【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
ホメオティック遺伝子について講義します。
語呂「褒めるの大切!個性が伸びる!(ホメオティック遺伝子は体節に個性を与える)」
●ホメオティック遺伝子には、ホメオボックス(180塩基対からなる)と呼ばれる共通の配列があることが多い。
●ホメオボックスにコードされるタンパク質の領域はホメオドメイン(60アミノ酸からなる)と呼ばれる。
●ホメオティック遺伝子は転写因子をコードしている(ホメオドメインの領域がDNAとの結合に関わる。ホメオドメインは、ヘリックス・ターン・ヘリックスという、多くのDNA結合タンパクがもつ特徴的な構造をもつ。一般に、ホメオドメインをもつタンパク質は、DNAに結合し、転写因子としてはたらく)。
●ショウジョウバエのホメオティック遺伝子と相同な遺伝子は、ほとんどすべての動物に見出されており、ショウジョウバエのものも含めてHox遺伝子(ホックス遺伝子)と呼ばれている。
●Hox遺伝子にコードされているタンパク質には、DNA結合領域であるホメオドメイン(ホメオボックスにコードされる領域)が含まれている。「Hox」は「ホメオボックス homeobox」の略に由来する。
●はじめ、ホメオティック突然変異(体の構造の一部が別の構造に変化する形態形成異常変異)の原因遺伝子として、ホメオティック遺伝子が発見された。しかし、その後、同じような遺伝子が脊椎動物にも存在することがわかり、Hox遺伝子という総称がついた。
●最初のホメオボックスがショウジョウバエで発見されるやいなや、生物学者たちは、そのホモログ(進化の過程で一つの共通祖先遺伝子に由来すると考えられる遺伝子)が脊椎動物にも存在するのではないかと予想した。そして実際にHox遺伝子が発見されたのである。
●Hox遺伝子は、「ホメオボックスをもつ遺伝子の中で、ショウジョウバエのアンテナペディア遺伝子群とバイソラックス遺伝子群に帰属するホメオティック遺伝子群を足し合わせたものと進化的起源を共有すると考えられる遺伝子群」を指すことが多いが、定義には揺れがある。高校生は今使っている教科書に解釈を合わせればよい。
●ギャップ遺伝子→ペア・ルール遺伝子→セグメント・ポラリティ遺伝子の順番で遺伝子群(これら3つの遺伝子群を分節遺伝子という)がはたらき、体節の位置を決めていく。そして、それぞれの体節に個性を与えるのがホメオティック遺伝子である。
語呂「ギゅっとペアルックのホリデイ(ギャップ、ペア・ルール、セグメント・ポラリティの順番ではたらく)」
それぞれの分節遺伝子の名前の由来は、それぞれの遺伝子群に変異が起きると、体節に大きな欠落(ギャップ)ができる、2つに1つが欠落する(ペア・ルール)、極性がおかしくなる(ポラリティが極性という意味)ことから。
分節遺伝子や、Hox遺伝子群についての講義はこちら。
• 分節遺伝子・ホメオティック遺伝子・Hox遺伝子群【ショウジョウバエの発生】...
*ホメオティック遺伝子=Hox遺伝子とすることもあります。
*生物界を見渡せば、ホメオボックスを持たないホメオティック遺伝子も多数あります(ホメオティック突然変異の原因となる遺伝子をホメオティック遺伝子とすれば)。
たとえば、植物のABCモデルにおいて、A~C遺伝子はホメオティック遺伝子です(体のどこに何をつくるか決める)。しかし、これらの遺伝子産物のタンパク質がもつDNA結合ドメインは、(ホメオボックスにコードされる)ホメオドメインではなく、(MADSボックスにコードされる)MADSドメインです。
*内部にホメオボックスがある遺伝子でも、ホメオティック遺伝子でない遺伝子もあります(ホメオティック突然変異の原因となる遺伝子をホメオティック遺伝子とすれば)。
*ホメオボックスを持つ遺伝子をホメオボックス遺伝子といい、その一部を(ホメオボックスを持ち、同一染色体上にクラスターを形成し、多細胞生物のボディプランに関わる制御遺伝子を)Hox遺伝子と呼ぶこともあります。
*Hox遺伝子を持つことを、動物の共通の特徴とすることもあります。
*ショウジョウバエに対してホメオティック遺伝子という名称を、脊椎動物に対してHox遺伝子という名称を用いることもあります。
*Hox遺伝子をhomeobox遺伝子の略とすることもあります。ただし、ホメオボックスをもつ遺伝子の中の1つのグループをHox遺伝子とすることも多いです。
*ホメオティック遺伝子の定義に教科書間で揺れがありますが、高校生は、『ホメオティック遺伝子』と『ホメオティック突然変異』しかテストにほとんど出ませんから、用語の定義の議論については気にしなくて大丈夫です。
●ホメオティック突然変異体の例
①アンテナペディア突然変異体(触角が脚に置き換わった)
②ウルトラバイソラックス突然変異体(平均棍が翅に置き換わった)
●アンテナペディア突然変異体では、触角(antenna)が脚(pedis)に転換されている。ウルトラバイソラックス突然変異体では、二重(bi)の胸部(thorax)と2対の翅が生じる(正常な双翅目のショウジョウバエは、その双翅目の名の通り、1対の翅しか有しない)。
●ショウジョウバエは双翅目(そうしもく)であり、その名の通り、通常は翅は1対である。ハチなどは2対の翅をもつ。双翅目は4枚翅の昆虫から進化してきたと考えられているので、翅を4枚もつウルトラバイソラックス変異体は、先祖返りとも言える(ただし、進化に関わった遺伝子については確定していない)。
問題:アンテナペディアやバイソラックスなど、その遺伝子に変異が起きると体節に正常な構造が生じなくなる遺伝子をなんというか。また、そのような遺伝子に生じた変異(体節に本来できるはずの構造ができない変異)を何というか。
答え:ホメオティック遺伝子、ホメオティック突然変異
●さらにパワーアップしたい人は、ショウジョウバエで見つかったホメオティック突然変異について教科書で復習しておきましょう。
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