慶應義塾大学商学部教授 高久隆太 研究紹介
慶應義塾大学商学部商学研究科高久隆太教授は、国際的租税回避の研究を行っています。国際的租税回避とは、各国の租税制度の相違や租税条約に着目して、租税回避が国境を越えて行われることで、これによって国家の歳入は著しく減少し、タックス・ヘイブンへの資本誘引による資本移動の湾曲化が懸念されています。また 合法と非合法との中間に位置するグレーな部分が多く、グローバルな経済活動を行なう企業にとっては税務当局との対立の火種となってしまいます。
「国家にとっては、本来その国に納めるべき税が他の国に行ってしまうという問題が生じています。最近新聞にも出たと思うのですけど、グーグル、スターバックスといった企業がですね、海外における子会社の所得を圧縮しまして、それを税率の低い別の国に移し替えています。そうするとですね、移し替える前の元の国にとっては税収面で非常に大きい問題です。」
タックスヘイブン が関わる事件と言えば、アメリカにおける9.11のテロリズムを挙げることが出来ます。テロ集団はタックス・ヘイブンの地域に貯蔵した資金を テロに流用しました。他にも 脱税資金が一旦タックス・ヘイブン国に蓄積され、その後マネーロンダリングによって還流されるなど、タックス・ヘイブンを使った租税回避というのはグローバル社会が直面する大きな問題です。この問題解決には、OECD(経済協力開発機構) やG8(主要国首脳会議)という機関が動いており、国際的租税回避 の実態解明とその対応策の検討は、研究対象として非常に注目されています。
「日本企業を例にとりますと、日本企業は欧米を始め、アジア各地に子会社を作っております。特に最近顕著なのがアジア地区に製造機能を移転している訳ですね。中国、タイ、インドネシア、マレーシア、そういったところに製造子会社を作っております。その製造子会社と日本の親会社との間の取引、これについて移転価格課税が行なわれるケースが非常に多くなってきております。従来ですと物の輸出、輸入にたいして課税が行なわれる訳ですね。例えば日本で車を製造して、それを輸出すると、その時の輸出価格が問題だったのですが、近年これがロイヤリティと言った無形資産の取引へ移転しておりまして、この無形資産取引が非常に困難かつ厄介になっております。例えばロイヤリティについても、ある日本企業が子会社から親会社に対してロイヤリティを受け取る。ただそのロイヤリティが一体どのくらいのロイヤリティを取れば良いかというのは非常に難しいところがございまして、じゃあ通常だったらどのくらいとればいいかという通常の比較対象がなかなか見えにくいと。この辺がかなりと難しい問題になってきていまして、実際それで課税されている企業が後を絶ちません。」
移転価格課税の問題に対しては、二つの国の税務当局の間で最終的にどちらの国にどのくらいの税額を納付するのか、国家間で相互協議して決める事になります。
法学と経済学と商学の三分野に渡っている大きなテーマである国際租税回避。多様な事例のケーススタディが、その問題解決の糸口となると考えています。
「結局国の立場からすれば、国の課税権が確保される、また別の言い方をしますと国の税収が確保されるということに繋がるような提言を行なっていきたいと考えています。これは税制と執行の両面に渡ってどうあるべきか、という話になりますね。一方企業側からすれば脱税は認められない訳ですけど、合法的な節税は可能な訳です。そうしますと今の租税条約とか国際租税法の中で合法的にいかに税を少なくするかというのも非常に重要になってきますので、企業にとっては国際的租税戦略をどう構築すべきかという点で、アドバイスというか少しでも役に立てればと考えております。」