今から約1億年前の白亜紀は恐竜の時代として知られていますが、一方で地球史上最も暑かった時代の一つでもあります。南極点付近で掘削探査を行った国際チームによって、白亜紀中期には南極点付近にも温帯雨林が生い茂るほど、地球が温暖だったことが明らかになりました。
(目次)
0:00 地球が最も暑かった時代
0:55 高緯度地域の地質記録の不足
1:14 南極への探検航海
1:36 発見された植物の根
2:00 温暖だった白亜紀の南極
2:46 南極の長い夜
3:05 地球の未来への示唆
(参考文献)
J.P. Klages, Nature vol. 580, 81-86 (2020) Temperate rainforests near the South Pole during peak Cretaceous warmth.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2148-5
A sensational discovery: Traces of rainforests in West Antarctica
https://www.awi.de/en/about-us/service/press/press-release/a-sensational-discovery-traces-of-rainforests-in-west-antarctica.html
【画像素材】
NASA, Alfred Wegener Institute,, Pixabay
【字幕説明】
惑星の気候進化を解き明かすことは、生命の居住可能性を探る上で、
最も重要なテーマと言えます。
特に地球の過去の気候変動のデータは、他の惑星の進化を考える上でも、
ベースラインとなる非常に重要なデータです。
地球は過去に全球凍結するほど気候が寒冷化したことがわかっていますが、
一方で、最も暑かった時代の気候はどうだったのでしょうか。
今から約1億年前の白亜紀は、恐竜が繁栄した時代として有名ですが、
地球史上最も気候が温暖だった時代の一つとしても知られています。
特に白亜紀の中期は、熱帯の表層海水温はおよそ35℃と高く、
海面も現在より170メートル程度高かったと推定されてきました。
こういった地質的記録から、大気中のCO2濃度は約1000ppmと、
現在のおよそ3倍もあったと見積もられてきました。
しかしこれまで白亜紀中期の地質学的証拠は、低緯度や中緯度地域でしか
発見されておらず、高緯度地方の気候はよくわかっていませんでした。
特に、南極大陸に氷床が存在していたかどうかは、
研究者の間で意見が分かれており、大きな注目を集めていました。
この問題を解決するため、
ドイツのアルフレッド・ウェゲナー研究所を中心とする、
大規模な研究チームが編成され、2017年に南極大陸の西側、
南極点からわずか900kmの地点に観測船を派遣し、海底を掘削しました。
その結果、研究者も予想していなかった驚きの事実が明らかになりました。
得られたドリルコア・サンプルをX線でCTスキャンしたところ、
植物の根の複雑なネットワークが
非常に綺麗に保存された状態で発見されたのです。
さらにサンプルからは大量の維管束植物の花粉や胞子も発見されました。
発見された植物の中には、南極地方でこれまで発見されてこなかった、
被子植物の先祖すら含まれていました。
こういった地質的証拠は明らかに、白亜紀中期の西南極は、
温帯雨林が生い茂るような温暖湿潤な環境であったことを示しています。
これらの地質データをもとに気候モデルによる理論計算も行われました。
その結果、大気中のCO2濃度は今までの見積もりより高く、
最大で1600ppmに達した可能性があることがわかりました。
さらに南極大陸には大規模な氷床が存在しなかったこともわかりました。
この時代、地球で最も寒い場所の一つである南極点ですら、
年間平均気温はおよそ12度程度で、
現在の宮城県の年間平均気温に相当するぐらいの気候でした。
南極 以外の場所、例えば中緯度地域では、
年間平均気温が40°に達するような地域もあったと予測されました。
南極大陸は、1年の3分の1は極夜が続くような極限環境です。
それにも関わらず、南極点の近くに大規模な森林があり、
温暖な環境があったことは、大きな驚きをもって受け止められました。
高いCO2濃度が、南極の長い夜でも気候を十分に温暖にしていたのです。
今回の論文は、現在の地球の未来を考える上でも
非常に重要な示唆を与えています。
このままCO2濃度が上がり続ければ、世界の平均気温は大幅に上昇し、
南極から氷が完全に消える、そういった状態が実際に
9000万年前の地球で起こったことが実証されたのです。
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