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惑星科学チャンネル Planetary Science Channel

月のクレーター年代学が示す太古の地球に降った小惑星シャワー【論文紹介】

次の動画:冥王星の裏側に隠された内部海の痕跡(NASA New Horizons探査)【論文紹介】

概要

動画投稿日|2020年11月20日

動画の長さ|5:30

2020年7月21日にNature Communicationsで発表された論文で、月探査機かぐやの画像データを用いたクレーター数密度の測定によって、約8億年前に地球と月に隕石シャワーが降った可能性が示されました。この論文のポイントを解説します。 (目次) 0:00 地球の衝突史 0:45 かぐやのデータを用いたクレーター年代学 1:51 コペルニクスの形成年代の矛盾 3:07 8億年前のスパイク・モデル 4:11 地球環境への影響 4:33 クレーター年代学の注意 (参考文献) Terada, K., Morota, T. & Kato, M. Asteroid shower on the Earth-Moon system immediately before the Cryogenian period revealed by KAGUYA. Nat Commun 11, 3453 (2020). https://doi.org/10.1038/s41467-020-17115-6 Zellner, N.E.B. and Delano, J.W. 40Ar/39Ar ages of lunar impact glasses: Relationships among Ar diffusivity, chemical composition, shape, and size. Geochimica et Cosmochimica Acta 161, 203-218 (2015). https://doi.org/10.1016/j.gca.2015.04.013 Hiesinger, H., van der Bogert, C. H., Pasckert, J. H., Funcke, L., Giacomini, L., Ostrach, L. R., and Robinson, M. S. (2012), How old are young lunar craters?, J. Geophys. Res., 117, E00H10. https://doi.org/10.1029/2011JE003935 (映像素材) Pixabay, SpaceEngine, Rice University, Lunar and Planetary Institute, NASA, ESA, JPL, 大阪大学, 中国中央電視台(CCTV) (字幕全文) 地球史において、天体衝突が気候や生命の進化に与えた影響は甚大なものがあります。約5億4千万年前のカンブリア大爆発以降、生命は少なくとも5回の大量絶滅を経験しており、そのうち約2億年前の三畳紀末大量絶滅と、6500万年前の白亜紀末大量絶滅に関しては、天体衝突が原因であった可能性が指摘されています。 しかし地球の表層は浸食や地質活動によって常に更新されていくので、これよりも古い時代の衝突史に関してはほとんどわかっていません。そのため、表面更新が少ない月面のクレーター数密度を調べることで、地球―月系の衝突史が制約されてきました。 2020年7月21日にNature Communicationsで発表された論文で、月探査機かぐやの画像データを用いたクレーター数密度の測定によって、約8億年前に地球と月に隕石シャワーが降った可能性が示されました。 この論文のポイントは直径20km以上の大きなクレーターのそばにある、直径100mから1kmの小さなクレーターを数えたことです。大きなクレーターは周囲に放出物(イジェクタ)をまき散らすため、それ以前に存在した周囲の古い地形を覆い隠します。そのため、大きなクレーターの付近に存在する、小さなクレータをマッピングしてサイズと数密度を調べることで、大きなクレーターの形成年代を調べることができます。 月の全球で59個の新鮮な形状の大きなクレーターを調べたところ、そのうち8個のクレーターがほぼ同じ年代に形成されたことがわかりました。これは偶然なのでしょうか。モンテカルロ計算の結果、8個のクレーターが偶然同じ年代に形成される確率は、わずか0.69%であることがわかりました。つまり偶然である確率は統計的に極めて低いことがわかります。 ところがここで困ったことが起きました。同時に形成された8個のクレーターはいずれも年代が、6億6千万年前と見積もられましたが、この中にコペルニクスクレーターも含まれていたのです。これまでの研究からコペルニクスクレーターの形成年代は、約8億年前と見積もられています。この年代はクレーター年代学に加えて、アポロで採取された月の土壌の年代分析によって見積もられているため、より正確だと考えられます。 この差をどう考えるか。論文では次のように考えました。まずコペルニクスの形成年代は、土壌の放射年代である8億年前が正しいはず。したがってクレーター年代学によって推定された、コペルニクスの形成年代も8億年前になるべきである。この差が生じた原因は衝突フラックスの仮定に問題がある。最初の仮定では、衝突フラックスが過去30億年の間、ほぼ一定であるというモデルを仮定していました。これは今まで先行研究でも使われてきた仮定ですが、コペルニクスに関して間違った年代を出してしまいます。そこで論文の著者らは、8億年前に衝突フラックスが一時的に増加するようなモデルを考えました。こうすることでコペルニクスも含めて59個のうち、17個のクレーターの形成年代が8億年前付近となりました。 次にこの仮定は妥当であるのかを考える必要があります。本論文でこの仮定の根拠とされた間接的な証拠が二つあります。1.アポロサンプルの同位体年代測定から約8億年前に、衝突フラックスが一時的に増加した可能性が示唆されたこと。2.小惑星 オイラリア族の母天体が約8億年前に分裂したことが、軌道計算から示唆されたこと。こういった知見を総合すると、約8億年前に分裂した小惑星の一部が、地球や月に衝突した、というシナリオが導かれました。 こういった衝突が短期間に集中したのか、またはある程度長期間にわたって散発的に起こったのかはわかりません。この論文ではオイラリア族の分裂年代、コペルニクスクレーターの放射年代の誤差、そして同時代に形成された8つのクレーターの形成年代のばらつきから、小惑星シャワーが起こった期間は3000万年間程度と見積もっています。 またこの期間に地球に飛来した小惑星シャワーの総量は、白亜紀末の大量絶滅を引き起こした天体衝突の、数十倍と見積もられました。 このような大規模な小惑星シャワーが発生したとすると、地球環境へはどのような影響があったのでしょうか。8億年前の地質学的記録はあまり残っていないため、現時点ではあまりよくわかりませんが、全球凍結の直前に地層中のリン濃度が増大したという報告があります。天体衝突によって地球外からリンが供給されたのかもしれません。 最後に、クレーター年代学は強力なツールですが、年代を決定する完全な手法ではないことに注意する必要があります。クレーター年代は仮定した衝突フラックスのモデルや、解析した場所、注目するクレーターのサイズにも大きく影響されます。年代を完全に決定するにはやはりサンプルリターンが必要となります。 奇しくも今年末には中国の月探査機「嫦娥5号」が、およそ半世紀ぶりに月からのサンプルリターンを行います。嫦娥5号では若い月岩石の収集を目標としており、今回の論文の議論にも影響を与えるかもしれません。 私たちの最も身近な天体である月でさえ、その進化過程はまだまだ多くの謎が残されています。"月を鏡として地球を見る"。これこそがまさに月科学の最前線なのです。 それでは今回もご視聴いただき、ありがとうございました。次回もお楽しみに。 #惑星科学チャンネル #PlanetaryScienceChannel #行星科学频道

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