慶應義塾大学経済学部 細田衛士 教授
タイトル:循環経済構築に資する理論分析・制度分析
慶應義塾大学経済学部細田衛士教授は経済理論を応用し、学問的および政策実施的な観点からいかに日本における循環経済を構築していけるかという研究に取り組んでいます。2重の資源制約がある現在、つまり天然資源の採掘量がピークアウトする一方、廃棄物を埋め立てる処分場も無くなりつつある時、資源のより高度な循環利用が益々必要になってきています。細田教授は環境経済学の中でも、廃棄物処理・リサイクルの経済分析を行ってきましたが、現在ではこの2重の資源制約を克服し、高度な循環経済構築に資するような理論分析・制度分析を行うことを研究のターゲットにしています。
「私は1985年にイギリスの留学から帰ってきました。日本はこのまま行くと自然環境がどうなってしまうんだろうという思いと、もう一つ、数学的抽象的モデルやっていてもしょうがないのではないかなという思いが重なって、それではやはり環境を勉強しようと、そういうことになりました。特にそのころ地球温暖化問題、廃棄物問題が議論されていました。廃棄物問題、これをやってみようということで、資源の循環型経済の構築という問題に取り組むようになったわけです。」
循環経済は、資源抽出―設計・生産―物流・販売―消費に関わる経済すなわち動脈経済と、残余物の回収―収集・運搬―中間処理・リサイクル―2次資源利用に関わる経済すなわち静脈経済がうまく結合することで成り立ちます。これまでの経済学は動脈経済・市場に関する研究がほぼ100%であり、静脈経済・市場の特性を研究したものはほとんどありませんでした。細田教授は静脈経済の、2重の情報の非対称性やそれによるインフォーマルセクターの存在といった特性を分析・検討することで、2つの経済を包括的に捉えています。
「静脈経済を考えるときには静脈経済の制約を考えたうえで、今度は動脈経済のものの作り方、あるいは物流の仕方、消費の仕方も考え直さなければいけない。つまり捨てる時のことを考えて、つまり静脈経済活動を考えたうえで動脈の在り方が決まってこなければいけないと、こういう時代に来ているわけですね。実は廃棄物量と言うのはここ10年くらいのうちにかなり減りました。それはなぜかと言うと、様々なリサイクル法ができてきて、また廃棄物処理法と言う大本を取り締まる法律も整備されてきて、廃棄物の量が段々と減ってきたわけです。それから最終処分される量もリサイクルが増えたことによって減ってきた。」
細田教授は高度な資源の循環利用には、社会規範、行動規範、あるいは企業の社会的責任などの社会が共通の規範として認識しているものであるソフトロー(soft law)の存在が極めて重要であることを解明しました。いわゆる法体系であるハードロー(hard law)とソフトローがそろっていることで、循環経済が実現しやすくなることを数学的理論モデルを用いた研究とフィールドワークを基礎とした制度論的研究により分析を行なっています。
「資源を循環利用する、動脈と静脈を一体と考えてより資源を節約利用し、廃棄物を出さないような循環経済をどう作り上げるのか、その明確な概念を政策として反映させ、実現するように私は今努力するというのが、私の研究者としての最終段階にやるべきことではないかと思っています。」