分節遺伝子・ホメオティック遺伝子・Hox遺伝子群【ショウジョウバエの発生】 高校生物
10分9秒
説明
【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
ショウジョウバエの分節遺伝子、ホメオティック遺伝子、アンテナペディア複合体、バイソラックス複合体、哺乳類のHox 遺伝子群(ホックス遺伝子群)などについて解説します。
*音質が悪くて申し訳ありません。字幕を作ってあるのでご利用ください。
*ホメオティック遺伝子についての基本的な講義はこちら↓
• ホメオティック遺伝子【発生】 高校生物
*「Hox遺伝子群」の「Hox」は斜体で書くことが多い(動画では斜体で書いていない)のですが、高校生は気にしないで大丈夫です。たとえば、ギルバート著『ギルバート発生生物学』(MEDSi)、ウォルパートら著『ウォルパート発生生物学』(MEDSi)、高校生物教科書『生物』(実教出版)では、「Hox遺伝子群」の「Hox」は斜体で書かれておりません(ただし、遺伝子個々の名前は、一般には斜体で表記します)。
問題:ホメオティック突然変異の原因遺伝子は( )と呼ばれる。空欄を埋めよ。
答え:ホメオティック遺伝子
● ショウジョウバエの卵形成において、卵形成完了時には、ビコイドmRNAが前極に、ナノスmRNAが 後極に局在するようになる。これら2種のmRNAは、翻訳されないよ う休眠状態で貯蔵されており、排卵あるいは受精を機に翻訳される。 ビコイドタンパク質は前極が高濃度となる濃度勾配を形成し、ナノス タンパク質は後極が高濃度になる勾配を形成する。
●この動画で使っている「体節(segment)」の語は、カエルの発生に出てきた「体節(somite:脊椎動物の発生において見られる中胚葉性の分節構造)」とは別の語である。
● 分節遺伝子とは、「ショウジョウバエの胚発生において、前後軸に 沿って、体節単位の繰り返しから成る分節構造へと転換する過程を制 御する遺伝子群。」のことである。
● 分節遺伝子のそれぞれの遺伝子群に変異が起きると、次のような表 現型が見られる(それぞれの語源になっている)。
ギャップ遺伝子 :「体節に大きな欠落(ギャップ)ができる」
ペアルール遺伝子 :「2つに1つが欠落する(ペアルール)」
セグメントポラリティ遺 伝子:「各体節のすべてに異常が出る。たとえば極性がおかしくなる(ポラリティが極性という意味)。それぞれの体節には明確な前後パターンがある(たとえば前方領域にのみ小歯状突起がある)が、セグメントポラリティ遺伝子の突然変異は体節内のパターンを変えてしまう。」
● 母性因子によって、受精卵の中で色々なタンパク質の濃度勾配のパターンが実現する。それらは、ギャップ遺伝子の発現を制御している(たとえば、ビコイドは前方特異的なギャップ遺伝子を活性化し、後方特異的なギャップ遺伝子を抑制する)。
ナノスタンパク質は、標的となるmRNAに結合する。ナノスの標的の1つがハンチバックmRNAである。ナノスタンパク質はハンチバックmRNAに結合して翻訳を阻害する。
母性因子の一つであるハンチバックmRNAは、卵全体に分布している。ハンチバックタンパク質はギャップ遺伝子に影響を与えるモルフォゲンとして働く(ハンチバック遺伝子自体もギャップ遺伝子の一つである)。
●本講義では、時間の概念を少しごまかして説明している。際は、3つの分節遺伝子の機能は時間的に重なっている。また、ホメオティック遺伝子は、分節の過程と並行して働いている。
● ギャップ遺伝子が胚をおおまかに領域化する。ギャップ遺伝子に コードされている転写因子はペアルール遺伝子の発現を導く。ギャッ プ遺伝子は、一定の幅(約3体節分)で発現し、これら遺伝子の発現 領域は一部で重なっている。
● ペアルール遺伝子はセグメントポラリティ遺伝子を活性化する。 ペアルール遺伝子は7つの領域を決定する。各々のペアルール遺伝子 は胚を約2体節の幅で分画化する 。ペアルール遺伝子は転写因子をコードしている。
● セグメントポラリティ遺伝子は7つの領域を14のストライプに分割する。セグメントポラリティ遺伝子のmRNAやタンパク質は、胚を14の体節単位に区画化し、胚は体節からなる繰り返し構造を確立する。セグメントポラリティ遺伝子の突然変異体は、各体節すべ てに異常が出る。
また、セグメントポラリティ遺伝子は体節内のパターンの形成に関わる(それぞれの体節は前後が決まっている[前後パターンを持っている。たとえば各体節の前側には小歯状突起という大きな棘があるが、後ろ側にはない]。セグメントポラリティ遺伝子はその体節内のパターン形成に関わる)。
ペアルール遺伝子とセグメントポラリティ遺伝子が作るパターンが重なり合って擬体節が区分化される(擬体節は、最終 的に幼虫あるいは成虫の体の表面にあらわれる体節とは約半体節分位 置がずれている)。
セグメントポラリティ遺伝子は転写因子やシグナル伝達に関わる分子をコードしている。
● 本動画の解説ように、ショウジョウバエに対してのみホメオティック遺伝子という名 称を用いることもある。ショウジョウバエのホメオティック遺伝子をHox遺伝子に含める こともある(はじめ、ホメオティック突然変異[体の構造の一部が別の構造に変化する 形態形成異常変異]の原因遺伝子として、ホメオティック遺伝子が発見された。しかし 、その後、同じような遺伝子が脊椎動物にも存在することがわかり、Hox遺伝子という 総称がついた)。
●アンテナペディア突然変異体では、触角(antenna)が脚(pedis)に転換されている。ウルトラバイソラックス突然変異体では、二重(bi)の胸部(thorax)と2対の翅が生じる(正常な双翅目のショウジョウバエは、その名の通り、1対の翅しか有しない)。
●ショウジョウバエは双翅目(そうしもく)であり、その名の通り、通常は翅は1対である。ハチなどは2対の翅をもつ。双翅目は4枚翅の昆虫から進化してきたと考えられているので、翅を4枚もつウルトラバイソラックス変異体は、先祖返りとも言える(ただし、進化に関わった遺伝子については確定していない)。
●アンテナペディア複合体には5つの遺伝子が、バイソラックス複合体には3つの遺伝子がある(ショウジョウバエは合計8個のホメオティック遺伝子をもつ)。アンテナペディア突然変異体は、アンテナペディア複合体にあるAntp遺伝子が異常発現していると考えられている。ウルトラバイソラックス突然変異体では、バイソラックス複合体にあるUbx遺伝子が正常に発現していないと考えられている。
● Hox遺伝子は、「ホメオボックスをもつ遺伝子の中で、ショウジョウバエのアンテナ ペディア遺伝子群とバイソラックス遺伝子群に帰属するホメオティック遺伝子群を足し 合わせたものと進化的起源を共有すると考えられる遺伝子群」を指すことが多いが、 定義には揺れがある。高校生は今使っている教科書に解釈を合わせればよい。
●ホメオティック遺伝子には、ホメオボックス(180塩基対からなる)と呼ばれる共通 の配列があることが多い。
● ホメオボックスにコードされるタンパク質の領域はホメオドメイン(60アミノ酸から なる)と呼ばれる。
● 最初のホメオボックスがショウジョウバエで発見されるやいなや、生物学者たちは 、そのホモログ(進化の過程で一つの共通祖先遺伝子に由来すると考えられる遺伝 子)が脊椎動物にも存在するのではないかと予想した。そして実際にHox遺伝子が発 見されたのである。
● Hox遺伝子は、前後軸の形成に関わる重要な遺伝子であり、知られている限りすべての動物種で発見されている(進化の過程でずーーーっと 残ってきたということである。驚くべきことである)。
● 哺乳類のHox遺伝子は、対応するショウジョウバエのHox遺伝子の代用品として、ショ ウジョウバエの中で機能できる(驚くべきことである)。
● 哺乳類のHox遺伝子群は、すべて、原型となる1個の遺伝子群から重複によって生じた ものであるらしい。
●Hox遺伝子群では、発生の過程で発現する遺伝子の順番が、3'から5'方向に並んでいる順番と一致する傾向がある(3'の方にある遺伝子の方が、5'の方にある遺伝子より、発生の早い時期に発現する傾向がある)。
●Hox遺伝子群では、3'から5'方向に並んで分布する遺伝子の順番と、動物の頭→尾方向に沿って発現する遺伝子の順番が一致する傾向がある(3'の方にある遺伝子は前方[頭がある方]で、5'の方にあるHox遺伝子は後部で発現する傾向がある[ただし、前部領域で発現する遺伝子は、後部領域でも発現し、他のHox遺伝子の領域と重なり合うことが多い。また、より後方で発現しているHox遺伝子は、より前方で発現しているHox遺伝子の機能を無効にする傾向がある。この現象は後方優位として知られている])
*ショウジョウバエのホメオティック遺伝子群は、ホメオティック遺伝子、またはHox遺伝子群、Hox複合遺伝子、HOM-C(ホメオティック遺伝子複合体)、ホメオティック遺伝子クラスターなどと呼ばれることもある。哺乳類のHox遺伝子群は、Hox遺伝子、あるいはHox複合遺伝子と呼ばれることもある。
*ここの単元は、教科書会社や入試問題によって用語の使われ方がかなり異なる。高校生はイメージだけざっくり理解していればいい。入試本番ではリード文の解釈に合わせればよい。それでも迷ったら、今使っている教科書の解釈に合わせればよい。
●ショウジョウバエの発生における胚の動きについて(知らなくてよい)
・受精卵→胞胚→原腸胚となった後、14体節の体ができ、胚の後方が背側に折り返す(胚帯伸長[はいたいしんちょう]という)。やがて胚は縮んで元に戻る(胚帯短縮[はいたいたんしゅく]という)。その後、ふ化して幼虫となる。幼虫は脱皮を繰り返し、蛹となり、羽化して成虫となる。
・原腸胚の初期、腹側に沿った胚帯は、後ろに伸び始め、胚帯伸長を見せる。その後、胚帯短縮が起き、消化管、気管、神経などへの分化が始まる。胚帯短縮の頃から、胚帯は左右両側から背側に向かって伸び、最終的にジッパーを閉じるように背部を閉鎖する。
・ショウジョウバエの原腸形成は特殊であり、基本的に問われない(節足動物の原腸形成は多様である)。前方と後方から陥入する細胞群は腔所を作り、その両者が胚体内部に伸長する。この後、腔所は前後から出会って融合し、1本の管を形成する(これが消化管になる)。
*ショウジョウバエは節足動物(旧口動物)であるので、原口は口になるのだが、実際は、消化管をつくるための予定内胚葉域の陥入は前後両側から起きる(このような内胚葉の陥入に先立って、中胚葉予定域細胞が胚内部へ落ち込み、中胚葉へと運命づけられる現象が起こる[腹側中胚葉の陥入]。このように、ショウジョウバエの胚の細胞の動きは少しややこしい。が、試験ではまず問われないから安心してよい)。
noteに簡単な図がある。
https://note.com/yaguchihappy/n/n0e70c6213daf
0:00 ショウジョウバエの発生の概要
1:31 母性因子
2:35 分節遺伝子
3:42 ホメオティック遺伝子
4:06 分節遺伝子が働く順番
4:37 ホメオティック突然変異体
5:53 ホメオボックス遺伝子群
6:34 哺乳類のHox遺伝子群
#高校生物
#分節遺伝子
#Hox遺伝子群
ショウジョウバエの分節遺伝子、ホメオティック遺伝子、アンテナペディア複合体、バイソラックス複合体、哺乳類のHox 遺伝子群(ホックス遺伝子群)などについて解説します。
*音質が悪くて申し訳ありません。字幕を作ってあるのでご利用ください。
*ホメオティック遺伝子についての基本的な講義はこちら↓
• ホメオティック遺伝子【発生】 高校生物
*「Hox遺伝子群」の「Hox」は斜体で書くことが多い(動画では斜体で書いていない)のですが、高校生は気にしないで大丈夫です。たとえば、ギルバート著『ギルバート発生生物学』(MEDSi)、ウォルパートら著『ウォルパート発生生物学』(MEDSi)、高校生物教科書『生物』(実教出版)では、「Hox遺伝子群」の「Hox」は斜体で書かれておりません(ただし、遺伝子個々の名前は、一般には斜体で表記します)。
問題:ホメオティック突然変異の原因遺伝子は( )と呼ばれる。空欄を埋めよ。
答え:ホメオティック遺伝子
● ショウジョウバエの卵形成において、卵形成完了時には、ビコイドmRNAが前極に、ナノスmRNAが 後極に局在するようになる。これら2種のmRNAは、翻訳されないよ う休眠状態で貯蔵されており、排卵あるいは受精を機に翻訳される。 ビコイドタンパク質は前極が高濃度となる濃度勾配を形成し、ナノス タンパク質は後極が高濃度になる勾配を形成する。
●この動画で使っている「体節(segment)」の語は、カエルの発生に出てきた「体節(somite:脊椎動物の発生において見られる中胚葉性の分節構造)」とは別の語である。
● 分節遺伝子とは、「ショウジョウバエの胚発生において、前後軸に 沿って、体節単位の繰り返しから成る分節構造へと転換する過程を制 御する遺伝子群。」のことである。
● 分節遺伝子のそれぞれの遺伝子群に変異が起きると、次のような表 現型が見られる(それぞれの語源になっている)。
ギャップ遺伝子 :「体節に大きな欠落(ギャップ)ができる」
ペアルール遺伝子 :「2つに1つが欠落する(ペアルール)」
セグメントポラリティ遺 伝子:「各体節のすべてに異常が出る。たとえば極性がおかしくなる(ポラリティが極性という意味)。それぞれの体節には明確な前後パターンがある(たとえば前方領域にのみ小歯状突起がある)が、セグメントポラリティ遺伝子の突然変異は体節内のパターンを変えてしまう。」
● 母性因子によって、受精卵の中で色々なタンパク質の濃度勾配のパターンが実現する。それらは、ギャップ遺伝子の発現を制御している(たとえば、ビコイドは前方特異的なギャップ遺伝子を活性化し、後方特異的なギャップ遺伝子を抑制する)。
ナノスタンパク質は、標的となるmRNAに結合する。ナノスの標的の1つがハンチバックmRNAである。ナノスタンパク質はハンチバックmRNAに結合して翻訳を阻害する。
母性因子の一つであるハンチバックmRNAは、卵全体に分布している。ハンチバックタンパク質はギャップ遺伝子に影響を与えるモルフォゲンとして働く(ハンチバック遺伝子自体もギャップ遺伝子の一つである)。
●本講義では、時間の概念を少しごまかして説明している。際は、3つの分節遺伝子の機能は時間的に重なっている。また、ホメオティック遺伝子は、分節の過程と並行して働いている。
● ギャップ遺伝子が胚をおおまかに領域化する。ギャップ遺伝子に コードされている転写因子はペアルール遺伝子の発現を導く。ギャッ プ遺伝子は、一定の幅(約3体節分)で発現し、これら遺伝子の発現 領域は一部で重なっている。
● ペアルール遺伝子はセグメントポラリティ遺伝子を活性化する。 ペアルール遺伝子は7つの領域を決定する。各々のペアルール遺伝子 は胚を約2体節の幅で分画化する 。ペアルール遺伝子は転写因子をコードしている。
● セグメントポラリティ遺伝子は7つの領域を14のストライプに分割する。セグメントポラリティ遺伝子のmRNAやタンパク質は、胚を14の体節単位に区画化し、胚は体節からなる繰り返し構造を確立する。セグメントポラリティ遺伝子の突然変異体は、各体節すべ てに異常が出る。
また、セグメントポラリティ遺伝子は体節内のパターンの形成に関わる(それぞれの体節は前後が決まっている[前後パターンを持っている。たとえば各体節の前側には小歯状突起という大きな棘があるが、後ろ側にはない]。セグメントポラリティ遺伝子はその体節内のパターン形成に関わる)。
ペアルール遺伝子とセグメントポラリティ遺伝子が作るパターンが重なり合って擬体節が区分化される(擬体節は、最終 的に幼虫あるいは成虫の体の表面にあらわれる体節とは約半体節分位 置がずれている)。
セグメントポラリティ遺伝子は転写因子やシグナル伝達に関わる分子をコードしている。
● 本動画の解説ように、ショウジョウバエに対してのみホメオティック遺伝子という名 称を用いることもある。ショウジョウバエのホメオティック遺伝子をHox遺伝子に含める こともある(はじめ、ホメオティック突然変異[体の構造の一部が別の構造に変化する 形態形成異常変異]の原因遺伝子として、ホメオティック遺伝子が発見された。しかし 、その後、同じような遺伝子が脊椎動物にも存在することがわかり、Hox遺伝子という 総称がついた)。
●アンテナペディア突然変異体では、触角(antenna)が脚(pedis)に転換されている。ウルトラバイソラックス突然変異体では、二重(bi)の胸部(thorax)と2対の翅が生じる(正常な双翅目のショウジョウバエは、その名の通り、1対の翅しか有しない)。
●ショウジョウバエは双翅目(そうしもく)であり、その名の通り、通常は翅は1対である。ハチなどは2対の翅をもつ。双翅目は4枚翅の昆虫から進化してきたと考えられているので、翅を4枚もつウルトラバイソラックス変異体は、先祖返りとも言える(ただし、進化に関わった遺伝子については確定していない)。
●アンテナペディア複合体には5つの遺伝子が、バイソラックス複合体には3つの遺伝子がある(ショウジョウバエは合計8個のホメオティック遺伝子をもつ)。アンテナペディア突然変異体は、アンテナペディア複合体にあるAntp遺伝子が異常発現していると考えられている。ウルトラバイソラックス突然変異体では、バイソラックス複合体にあるUbx遺伝子が正常に発現していないと考えられている。
● Hox遺伝子は、「ホメオボックスをもつ遺伝子の中で、ショウジョウバエのアンテナ ペディア遺伝子群とバイソラックス遺伝子群に帰属するホメオティック遺伝子群を足し 合わせたものと進化的起源を共有すると考えられる遺伝子群」を指すことが多いが、 定義には揺れがある。高校生は今使っている教科書に解釈を合わせればよい。
●ホメオティック遺伝子には、ホメオボックス(180塩基対からなる)と呼ばれる共通 の配列があることが多い。
● ホメオボックスにコードされるタンパク質の領域はホメオドメイン(60アミノ酸から なる)と呼ばれる。
● 最初のホメオボックスがショウジョウバエで発見されるやいなや、生物学者たちは 、そのホモログ(進化の過程で一つの共通祖先遺伝子に由来すると考えられる遺伝 子)が脊椎動物にも存在するのではないかと予想した。そして実際にHox遺伝子が発 見されたのである。
● Hox遺伝子は、前後軸の形成に関わる重要な遺伝子であり、知られている限りすべての動物種で発見されている(進化の過程でずーーーっと 残ってきたということである。驚くべきことである)。
● 哺乳類のHox遺伝子は、対応するショウジョウバエのHox遺伝子の代用品として、ショ ウジョウバエの中で機能できる(驚くべきことである)。
● 哺乳類のHox遺伝子群は、すべて、原型となる1個の遺伝子群から重複によって生じた ものであるらしい。
●Hox遺伝子群では、発生の過程で発現する遺伝子の順番が、3'から5'方向に並んでいる順番と一致する傾向がある(3'の方にある遺伝子の方が、5'の方にある遺伝子より、発生の早い時期に発現する傾向がある)。
●Hox遺伝子群では、3'から5'方向に並んで分布する遺伝子の順番と、動物の頭→尾方向に沿って発現する遺伝子の順番が一致する傾向がある(3'の方にある遺伝子は前方[頭がある方]で、5'の方にあるHox遺伝子は後部で発現する傾向がある[ただし、前部領域で発現する遺伝子は、後部領域でも発現し、他のHox遺伝子の領域と重なり合うことが多い。また、より後方で発現しているHox遺伝子は、より前方で発現しているHox遺伝子の機能を無効にする傾向がある。この現象は後方優位として知られている])
*ショウジョウバエのホメオティック遺伝子群は、ホメオティック遺伝子、またはHox遺伝子群、Hox複合遺伝子、HOM-C(ホメオティック遺伝子複合体)、ホメオティック遺伝子クラスターなどと呼ばれることもある。哺乳類のHox遺伝子群は、Hox遺伝子、あるいはHox複合遺伝子と呼ばれることもある。
*ここの単元は、教科書会社や入試問題によって用語の使われ方がかなり異なる。高校生はイメージだけざっくり理解していればいい。入試本番ではリード文の解釈に合わせればよい。それでも迷ったら、今使っている教科書の解釈に合わせればよい。
●ショウジョウバエの発生における胚の動きについて(知らなくてよい)
・受精卵→胞胚→原腸胚となった後、14体節の体ができ、胚の後方が背側に折り返す(胚帯伸長[はいたいしんちょう]という)。やがて胚は縮んで元に戻る(胚帯短縮[はいたいたんしゅく]という)。その後、ふ化して幼虫となる。幼虫は脱皮を繰り返し、蛹となり、羽化して成虫となる。
・原腸胚の初期、腹側に沿った胚帯は、後ろに伸び始め、胚帯伸長を見せる。その後、胚帯短縮が起き、消化管、気管、神経などへの分化が始まる。胚帯短縮の頃から、胚帯は左右両側から背側に向かって伸び、最終的にジッパーを閉じるように背部を閉鎖する。
・ショウジョウバエの原腸形成は特殊であり、基本的に問われない(節足動物の原腸形成は多様である)。前方と後方から陥入する細胞群は腔所を作り、その両者が胚体内部に伸長する。この後、腔所は前後から出会って融合し、1本の管を形成する(これが消化管になる)。
*ショウジョウバエは節足動物(旧口動物)であるので、原口は口になるのだが、実際は、消化管をつくるための予定内胚葉域の陥入は前後両側から起きる(このような内胚葉の陥入に先立って、中胚葉予定域細胞が胚内部へ落ち込み、中胚葉へと運命づけられる現象が起こる[腹側中胚葉の陥入]。このように、ショウジョウバエの胚の細胞の動きは少しややこしい。が、試験ではまず問われないから安心してよい)。
noteに簡単な図がある。
https://note.com/yaguchihappy/n/n0e70c6213daf
0:00 ショウジョウバエの発生の概要
1:31 母性因子
2:35 分節遺伝子
3:42 ホメオティック遺伝子
4:06 分節遺伝子が働く順番
4:37 ホメオティック突然変異体
5:53 ホメオボックス遺伝子群
6:34 哺乳類のHox遺伝子群
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