地中海式農業
特徴
地中海式農業は、地中海性気候地域に特徴的な農業の形態で、
「耐乾作物と冬作の食用穀物、牧畜を組み合わせた農業様式」
です。このうち、
- 耐乾作物・・・オリーブ、ブドウ、オレンジ、コルクガシなど
- 冬作の食用穀物・・・主に小麦
- 牧畜・・・羊、山羊(どちらも乾燥に強い)
が代表的です。
また、伝統的な地中海式農業では家畜の移牧が行われます。山羊や羊は、乾燥には強いものの夏の暑さには耐えられません。そこで、夏の暑さを避けるため夏は高地に移動し、冬は低地に戻ってくる、という形式がとられます。
地中海性気候という自然条件の下、夏作物の栽培が困難で土地生産性の向上が難しかったため、二圃式が残り、粗放的な農業になってしまっています。
もう一つの地中海式農業
これまでは典型的な、伝統的な地中海式農業の特徴を述べてきましたが、近年は農業技術の発展と近代化により新しい形の地中海式農業が現れています。これが顕著にみられるのがアメリカ西海岸、特にカリフォルニア州です。
大きく影響を与えているのが灌漑設備の普及です。
灌漑設備が整備されていれば、乾燥を気にせず作物をどんどん作ることができます。カリフォルニア州では、灌漑設備を用いて果樹を大量に生産しているほか、さらに米(←夏作物)などの夏作物の栽培にも成功しています。カリフォルニア米は聞いたことありますよね。またカリフォルニア州では酪農も盛んにおこなわれていますが、これは飼料として果樹栽培の副産物(アーモンドの殻など)を利用できることも理由の一つとなっています。
カリフォルニア州の農業の詳細については、地誌で詳しくみていくことにしましょう。
分布
地中海式農業は、容易に想像のできるように地中海性気候地域に分布します。具体的には、
- 地中海沿岸
- アメリカ合衆国西海岸
- チリ中部の太平洋沿岸(首都サンティアゴは地中海性気候!)
それから小規模にみられるのが、
- オーストラリア(パース周辺)
- 南アフリカ共和国(ケープタウン周辺)
という感じです。つまり地中海性気候がみられる地域ということです。
ヨーロッパだけではないんですね。チリ産のワインもよく見かけると思いますし、スーパーに行けばカリフォルニア産のオレンジが並んでいるでしょう。