徒となっています。
新しい職業という逃げ道もあります。ヒンドゥー教徒の職業は世襲制で、子は親の職業を継ぐことが基本とされています。しかし、これまでなかった新しい職業が誕生すると、もともとその仕事をやっていた人がいないので誰でも自由にその職業に就くことができるようになります。
有名な例がIT産業で、主に低いカーストの人々が、収入や社会的地位を上げるために続々とIT産業に参入しています。
社会・経済への影響
食生活
- 牛は神聖だから食べない
- 豚は不浄だから食べない
- 魚介類も食べない
というのは基本です。
また、ヒンドゥー教徒にもいろいろいまして、
- 完全ベジタリアン(肉を一切食べない)
- 鶏肉ならOK派
がいます。
したがって、一人当たりの肉・魚介類の消費量が極めて少ないことが特徴です。牛肉、豚肉はほぼゼロです。
また、ベジタリアンの人は主に乳製品でタンパク質を摂るので、乳製品の消費量が極めて多くなります。一人当たりの消費量は欧米より多いです。
インドカレー屋さんを想像すると分かりやすいかもしれません。バターチキンカレー、チーズナン、ラッシーなどなど、乳製品が意外と多いことに気付くはずです。
ちなみに、近年インドの経済発展に伴う所得水準の向上、価値観の変化などにより、鶏肉ならOK派が増えて鶏肉の消費量が増加しており、これをピンクの革命と言ったりします。かなりマニアックですが、私大や難関大学志望の方は覚えておいて損はないでしょう。
宗教都市バラナシ
ガンジス川のほとりにある街、バラナシはヒンドゥー教の聖地とされており、常に多くのヒンドゥー教徒が巡礼に訪れ、世界的にも有数の規模を誇る宗教都市となっています。
他教徒との軋轢
インドではヒンドゥー教徒が圧倒的多数とはいえ、イスラム教やシク教など他の宗教も無視できない勢力を持っているのは確かです。
過去にはシク教寺院への攻撃、モスクの破壊などの事件も発生しています。