アラル海の縮小
アラル海の縮小
アムダリアとシルダリアからの過剰取水によって、アラル海が大幅に縮小した事件。
これにより、さまざまな環境問題が発生し、問題となっている。
周辺国は回復に力を入れており、一部では改善もみられる。
経緯
アラル海は、アムダリアとシルダリアが流入する塩湖。
かつては、河川から豊富な淡水が流入し、面積が世界第4位の大きな湖だった。
1940~50年代からアムダリア・シルダリア流域の大規模な開発が始まり、1960年代から湖の面積が急速に縮小し始めた。
現在では、面積はかつての10分の1以下に縮小、南側の大アラル海と北側の小アラル海に分裂し、干上がった湖底は塩が積もった砂漠になっている。
アラル海(左:1989年、右:2014年)の比較写真
原因
「アラル海に流入するアムダリア(アム川)とシルダリア(シル川)からの過剰取水」
が原因。
旧ソ連時代、アムダリアとシルダリアの流域開発のため、
を行った。
この結果、アムダリア・シルダリアからアラル海に流入する水量が大幅に減少。アラル海の急激な縮小が始まった。
環境への影響
アラル海が縮小したことによって、周辺地域に以下のような影響があった。
- 塩害
- 漁業・生態系の壊滅
- 粉塵等による健康被害
- 周辺地域の気候変動
塩害
アムダリア、シルダリア周辺で大規模な灌漑農業が行われるようになったが、不適切な灌漑による塩害が発生。農業が続けられなくなる地域も多くあらわれた。
また、アラル海の干上がった湖底に堆積した塩が風で舞い上がり、周辺地域に飛散して塩害をもたらすこともあった。
漁業・湖水生態系の壊滅
アラル海の縮小に伴い、アラル海の塩分濃度が上昇。
1960年代には1%程度で海水(3.5%)より薄かったが、2000年代には海水の二倍まで上昇した。
これに伴い、アラル海に生息していた生物の多くは死滅し、年間5万トン程度の水揚げ量があった水産業も壊滅した。
粉塵等による健康被害
アラル海の干上がった湖底には、塩が積もっている。
この塩が、風によって巻き上げられて周辺地域に飛び散り、住民がこれを吸いこむことで呼吸器疾患に苦しんでいる。
周辺地域の気候変動
水は温まりにくく冷めにくい性質をもっている。そのため、アラル海があることで、アラル海周辺の気候は、乾燥帯にしては気温の変化が少なかった。
ところが、アラル海が縮小して陸地が増えてしまったため、気温の変化が大きくなった。
また、水面の面積が減ったために水の蒸発量も減り、周辺の降水量も減った。
回復策
アラル海を回復させるため、周辺諸国では対策が進められている。
とくに成果が現れたのが北側の小アラル海で、堤防を建設し湖からの流出を防いだ結果、湖の面積が増加して塩分濃度も低下、漁業が復活し始めている。