最近では「キメラマウスが生じる確率」のこの問題の出題頻度も低くなった気がしますね。個人的にはこちらのES細胞を利用したノックアウトマウスの作成の方が出題頻度が高い気がします。↓↓
• 高校生物「ES細胞を利用したノックアウトマウスの作成」
以下は2003年京都大学の入試問題です。「キメラマウスが生じる確率」の動画を見たあとで是非チャレンジしてみて下さい!
次の文を読み,問1~問4に答えよ。解答はすべて所定の解答欄に記入せよ。
卵黄の量と分布は,卵割が起こる部位と割球の大きさに影響をおよぼす。卵黄が多いところでは卵割が ア ので,大量の卵黄がかたよって存在する魚類や鳥類の卵の卵割形式は イ である。ほ乳類では,胎盤を通して母体から胎児に栄養が供給されるので,受精卵の卵黄量は ウ ,均一に分布する。このような等黄卵の卵割形式は エ である。マウス(ハツカネズミ)の受精卵は8細胞期となった時に,いくつかの割球を破壊しても正常に発生する。このように オ 能力がそなわった卵を オ 卵という。これに対して,早期卵割期の割球の一部を破壊した時に不完全な発生をする卵を カ 卵という。また,二つのマウスの卵割期の胚を凝集させてひとつの胚とし,発生させると1匹の完全なマウス個体となって生まれる。したがって,この時期のマウスの胚では各細胞の予定運命は決まっていない。そこで,以下の実験1,実験2をおこなった。
実験1:茶色と黒色の異なる2系統のマウスからそれぞれ8細胞期の胚を採取し,外側の殻(透明帯)をタンパク質分解酵素で処理して除き,8個の割球からなる細胞塊を取りだした。シャーレの中で2系統に由来する細胞塊を凝集させると,16個の割球からなる細胞塊となった。これを培養すると,この細胞塊は胚盤胞(胞胚期の胚)まで発生が進んだ。このようにして得られた胚盤胞を雌マウスの子宮に移植したところ,17日後にマウスが生まれた。この実験を繰り返し合計100匹のマウスが生まれた。なお,毛色を茶色に決定する遺伝子であるAは対立遺伝子aに対して優性であり,使用した茶色と黒色のマウスの遺伝子型はそれぞれAAとaaだった。
問1 文中の ア ~ カ に適切な語句を記入せよ。
問2
(ア) 胚盤胞を構成する細胞のほとんどは,胎盤などの胎児を発育させるために必要な組織となり,胚盤胞内部にある細胞の一部だけが胎児へと発生する。ここで,胚盤胞内部の細胞のうち,1個の細胞だけが胎児に発生すると仮定すると,実験1で生まれるマウスの毛色は何色になると予想されるか,すべて記せ。
(イ) 実際に実験1で生まれたマウスの毛色は茶色が12匹,黒色が13匹,茶色と黒色のまだら模様が75匹だった。この結果から,胚盤胞内部の何個の細胞が,発生して胎児になったと考えられるか,記せ。
(ウ) (イ)のように考えた理由を80字程度で簡潔に述べよ。
問3 茶色と黒色のまだら模様のマウスでは,皮膚以外の全身の器官でも2系統の異なる胚に由来した細胞が混在している。このまだら模様のマウスが成熟したので黒色のマウス(遺伝子型はaa)と交配した。
(ア) この時に生まれてくるマウスの,予想される毛色と遺伝子型を記せ。
(イ) (ア)のように考えた理由を30字程度で簡潔に述べよ。
実験2:茶色系統マウスの胚盤胞内部から細胞を無作為に1個取りだし,培養シャーレ内で増殖させ,多数の細胞を得た。このうちの8個の細胞を,黒色系統マウスの8細胞期の胚由来の細胞塊と凝集させ,再び胚盤胞になるまで培養を続けた。このようにして得られた,いくつかの胚盤胞を雌マウスの子宮に移植した結果,17日後に茶色,黒色,および茶色と黒色のまだら模様のマウスがそれぞれ生まれた。
問4 実験2を何度くり返しおこなっても,同じ結果が得られた。このことから,胚盤胞内部の細胞の性質について推察されることを次の語句をすべて用いて簡潔に述べよ。
決定, 運命, 胎児, 発生, 能力
(解答例)
問1 ア 妨げられる イ 盤割 ウ 少なく
エ 等割(等全割,全等割) オ 調節(調整)
カ モザイク
問2 (ア) 茶色,黒色 (イ) 3個
(ウ) 1:1に含まれるAAとaaのうちn個が発生すると,n個中の遺伝子型の比率は(AA+aa)nで求められ,茶色:黒色:茶色と黒色のまだら=1:1:6によりn=3とわかる。
問3 (ア) 茶色:Aa 黒色:aa
(イ) まだら模様のマウスの卵原細胞や精原細胞にもAAとaaが混在しているから。
問4 胚盤胞内部の細胞の運命は決定されておらず,体細胞分裂を繰り返しても,胚盤胞を経て胎児に発生する能力があると推察される。