ヨーロッパの移民・難民政策
簡単なまとめ
ヨーロッパは経済的に豊かなので、周辺地域から高い賃金を求めて移民が流入してくる。
戦後の高度成長期は積極的に移民を受け入れたが、その後は受け入れに消極的になった。
2010年代以降、周辺地域の政情不安や食糧危機などにより難民が殺到。欧州では移民や難民に対する不満が高まり、右派勢力の台頭につながっている。
統計
移民
合法、不法あわせて大量の移民が流入。
2023年には、EU域内に年間500万人以上の移民が流入した。
難民(ウクライナ難民除く)
アラブの春により、シリアや北アフリカから大量の難民が流入。
ウクライナ難民も含めると、多いときには年300万人ペースで難民が流入している。
歴史
第二次大戦後~石油危機
第二次大戦後、欧州は戦後復興の過程で高度経済成長を達成した。
経済が急激に成長したため労働力不足に陥り、外国から積極的に移民を受け入れて対処した。
フランスでは、旧植民地の北・西アフリカ、スペインやポルトガルなど南欧から大量の移民を受け入れた。
西ドイツでは、旧植民地がなかったためイタリアやトルコなどと協定を結び、期限付きで労働者を受け入れた。このような外国人労働者をガストアルバイターという。
石油危機~2000年代
石油危機によって高度経済成長が終わり、こんどは労働力が余るようになった。
これに伴い、移民の新規受け入れをやめる国も多かった。
フランスは、新規の移民受け入れを取りやめたが、家族の呼び寄せは許可したので移民は増え続けた。
ドイツも新規の募集を停止し、送還を試みたが失敗。定住したり家族を呼び寄せたりする移民が多く、移民が増え続けた。
2000年代~
2011年のアラブの春による中東の混乱などにより、難民が激増した。
また、2022年以降、ウクライナ難民が増加したこともあり、史上空前の難民が欧州に押し寄せている。
不法移民も増加しており、正式な手続きを経ずに、地中海やバルカン半島を経由してヨーロッパに向かう人も多い。
地中海に面するイタリアやギリシア、中東に近い東欧(ハンガリーなど)に不法移民・難民があふれ、社会問題となった。
(地中海を越えてギリシャに到着したシリア難民、wikimedia commons)
移民受け入れの影響
移民・難民を積極的に受け入れたドイツ、フランス、スウェーデンなどでは、
- 治安の悪化
- 失業率の上昇
- 住民との摩擦
などが表面化し、移民排斥運動が激化。右派の台頭につながった。