インターネットは40年以上前に設計されて以来、現在では世界中がネットワークで繋がるようになりました。その中でセキュリティや移動通信の問題を解決するためファイヤーウォールやMobile IPといった様々な改良技術が導入されてきましたが、これらはいわばパッチワークのように貼り合わせた形なので元々のインターネット基本設計には整合しないためいずれは破綻を迎えると言われています。
寺岡研究室ではインターネットの基本設計を見直し、来るべき新しいインターネットと分散システムについての研究をおこなっています。
Q「まずはですね、基本的な基本設計ですね、をちゃんと考えなおそうというのが必要だと思ってまして。そういう意味で現在のインターネットというのは5階層の階層モデルになってるんですけども、それだとちょっとまずいかなァと考えまして、もう1階層足してやろうと考えています。
それによりましてアプリケーション対してもっと、何ていいますか、リッチな使いやすい通信方法を提供する必要があると考えています。」
二つのコンピューター間を複数の通信路で繋ごうとした場合や障害等を避け適切な経路を探し出そうとする場合、現在の5階層モデルのインターネットでは一番上の階層であるアプリケーション層においてアプリケーションが全て処理をおこなっています。
そこを下の階層であるトランスポート層との間にもう1階層加えそこで処理を行なう事によってアプリケーション層から見て繋がった一本の通信路に見せる事になり、アプリケーションに負担が少ないスムーズなネットワークを実現させようというのです。
この他にもう一つ力を入れて研究を進めているのがID/Locator Splitです。
現在のインターネットでは、IPアドレスと呼ばれるある端末のネットワーク上の位置指示子(Locator)が、その端末自体の識別子 (Identifier)の役割も担っています。
そのため通信中に端末のIPアドレスが変化すると通信を継続できないという問題が生じてしまいますが、locatorとIdentifierを分離して通信端末の認識としてIdentifierを、通信相手のネットワーク上の位置を知るためにLocatorをそれぞれ用いる事によって問題を解決しようと考えています。
Q「現在IPアドレスというものでエンドのシステムが認識されています。この番号なんですけども、番号はインターネット上の住所の役割も持っていますし、インターネット内での名前という、二つの役割を持っています。
そうしますと、コンピューターがインターネット内を移動しますと結局住所が変わってしまいます。で住所が変わってますけども名前は変わってないですね。って訳ですから、IPアドレスが二つの意味を持っているというのは非常にまずい訳です。ですからIDとロケーター、つまり識別子と住所をちゃんと分離しましょうと。で、相手の名前さえ知ってればちゃんと通信が出来るという風に考えています。」
インターネットの基本設計から未来のネット社会をみつめる寺岡研究室。
これらの研究は机上の論理やシュミレーションだけではなく、実装や実環境での実験を重視して進められています。
Q「原理を設計しまして、上手くいくはずだと考えていてもやっぱりそこで終わっちゃつまんない訳ですね。で、ネットワークっていうのは使う技術ですからやっぱりちゃんと実走して動かしたいと。でやっぱり実験室で動いたらもっと大規模な環境で実験したいというところが面白いところだと考えています。」