ABO式血液型 高校生物
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説明
【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
ABO式血液型について講義します。
覚え方「凝集原が抗原。原の字が共通」
問題:ABO式血液型を考える。抗A抗体(赤血球表面にあるAの糖鎖に結合する抗体)をもつ人の血液型は何型か。
答え:B型、O型
問題:A型の人の血清には抗B抗体が含まれている。(?)型の人の赤血球にA型の人の血清を加えたところ、血液凝集反応が起こった(抗原抗体反応が起こった)。(?)に入る血液型を答えよ。複数可能性がある場合はすべて答えよ。
答え:B、AB
●ABO式血液型:ABO式血液型における血球の凝集反応は、抗原抗体反応の一種である。
赤血球の細胞膜上に存在する抗原(凝集原という。AやBがある)と血清中に存在する抗体(凝集素という)は、血液型ごとに存在する組み合わせが異なる。
●2種類の凝集原をAとBで表すと、A型にはAが、B型にはBが、AB型にはA・B両方が存在し、O型にはまったく存在しない。
●凝集原A、Bと抗原抗体反応を起こす2種類の凝集素をα(抗A抗体)とβ(抗B抗体)で表すと、A型にはβが、B型にはαが、O型にはαとβが存在する。AB型はαもβも持たない。
Point. 自分の凝集原と凝集素が結合しないような組み合わせになっている。例えば、A型の人(=凝集原にAを持つ人)は凝集素にβを持つ。
●どうしてA型の人が生まれつきβを持つのかはわかっていない。おそらく腸内細菌にA、Bと同様の形状の構造を持つものが存在するのであろう。ただし、自己を攻撃するリンパ球は成熟前に死滅する(免疫寛容という)ので、A型の人はβのみをもつようになるのであろう(αを作るリンパ球は、免疫寛容のしくみによって排除される[自己成分に対して攻撃が起こらないようになっている])。
●昔、医師達が輸血を行った際、うまくいくこともあれば、時には患者が死んでしまうことがあった(したがって、多くの国々が輸血を禁止した)。その秘密を解明したのは、オーストリアの医師、ラントシュタイナーであった。彼は、血液にはタイプ(型)があるのではないかと考え、『ABO式血液型』を発見した。
●血しょう中の凝集素(α、β)は、大量の血液で薄まってしまう。一方、血液中に赤血球は大量に含まれるので、輸血は、ほとんど赤血球移植であるといえる。このことから、「O型の人はすべての血液型に輸血できるが、O型以外の人から輸血を受けることはできない」などと言われることもある。しかし、血しょう中の凝集素の影響もないわけではない(O型の人の血しょうにはα、βがある)。よって、基本的に、同じ血液型同士で輸血を行う。
●ABO式血液型は、赤血球表面の糖鎖による血液の区別である。
したがって、よく言われる血液型性格診断、すなわち「A型の几帳面で、こだわる所にはこだわり、B型は自己中心的でリーダーシップがあり、O型は優しく協調性があり、AB型は少し変わり者で創造性がある」ことの根拠にはならない。これらはすべてホモ・サピエンスの多くに見られる特徴であると思われる。まず、「こだわる所にはこだわり」という文章は「走る時は走る」と同じように、情報をほぼ含まない文章である。ホモ・サピエンスは集団で生活するため、協調性を持ち、時に他者と助け合い、時にリーダーシップを発揮する。生き残るために時に自己中心的にならなければならない。文明を持ち、創造性を発揮し、複雑な思考を行うようになった。その複雑な精神状態を見た他者から、「変わり者」「変な所にこだわる(几帳面)」と言われることも多いだろう。
●赤血球の細胞膜にはグリコフォリンという膜貫通型タンパク質が存在する。グリコフォリンは糖タンパク質であり、ポリペプチド鎖が細胞膜を貫き、その細胞外部分に糖鎖が結合している。糖鎖には3種類あり、それぞれH抗原、A抗原、B抗原と呼ばれる。それらの組み合わせによって、ABO式血液型が決まる。H抗原はどの血液型にも存在する(4つの糖鎖からなる前駆体[コア糖鎖]にH転移酵素によりフコースが結合しH抗原となる)。(A転移酵素により)H抗原にN-アセチルガラクトサミンが付加されるとA抗原、(B転移酵素により)ガラクトースが付加されるとB抗原ができる。それぞれの糖を付加する転移酵素を持つヒトの血液型はA型、B型となり、両方の酵素を持つヒトはAB型となる。O型のヒトはどちらの酵素も持たない。
●ABO式血液型システムをコードするABO遺伝子は、第9番染色体にあり、A、B、Oの3つの対立遺伝子がある。ABO遺伝子は、進化的には、最初にA遺伝子ができて、変異によりB遺伝子とO遺伝子が生じたと考えられている。すなわち、A遺伝子の7塩基が置換し、B遺伝子となった。また、A遺伝子に1塩基の欠失が起きて、O遺伝子となった(この1塩基の欠失によってフレームシフトが起き、酵素活性が消失した[終止コドンの早期出現による])。
●赤血球は、例外的にMHCを発現していない。なので、比較的自由に移植ができる(輸血ができる)。臓器移植の場合は、MHCの一致が非常に重要になってくる。
#生物基礎
#高校生物基礎
#ABO式血液型
ABO式血液型について講義します。
覚え方「凝集原が抗原。原の字が共通」
問題:ABO式血液型を考える。抗A抗体(赤血球表面にあるAの糖鎖に結合する抗体)をもつ人の血液型は何型か。
答え:B型、O型
問題:A型の人の血清には抗B抗体が含まれている。(?)型の人の赤血球にA型の人の血清を加えたところ、血液凝集反応が起こった(抗原抗体反応が起こった)。(?)に入る血液型を答えよ。複数可能性がある場合はすべて答えよ。
答え:B、AB
●ABO式血液型:ABO式血液型における血球の凝集反応は、抗原抗体反応の一種である。
赤血球の細胞膜上に存在する抗原(凝集原という。AやBがある)と血清中に存在する抗体(凝集素という)は、血液型ごとに存在する組み合わせが異なる。
●2種類の凝集原をAとBで表すと、A型にはAが、B型にはBが、AB型にはA・B両方が存在し、O型にはまったく存在しない。
●凝集原A、Bと抗原抗体反応を起こす2種類の凝集素をα(抗A抗体)とβ(抗B抗体)で表すと、A型にはβが、B型にはαが、O型にはαとβが存在する。AB型はαもβも持たない。
Point. 自分の凝集原と凝集素が結合しないような組み合わせになっている。例えば、A型の人(=凝集原にAを持つ人)は凝集素にβを持つ。
●どうしてA型の人が生まれつきβを持つのかはわかっていない。おそらく腸内細菌にA、Bと同様の形状の構造を持つものが存在するのであろう。ただし、自己を攻撃するリンパ球は成熟前に死滅する(免疫寛容という)ので、A型の人はβのみをもつようになるのであろう(αを作るリンパ球は、免疫寛容のしくみによって排除される[自己成分に対して攻撃が起こらないようになっている])。
●昔、医師達が輸血を行った際、うまくいくこともあれば、時には患者が死んでしまうことがあった(したがって、多くの国々が輸血を禁止した)。その秘密を解明したのは、オーストリアの医師、ラントシュタイナーであった。彼は、血液にはタイプ(型)があるのではないかと考え、『ABO式血液型』を発見した。
●血しょう中の凝集素(α、β)は、大量の血液で薄まってしまう。一方、血液中に赤血球は大量に含まれるので、輸血は、ほとんど赤血球移植であるといえる。このことから、「O型の人はすべての血液型に輸血できるが、O型以外の人から輸血を受けることはできない」などと言われることもある。しかし、血しょう中の凝集素の影響もないわけではない(O型の人の血しょうにはα、βがある)。よって、基本的に、同じ血液型同士で輸血を行う。
●ABO式血液型は、赤血球表面の糖鎖による血液の区別である。
したがって、よく言われる血液型性格診断、すなわち「A型の几帳面で、こだわる所にはこだわり、B型は自己中心的でリーダーシップがあり、O型は優しく協調性があり、AB型は少し変わり者で創造性がある」ことの根拠にはならない。これらはすべてホモ・サピエンスの多くに見られる特徴であると思われる。まず、「こだわる所にはこだわり」という文章は「走る時は走る」と同じように、情報をほぼ含まない文章である。ホモ・サピエンスは集団で生活するため、協調性を持ち、時に他者と助け合い、時にリーダーシップを発揮する。生き残るために時に自己中心的にならなければならない。文明を持ち、創造性を発揮し、複雑な思考を行うようになった。その複雑な精神状態を見た他者から、「変わり者」「変な所にこだわる(几帳面)」と言われることも多いだろう。
●赤血球の細胞膜にはグリコフォリンという膜貫通型タンパク質が存在する。グリコフォリンは糖タンパク質であり、ポリペプチド鎖が細胞膜を貫き、その細胞外部分に糖鎖が結合している。糖鎖には3種類あり、それぞれH抗原、A抗原、B抗原と呼ばれる。それらの組み合わせによって、ABO式血液型が決まる。H抗原はどの血液型にも存在する(4つの糖鎖からなる前駆体[コア糖鎖]にH転移酵素によりフコースが結合しH抗原となる)。(A転移酵素により)H抗原にN-アセチルガラクトサミンが付加されるとA抗原、(B転移酵素により)ガラクトースが付加されるとB抗原ができる。それぞれの糖を付加する転移酵素を持つヒトの血液型はA型、B型となり、両方の酵素を持つヒトはAB型となる。O型のヒトはどちらの酵素も持たない。
●ABO式血液型システムをコードするABO遺伝子は、第9番染色体にあり、A、B、Oの3つの対立遺伝子がある。ABO遺伝子は、進化的には、最初にA遺伝子ができて、変異によりB遺伝子とO遺伝子が生じたと考えられている。すなわち、A遺伝子の7塩基が置換し、B遺伝子となった。また、A遺伝子に1塩基の欠失が起きて、O遺伝子となった(この1塩基の欠失によってフレームシフトが起き、酵素活性が消失した[終止コドンの早期出現による])。
●赤血球は、例外的にMHCを発現していない。なので、比較的自由に移植ができる(輸血ができる)。臓器移植の場合は、MHCの一致が非常に重要になってくる。
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