レンツの法則
電磁誘導
これまでの単元では、電流が磁場を作りだす、という話をしてきたが(「電流が作る磁場」の辞書を参照)、逆に 「磁場を利用して、導線に電流を流せないか」 を考えてみる。
実は、棒磁石とコイルを並べ、コイルの両端に検流計をつなぐと、
- 棒磁石が静止している → 検流計は振れない
- 棒磁石を近づけたり遠ざけたり動かす → 検流計は振れる
ことがわかる。検流計が触れるということは、電流が流れており、これはコイルに電圧(電位差)が生じたことを意味する。
このように、コイルの内部の磁場の変化によって、コイルに電圧が生じる現象を電磁誘導という。電磁誘導により生じた電圧を誘導起電力といい、誘導起電力によって閉じた回路に流れる電流を誘導電流という。
では、誘導起電力はどのような向きに、どのような大きさで発生するのだろう?実は、
- 誘導起電力の向き:レンツの法則
- 誘導起電力の大きさ:ファラデーの電磁誘導の法則
で与えることができる。この辞書では、誘導起電力の向き(つまり誘導電流が流れる向き)を定める、レンツの法則について見ていこう。
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レンツの法則
結論から言うと、誘導起電力は、それによって流れる誘導電流のつくる磁場が、外から加えられた磁場の変化を打ち消すような向きに生じることが確認されている。これをレンツの法則といい、これにより誘導起電力の向き、つまり誘導電流の流れる方向が決定する。「コイルは磁場の変化を嫌うイヤイヤ星人」というイメージを持っておこう。
これは例を確認して理解するのが大事なので、練習してみよう。
例
【問1】下の図のように、ソレノイドコイルのそばに磁石のS極を置いた。ここで、磁石をコイルから遠ざけるとき、電流はどちら向きに流れるか?
【答1】磁石のS極が遠ざかるとき、ソレノイドコイルの中を貫く右向きの磁場が減少する。レンツの法則より、変化を嫌って、コイルの中を貫く右向きの磁場を増やすような電流を生じさせる誘導起電力が生じる。(電流が作る磁場の向き については、辞書で復習しよう。右ねじの法則が活躍する)
よって、誘導電流は①の向きに生じる。
【問2】下の図のように、正方形型のコイルのそばに磁石のN極を置いた。ここで、コイルを磁石に近づけていくとき、電流はどちら向きに流れるか?
【答2】コイルを磁石に近づけると、磁石のN極が近づくので、コイルの中を貫く左向きの磁場が増加する。レンツの法則より、変化を嫌って、コイルの中を貫く右向きの磁場を増やすような電流を生じさせる誘導起電力が生じる。(電流が作る磁場の向き については、辞書で復習しよう。右ねじの法則が活躍する)
よって、誘導電流は①の向きに生じる。
補足
磁場の変化がなくなるまで、誘導起電力は発生し続け、誘導電流も流れ続ける。
ちなみに、コイルが閉じたループになっていない場合(どこかでちょん切れていたり)でも、磁場の変化があれば、誘導起電力自体は生じており、電位差は発生する。ただし回路としてつながっていないので、誘導電流は流れない。