重野研究室は、2009年12月に行われた慶應科学技術展(KEIO TECHNO-MALL)において、P2P(Peer-to-Peer)ネットワークにおける新ファイル交換の実現手法とユーザの信頼性評価に関する展示を行いました。
P2Pとは、クライアント・サーバ方式のネットワークに対して、各ノードが対等で相互にやりとりを行う方式のことです。
つまりピアと呼ばれる各コンピュータは状況に応じてサーバの役割もクライアントの立場も演じることになり、これを有効的に利用すれば効率的なデータ送受信が可能となり、新しいコンテンツ流通基盤として注目されています。
Q「P2Pは、非常に期待値が高い技術ですが、皆さんご存知の通り安全性の問題やウイルスの問題などに対してまだ弱い部分があるので、なかなか実用になっていないのが現状です。しかし今後、今のサーバとクライアントに基づくアーキテクチャからP2Pのようなユーザがダイレクトに情報をやりとりする方法にあらゆるものが移行していくと考えられています。すでに、ファイルの交換などに使われていたり、あるいは映像のストリーミングを受け取ったユーザー間で少しずつ情報を交換するといったことが一部で行われています。今後セキュリティなどの問題が改善されれば、もっと広く使われる技術だと思います。」
P2Pのセキュリティ上の問題を解決するために、研究室では非構造化P2Pネットワークにおける評判集約手法の研究をおこなっています。
P2Pでは、初めて出会う相手と情報を交換するので、相手がどれだけ信頼できるか分かりません。そこで、ネットワーク上の他のユーザーから評判を集めてくれば、相手の信頼性を客観的に評価できます。
Q「今赤い枠で囲まれているこのマシンが、はたして評判が良いのか悪いのか、あるいは使いものになるコンピュータなのか、ならないコンピュータなのか、いろんな意味で評価される対象になっています。周りのコンピュータは少しずつしかこのコンピュータのことを知りません。これをお互いに自分が持っている評価値を交換することで、最終的に全体でこの赤い枠のコンピュータに対する評価を定めていきます。」
評価の対象とするコンピュータに対して、周りの2台のコンピュータはそれぞれ0.1の評価値を持っています。この情報を互いに少しずつ交換していくことで、だんだん一つの評価値に収斂していきます。
このようにネットワーク参加者の信頼性を数値化することで、ファイル交換の際に評価値の高いコンピュータを選択できるようになり、より安全な取引が可能になります。