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アブシシン酸のはたらき(気孔閉鎖・休眠維持)について解説します。
語呂「あぶない!閉じよう!休もう!(アブシシン酸、気孔閉鎖、休眠促進)」
●アブシシン酸のはたらき
①種子の発芽抑制(休眠の維持)。
②気孔を閉ざす。
*アブシシン酸は、もともとワタの葉と果実の離脱abscissionを促進する物質として同定されたが、実際は器官脱離を起こす主役ではなかった(エチレンが器官脱離を制御する主役であった)。名前を変えるべきだが、アブシシン酸の語が定着してしまった。
*アブシシン酸は大学ではアブジジン酸と呼ばれるが、高校生は教科書に合わせて「アブシシン酸」と書くこと。
●植物の葉には、2個の孔辺細胞(孔辺細胞は葉緑体をもつことがよく問われる)に囲まれたすき間である気孔が存在する。
●気孔を開く時には、孔辺細胞が吸水する。孔辺細胞では、気孔側の細胞壁が厚く伸びにくいため、吸水すると細胞が湾曲して気孔が開く。一方、水が不足するとアブシシン酸が合成され、そのはたらきによって孔辺細胞は水を排出し、気孔が閉じる。
●アブシシン酸は葉緑体やアミロプラストをもつほとんどすべての細胞で合成され、すべての主要な組織で見いだされている。維管束中を移動すると考えられている。
●ヒマワリが乾燥ストレスを受けると道管内のアブシシン酸が数十倍に増加する。これは根から供給される。道管内のアブシシン酸は蒸散流により孔辺細胞に達して、気孔閉鎖の信号として働く。
●アブシシン酸によって気孔は閉鎖するが、逆に、青色光シグナルを受け取ると、開口する。
(1)気孔が開く時
①孔辺細胞にあるフォトトロピンが青色光を受容する。
②プロトンポンプが活性化しH+を孔辺細胞から排出する(細胞膜が過分極される)。
③(過分極に応答して)電位依存性のカリウムチャネル(知らなくていいが内向き整流性カリウムチャネルという)が開き、カリウムイオンが孔辺細胞に流入する。
⓸孔辺細胞内の浸透圧が上昇→水が流入→膨圧上昇(気孔が開く)。
(2)気孔が閉じる時
①植物が乾燥ストレス(水不足によるストレス)にさらされると、アブシシン酸が合成される。
②細胞膜の陰イオンチャネルが活性化され、孔辺細胞から陰イオン(主に塩化物イオン)が排出される(細胞膜が脱分極される)。
③(脱分極に応答して)電位依存性のカリウムチャネル(外向き整流性カリウムチャネル)が開き、孔辺細胞からカリウムイオンが排出される。
⓸孔辺細胞内の浸透圧が低下→水が流出→膨圧低下(気孔が閉じる)。
*アブシシン酸は、気孔が開く時に働いたプロトンポンプや内向き整流性カリウムチャネルのはたらきも阻害することが知られている。
●アブシシン酸はほとんどすべての植物細胞が合成できる。木部や師部に輸送されるかもしれない。
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