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筋収縮について講義します。
*サルコメアの長さと張力のグラフについての講義はこちら↓
• サルコメア(筋節)の長さと張力のグラフ【筋収縮】 高校生物
*滑り説についての講義はこちら↓
• 滑り説・アクチンフィラメント・ミオシンフィラメント【筋収縮】 高校生物
*骨格筋の構造に関する簡単な講義はこちら↓
• 筋繊維(筋細胞)と筋原繊維【筋収縮】 高校生物
● 筋原繊維にはアクチンフィラメントやミオシンフィラメントが含まれている。
● アクチンフィラメントはアクチンというタンパク質から、ミオシンフィラメントはミオシンというタンパク質から成る。「フィラメント」は繊維状の構造を意味する。ミオシンは、以下のような形(2本のゴルフクラブを合体させたような形)をしている。ATPアーゼ活性とアクチンへの結合能は頭部に存在する。
● 高校生は知らなくてよいが、暗帯の中央にはM線という仕切りがあり、濃い線に見える。M線には色々なタンパク質があり、ここでミオシンフィラメントが連結している。
● アクチン(actin)の語源は「act(行動する)」に由来する。また、ミオシンのミオ(myo-)は「筋肉の~」に由来する。
● 筋収縮の流れ
① 神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)において、運動神経の軸索末端からアセチルコリンが分泌される。
語呂「運動して汗が散る(運動ニューロンがアセチルコリンを分泌)」
*アセチルコリンは筋細胞の細胞膜上の受容体に結合する。これにより筋細胞内にNa+が流入し、活動電位が発生する(②が起こる)。
*運動ニューロンと筋細胞との接合部を神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)という。
② 筋細胞内にNa+が流入し、活動電位が発生する。膜電位の変化はT管を介して筋細胞の奥まで伝わる。
*筋細胞の細胞膜は深く陥入し、筋小胞体(きんしょうほうたい。特殊化した滑面小胞体)に達している。この筋細胞の細胞膜が陥入しているところをT管(てぃーかん)という。
③ T管の活動電位に伴って、筋小胞体からCa2+が細胞質に放出される。
(知らなくて良いが、T管は、筋細胞膜の興奮をリアノジン結合性カルシウムチャネルを通して筋小胞体に伝える。その結果、筋小胞体は貯蔵しているCa2+を筋原繊維に放出し、収縮を起こさせる。)
④ Ca2+がトロポニンと結合する。すると、トロポミオシンの構造が変化する。
⑤ トロポミオシンによって塞がれていたアクチンフィラメントのミオシン結合部位が露出し、アクチンフィラメントとミオシン頭部が結合できるようになる(アクチンのミオシン結合部位が露出する)。
⑥ ミオシン頭部がアクチンフィラメントに結合する。
⑦ ミオシン頭部がリン酸とADPを放出する。ミオシン頭部の立体構造が変化してアクチンフィラメントをたぐり寄せる。これにより筋肉が収縮する。
⑧ ATPがミオシン頭部に結合すると(アクチンとミオシン頭部の親和性が低下し)、ミオシン頭部がアクチンフィラメントから離れ、筋肉がし緩する。
⑨ ATPを分解したミオシン頭部は、立体構造を回復する。
⑩ 筋小胞体は『能動輸送』でCa2+を回収する。(めちゃめちゃ良く問われる!!!)
● 筋肉には骨格筋、内臓筋、心筋がある。骨格筋の細胞が多核であること、骨格筋と心筋は横紋筋である(横紋と呼ばれる縞模様がある)ことはよく出題される。内臓筋は平滑筋(横紋がない)である。
*意志によって働く筋肉を随意筋、意志とは無関係に働く筋肉を不随意筋という。骨格筋は随意筋である。内臓筋、心筋は不随意筋である。
● 骨格筋は疲労しやすく敏速に収縮する。内臓筋は疲労しにくくゆるやかに収縮する。心筋は疲労しにくく敏速に収縮する。
● 骨格筋の筋繊維は、数百個の筋芽細胞が融合して生じる(したがって骨格筋の筋細胞は多核にある)。
● 平滑筋では、筋節が横紋筋のようには整然と配列されていない。
● サリン (メチルホスホノフルオリド酸イソプロピル)は化学兵器用剤の神経ガスである。1930年代からドイツにおいて殺虫剤の研究の中で開発された。
サリンは、1994年の松本サリン事件、1995年の東京地下鉄サリン事件でテロに使用された。
サリンはアセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用(アセチルコリンの分解を阻害する作用)を有し、極めて毒性が高い。
神経終末はアセチルコリンをシナプスに放出し筋肉を収縮させる。筋肉はアセチルコリンが存在するかぎり、収縮を持続する。そのため、通常は、アセチルコリンエステラーゼが、直ちにアセチルコリンを分解している。
サリンが組織のアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害すると、アセチルコリンエステラーゼはアセチルコリンを分解することができなくなる。すると、アセチルコリンがシナプスに過剰に蓄積し、筋収縮をコントロールできなくなる。その後、短時間で様々な症状が現れ、呼吸筋が麻痺状態になり死亡する。
● 筋肉において、力を発揮する過程の終わりになっても、アクチンとミオシン頭部の架橋は解消されない。新たなATP分子との結合が架橋の解消には必要である。細胞の膜構造は、死後、その密閉性を失い、カルシウムイオンが壊れた筋小胞体から漏出する。これがきっかけとなってミオシン頭部がアクチンに結合する。しかし、ATP合成が停止しているので、ミオシン頭部とアクチンの連結が解消されない。その結果、筋は硬くなり、収縮も伸展もしなくなる。これが「死後硬直(死体硬直)」である。死後硬直は死後3~4時間に始まり、約24時間続くが、リソソームからのタンパク質分解酵素が架橋を分解し消失する。
● コナン・ドイルによる小説『シャーロック・ホームズ』には、クラーレという毒が登場する。クラーレは、南米の原住民によって用いられた矢毒で、有効成分の一つであるd-ツボクラリンは、運動神経終末から分泌されるアセチルコリンと拮抗して、終板(運動終板ともいう。神経筋接合部に形成される筋表面の板状の構造のこと)に存在するアセチルコリン受容体を占拠し、アセチルコリンの作用をブロックする。結果、神経筋遮断を引き起こす。
● 1本の運動ニューロンは、複数の筋細胞(筋繊維)を支配している。1本の運動ニューロンと、その運動ニューロンが支配するすべての筋細胞をまとめて「運動単位(うんどうたんい)」という。運動ニューロンに活動電位が発生すると、その運動単位のすべての筋細胞が1つのまとまりとして収縮する(興奮した運動ニューロンの支配する筋細胞が同期的に興奮・収縮する)。
0:00 筋収縮の流れ
2:36 暗帯と明帯
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