神戸大2018より
今回は神戸大学の入試問題を選んでみました。神戸大学の入試は2科目120分なので、難関国公立の中では比較的問題は解きやすいです。(他の大学は2科目150分のところが多いです。京都大学では2科目180分ですしね。)
これは記述式ですが、センター試験にも役立つと思いますので、この時期にアップしてみました!
以前作ったエチレングリコールの動画はこちら
https://youtu.be/QWyqbz-n5Ao
以下本文(図は省略)
次の文章を読んで,問1~6に答えなさい。
細胞は細胞膜によって外界から隔てられている。真核細胞内に存在する細胞小器官の多くもまた膜で仕切られており,その内側は外側とは異なる環境が保たれている。細胞膜や細胞小器官を構成する膜を生体膜といい,基本的な構造は同じである。生体膜はリン脂質の二重層とタンパク質から構成されている。脂質層はイオンや親水性の分子を透過させにくい性質をもっているが,(A)これらの透過しにくい分子の多くは,生体膜に存在するタンパク質を介して膜を通過する。例えば,細胞内に必要とされる物質のうち,最も多く存在する水分子は細胞膜の脂質層部分を透過しにくいため, ア と呼ばれる膜タンパク質を通って細胞の内外に浸透することが知られている。
動物細胞の細胞膜に存在するナトリウムポンプは,(B)ATPの イ 反応によって取り出されるエネルギーを利用してナトリウムイオンを細胞外へ排出するとともに, ウ イオンを細胞内に取り込む。一方,細胞膜には(C) ウ イオンを自由に通過させるチャネルタンパク質も存在する。そのため,取り込まれた ウ イオンは細胞外へ自由に出て行くことができる。その結果,細胞の外側を基準にすると,(D)細胞の内側の電位(膜電位)は約-90~-60mVの値となる。
生体膜を隔てた分子の輸送と,それによって形成される物質濃度の差は,細胞小器官の機能においても重要である。(E)動物細胞でのエネルギー産生を担う細胞小器官である エ では,生体膜をはさんだ オ イオンの濃度勾配を利用してATPの合成が行われる。
問1 空欄 ア ~ オ にあてはまる最も適切な語句を答えなさい。
問2 下線部(A)のように,生体膜がもつ,特定の物質だけを透過させる性質を何というか,答えなさい。
問3 下線部(B)の現象は物質の濃度勾配に逆らって起こり,下線部(C)の現象は物質の濃度勾配にしたがって起こると考えられる。このような物質移動の様式を何というか,最も適切な語句を(B)と(C)の解答欄にそれぞれ漢字4字で答えなさい。
問4 休止状態の神経細胞(ニューロン)において,下線部(D)は静止電位とよばれる。一方,刺激を受けたニューロンでは活動電位が発生することで,興奮の伝導をおこなっている。活動電位が生じる仕組みを,それに関わるイオンとタンパク質の名称を挙げて,140字以内で説明しなさい。ただし,句読点も字数に含める。
問5 下線部(E)の細胞小器官で合成されたATPが,ナトリウムポンプの駆動エネルギーとして利用されるためには,生体膜を何回通過する必要があるか,数字で答えなさい。
問6 次の図1は,ある細胞の外液に,細胞膜の透過性が高い物質Pと,透過性が低い物質Qを添加したときの,細胞の体積の変化を観察した結果を示したものである。図1を見て,以下の(1)および(2)に答えなさい。
(1) Pを添加した場合の90秒後まで,Qを添加した場合の180秒後までは,いずれも細胞の体積が減少している。このとき,それぞれの細胞膜ではどのような物質の通過があったと考えられるか,その方向性も含め,40字以内で説明しなさい。ただし,句読点も字数に含める。
(2) Pを添加した場合,90秒後以降では再び細胞の体積が増加し,やがて元の体積に戻っていった。このとき,細胞膜ではどのような物質の通過があったと考えられるか,60字以内で説明しなさい。ただし,句読点も字数に含める。