慶應義塾大学法科大学院教授 庄司克宏 研究紹介
EUからアジア太平洋における経済統合を見据えて
慶應義塾大学 法科大学院 庄司 克宏教授は、従来、所与のものとして扱われてきた国際経済統合(経済のグローバル化)の部分に着目し、国際経済統合の範囲を法政策的にどのように決定すべきなのかという点についての研究を進めています。
「複数の主権国家が経済関係を密にしていった場合に、どのような仕組みや取り決めが必要になるのかというのが出発点です。EUは一番最先端の協力の仕組みを作り上げていますが、翻って日本がどうすべきかを考えた時に、いわばFTA、つまり自由貿易協定の競争がグローバルに起こっている中で日本は少し出遅れてるんですが、遅れを取り戻す一方で、最適な経済協力の関係を日本が追求するにはどうしたらいいのかというのが、問題意識にあります。」
中でもメインテーマとして研究を進めているのが、国際経済統合における三角形というものを設定し、EUを事例としながらアジア太平洋に応用するための研究です。
「国際経済統合における三角形」とは、アメリカの経済学者が考えたもので、国際経済統合と国家主権と民主主義と言う3つを設定した時に3つを同時に達成する事はできないという仮説です。この仮説を基に、日本が今進めているFTAの戦略や、TTPへの応用によりアメリカとの間で民主主義的な連合みたいなものができるかといった広がりのあるテーマで研究を進めています。
「EUの競争の価値と言うのは民主主義、人権、法の支配です。それを守っていないとEU自体に入れないという大原則ですが、そういう価値をアジア太平洋で共有できるかというと、国によって色々な国があるので、必ずしもできないと思います。だから、その前提をもし外した時に、EU統合のレベルまではいかないとしても、共通の価値がない状況でどこまで国際経済統合ができるのか。マーケットとか経済政策の共有がどこまでできるのかというのが、面白い思考実験になるのではないかと考えています。」
庄司教授はEU研究で優れた業績を残している人物に与えられるジャンモネチェア(Jean Monnet Chair)という称号が与えられています。日本ではまだ6名程しか与えられておらず、法律分野では日本で庄司教授だけとなります。
今後も更なる国際経済統合研究を進め、アジア太平洋における経済統合の望ましいあり方や日本における最適なFTA戦略といったものにフィードバックさせていきたいと庄司教授は語ります。
「まずは統合の歴史研究です。それからもうひとつはEUの現在の先進事例を5つか6つあげれば十分だと思いますが、成功例失敗例、あるいは補完性原則の適用例、具体的な競争法の事例や個人情報保護法の事例などを研究する時に、それはアジア太平洋に転換して適用する時にどんな工夫が必要なのかというところをたぶんきちんとしないと、単にEUがこうやってるからこうすべきだという、短絡的な事になりますので、そこをどういう風に客観的にモデル化できるかというところを法政策的に工夫をしたいなと考えています。」