慶應義塾大学商学部 里村卓也 教授
タイトル:視覚的に類似したブランドの消費者による混同を定量的に評価する
慶應義塾大学商学部 里村卓也教授は、消費者行動、マーケティング戦略、マーケティングミックス、顧客戦略に関する科学的手法の研究をしています。
「特に近年はマーケティングリサーチにおける画像データの活用に取り組んでいます。今日は我々が開発したそのようなリサーチ手法についてお話ししたいと思います。」
近年有名ブランドの類似ブランドが国内外で多く見られます。視覚的に類似しているブランドがあると、消費者はブランドを混同してしまう恐れがあるため、訴訟の対象ともなることもあります。そこで、視覚的類似性により消費者がブランドを混同するかどうかを、客観的に判定する方法が強く求められています。
そこで、里村教授は、実験的手法と画像処理技術を組み合わせることで商品パッケージにおける視覚的類似ブランドを消費者が混同する程度を測定・判定・予測する手法を開発しました。
「これまでの調査では、消費者に類似した ブランドとオリジナルのブランドを提示して混乱するのかどうかという測定を行っています。ただその測定方法というのは比較的長時間消費者に判断をしてもらって測定をするという方法です。ただ、実際の消費者行動を考えますと、特に店頭での消費者行動を考えますと、消費者というのはもっと短い時間、数秒で判断をしている。」
里村教授が「トライアングルテスト」と呼ぶ手法では、まず1つのパッケージとそれに類似した2つのパッケージを用意します。その3つの中から異なっている物を消費者に選択してもらいます。ここで実際の店頭の状況を再現するため、パッケージを見せる時間は0.3秒としました。そのわずかな時間でどの商品が異なっているのかを回答してもらい、回答までの間を測ります。
「一瞬何かを表示して答えを見つける場合に、確信があるとすぐ答えができるんですが、確信がないと頭の中でずっと悩んじゃうんですね。このような反応時間を測るテストでは、回答時間が速い商品や速い対象ほどより正確であるということが知られています。」
こうした消費者実験から得られたデータと画像処理技術で得られた色や形の類似度のデータを組み合わせて解析を行います。
「消費者実験から得られた混乱の度合いと、画像の類似性という2つのものを組み合わせるために、累積競争モデルという数理心理学で用いられている反応モデルを用いて、その二つの情報を組み合わせる。そこからどういう情報が消費者にとってはパッケージの類似の混同をもたらすのか、いうことを特定しようと思いました。」
予測結果を利用して混同の程度を判断するための統計的判断基準を “copy alert”、“copy watch”、“copy safe”という3段階で示すことができます。
「このような人間のいわゆる認知構造を基にした分析方法と言うのは、パッケージ混同に関してはなかったんですが、今回は我々がそれを取り入れたことで、より理論に基づいた分析と言うのを可能にしました。」
この手法を使えば、商品発売後のブランド間の混同を評価するだけでなく、商品開発段階でもパッケージ間の混同を予測することができるようになります。