慶應義塾大学経済学部教授 大西広 研究紹介
来るべき「ポスト資本主義経済」を見据えて
慶應義塾大学経済学部大西広教授は、「数理マルクス経済学」における新しい研究分野の開拓を進めています。
マルクス経済学には大きくわけて、資本主義における搾取それ自体の問題を論じる「剰余価値学説」と、資本主義システムを相対化して、歴史的な流れの中で議論する「史的唯物論」という二つの分野があります。
その中で大西教授は封建制や資本主義といった制度の変遷を現代的なマルクス経済学として数理化する作業を進めています。
「封建制と資本主義というものをいかに単純にシステマテッィクに理解するかということが大変大事になります。
まず必要な事は産業革命後の時代にどうして資本主義が必要であったのか。資本主義がどうしてうまくworkしたのか。しかしそこには労働者が大変幸せでハッピーだったというわけではなくて、労働者の資本家に対する交渉力が落ちるという事もあり、それがさらに資本主義の発展の必要条件をなし、そうやって発展して来たと。そういうような基本的な理解をすることによって、それをいかにモデル化するか。そんな作業をやってきました。」
産業革命以前では、商品の生産効率やクオリティを上げるために社会全体の手工業職人の腕をどうブラッシュ・アップするかが最も重要な課題でしたが、産業革命以後には機械のクオリティや量が最重要になり、機械を動かす人間たちは不熟練化していつでも取って変えられるものになりました。
「今の現在の日本の社会的総資本ストックの伸び率はほとんどゼロなんです。アメリカもほとんどゼロですし、要するに先進国社会はほとんどゼロなんです。これは失敗しているわけではなくて、ある必然的な結果として、そのようになっていると我々は、今のモデルで解明した結果理解しているんです。そうしますと、資本蓄積というのは第一義的な課題である社会が終わりつつあると。その次に必要なのは、例えば機械にくっつく労働者の方のパワーとか、あるいは、これはこのように言うこともできます。様々な機械や様々な設備よりも、それに付加価値される人間のクリエイティビティとかアイディアとかそういうものですね。そういうものが大事な社会がやってくれば、今度はこちらに投資するのではなくて、こちらに投資しなければならない。資本に投資するのではなくて、人間に投資しなければならない。資本が大事じゃなくて資本以外のものが大事になる。これは資本主義社会とはちょっと違いますね。だから私はそういう意味でポスト資本主義社会というものが論じられると。今は詳しく説明する余裕がありませんけど、先程の数式モデルで論じる事ができると。こういう風に考えています。」
ポスト資本主義の時代には、今度は『知識が大事な社会』が来る、
また、そのような未来社会のモデル化も現代のマルクス経済学では課題となっていると大西教授は語ります。こうした研究から、マルクス経済学の新たな展開が期待されます。