天野研究室(慶應情報工学科 )では、より低電力で高い性能を出すコンピューターの実現を目指し研究をおこなっています。こういった開発には、動的リコンフィギャラブルという技術を応用しています。これは解こうとする問題に応じてハードウェアの構造を変化させ、瞬間瞬間に問題に応じて最適な構造に変化させより高速な計算を可能にするというものです。天野研究室ではこの技術によって低電力で大きな計算処理が可能なプロセッサー「マクラ3」の開発に成功しました。
Q 「我々の研究室の特徴は、方法を提案するだけではなくて実際にチップを設計し、あるいはシステムを設計し動かしてその上で検証してみる事が特徴です。この動的リコンフィギアブルプロセッサー「マクラ3」というのは我々が最先端の技術を用いて開発したチップでありまして、今使われているDSP、信号処理用のプロセッサーというものがあるんですけどもそれの30分の1のエネルギー効率で動きます。10ミリワットほどの電力でかなり強力な画像処理プログラムを動かす事が出来ます。今これは「マクラ3」の部分の電流を計っているんですけども、大体5ミリアンペアぐらいで処理をおこなっています。同じ処理を信号処理用のプロセッサーで実行しますと500ミリアンペアくらいかかりますので、そういう意味ではこれ非常に少ない消費電力で処理を行なっている事がわかります。」
天野研究室ではもう一つ、プロセッサーの並列処理技術の研究をおこなっています。これは家庭用ゲーム機などで利用されている安価で小さなプロセッサーを沢山利用し、同時に動かす事でより高速処理が可能なクラスター環境を構築しています。
Q「こちらの部屋には商業ゲーム機であるプレステーション3が全部で72台置かれています。このプレステーション3の特徴としましては、セルと呼ばれているプロセッサーが導入されている点です。このセルというプロセッサーは一個の制御用のプロセッサーコアおよび8個の演算用のコアが搭載されていて、されに大きな特徴としてリナックスと呼ばれ得ているOSを導入できる点にあります。こちらのリナックスOSをインストールする事によってプログラマーが自由にマルチコンプログラミングを行なう事が出来ます。このシステムは1台1台のプレステーション3が非常に安価ですので、高い性能を低価格で実現する事が出来る、すなわちコスト対性能を上げる事を大きな目標としています。」
こういった研究はJAXAとの協力による流体力学の高速計算機やバイオ分野での生体シュミレーション計算技術での応用が期待されています。
Q「我々はさらに、今最適な構造を常にどんどん変えていく事で最も消費電力を少なくする、もっともエコなコンピューターというのを目指しています。現在、今使われている方法の大体30分の1位のエネルギー効率を実現する、世界最高レベルのエネルギー効率のいい最もエコなコンピューターというのを作っております。」
必要に応じて柔軟に構造を変化させるリコンフィギャラブル技術と多くのプロセッサーを同時に稼働し計算をおこなう並列処理技術。天野研究室ではこの二つの研究を更に進めより低電力で高性能なコンピューターの開発に貢献していきます。