慶應義塾大学商学部教授 菊澤研宗 研究紹介
慶應義塾大学商学部の菊澤研宗教授は、企業や組織で起こる不条理現象についての研究をしています。1990年頃を境に世界では企業の不祥事が多発しました。 経営者はいずれも優秀な人たちで、不祥事を起こした企業は有名企業がその多くを占めています。菊澤教授は、この企業、組織、そして経営者が起こす矛盾した状況を「不条理」と呼び、人間は非合理的ではなく、合理的に失敗するのではないかと考え、研究を進めています。
「これまで色々分析しまして、その不条理の現象には4つパターンがあるってことはわかっているんですね。ひとつは正しい事、正当性と効率性、お金儲けなんですけどこれには一致しないと。多くの経営者や人間は正しい事を無視して、その効率性を追求して合理的に失敗します。
2番目が個別と全体の不一致ですね。これも多くの経営者あるいは企業というのは全体を無視しながら個別だけを追求して合理的に失敗していくと。
3番目が長期と短期の不一致ですね。これも多くのやはり企業とか経営者はですね、長期を捨てて短期的なことを追求して失敗していく。
最後は自由平等の不一致なんですけど、自由ばかりを追求して平等を無視しながら失敗していくという、だいたいこの不条理現象というのを大きく分けると今のところ4つくらいのパターンがあるんですね。」
従来の企業理論はミクロ経済学を中心に展開されていました。そこでは人間は完全に合理的だと仮定されていますが、近年注目されている新制度派経済学という分野では、人間は不完全で合理性も限られているという考えの元で理論が展開されています 。これを人間の限定合理性と呼び、この仮定の元では人間は何をするにあたっても見えないコストが発生します。このコストがあまりにも大きい場合、人間は効率性と正当性を一致させない方が合理的という不条理に陥ることになります。
「この2つをまた調整しようとしてもまたコストがかかってしまうということで結果的にはこの見えないコストの存在のためにずれが起こってですね、一方を捨てて一方の方に進んでいかざるをえないという不条理がどんどんと起こっているようだと。そこで、この理論を使いますと制度論ですので、じゃどうしたらいいかというと制度を作ることによってその見えないコストを減らすことが出きるんじゃないかということなんですね。そうすることによってこの一致をさせていけるんじゃないかということが、これまでの僕自身の理論的な研究だったんですね。」
経済合理性だけを追求すると、多少ルールを無視したり、手抜きをしたりする方がコストが安く、合理的という不条理に陥ります。これを回避するには、同時に メンバーが持っている自律性を引き出すような人間主義的マネジメントも補完的にやっていくと、企業は合理的に失敗しない可能性が高くなります。
「やっぱり科学的な経済合理的なこの考え方あるいは制度、そういったものを研究して、その限界というものをいかに明らかにするかということですね。それをしながら同時にその人間性とか誠実さとかそういうものが非常にマネジメントに大事になってくるかということを説明することによってたぶんおおくの現場のですね経営者とかそのトップに居る人たちの悩みというのは実は解決できるんじゃないかなと考えているんですね。」