【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
フロリゲン(花成ホルモン)について講義します。
*今回は大学受験用にかなり大雑把に説明したが、フロリゲンの実体・輸送・作用機序については、わかっていないことが多い。
*スライドに葉で「日長の情報」を感知するイラストがある(一般にそのように表現される)が、日長の情報を植物は「暗期の長さ」で測定していると考えられているので注意せよ。
*スライドの接木実験でイメージした植物は短日植物のオナモミであるが、最後に登場したシロイヌナズナは長日植物であることに注意せよ。
● 花芽形成の促進にはたらく物質であるフロリゲン(花成ホルモンとも呼ばれる)は、一定時間の暗期が条件となって葉でつくられ、師管を通って茎頂(や腋芽)に運ばれる(葉でつくられたたフロリゲンは全身に輸送される)。
*ただし、まだわかっていないことも多い。
*茎頂は、ざっくり茎の先端と考えればよい(厳密には、茎頂はシュートの最先端部分である。茎頂分裂組織と、これに付随する若い葉、および若い茎の組織からなる)。
● 植物は、一般に、葉で日長を感じ取る。
● 葉のついた短日植物の枝を短日処理(人工的に連続暗期を限界暗期よりも長くする処理)すると、花芽が形成される。しかし、葉を除いた枝を短日処理しても、花芽は形成されない(葉がなくては日長を感じ取れない)。
● 短日植物と長日植物を接木(たとえば短日性のタバコと長日性のタバコを接木)して長日条件に置くと、短日植物にも花芽ができることがある。このことから、短日植物と長日植物のフロリゲンは相互に置き換え可能であると考えられる。
*接木:植物の二つ以上の部分を組織間の接着と癒合によって一体化させる方法。
● 環状除皮によって師部を除くと、そこでフロリゲンの移動は止まることから、フロリゲンは師管を移動すると考えられるようになった。
● 茎の形成層(師部と木部の間にある)より外側をはぎ取る操作を環状除皮という。環状除皮を行うと、道管(木部にある)は残るが師管(師部にある)は除かれる。環状除皮は師管を通した物質の輸送を妨げる目的で行われる。
● チャイラヒャンは、葉で花成ホルモンが作られ、これが茎頂に輸送されることによって花成が始まると言う説を提唱した。この説は、「花成を誘導した個体を別の個体に接木すると、接木された個体は、非誘導的な光周条件下でも花成が誘導される」という事実によって支持された(異なる種の間の接木でも同じ結果が得られることから、フロリゲンは種に特異的ではないとされる)。フロリゲンの研究は困難を極め、その単離の難しさから、「幻のフロリゲン」とも呼ばれた。僕が高校生の頃、色々な本に「フロリゲンはまだ発見されていない」と書いてあったのを覚えている。
● ある物質をフロリゲンとみなす条件には、以下のようなものがある(ただし議論は続いている)。
①花芽形成を誘導する日長依存的に葉で合成される。
②師管を通って茎頂に輸送される。
③茎頂で花芽形成を引き起こす。
④他の植物ホルモンのように植物種を超えて共通である。
⑤接木面を介して移動できる。
● 近年、短日植物であるイネではHd3a(Heading date 3a)とよばれるタンパク質が、長日植物であるシロイヌナズナではFT(FLOWERING LOCUS T)とよばれるタンパク質が、それぞれフロリゲンの実体であることが明らかになった(2005年、シロイヌナズナのFT遺伝子の産物が、フロリゲンの実体であることが提唱され、2007年には、イネにおけるFT相同タンパク質である Hd3aが葉から茎頂分裂組織へ輸送されることが示された)。
日長に応じて葉で作られたFTタンパク質は、茎頂分裂組織で待ち受けるFDタンパク質と複合体(FT-FD複合体)を形成し、花芽形成を開始すると考えられている。
*FTやHd3aは、茎頂分裂組織に移動し、花芽形成を誘導すると考えられている。
*シロイヌナズナは長日植物、イネは短日植物である。
● シロイヌナズナの場合、長日条件におけるCO遺伝子という遺伝子の発現が、FTmRNAの増大をもたらすことが明らかになっている。すなわち、FT遺伝子はCO遺伝子の下流の標的遺伝子である。
0:00 フロリゲン
0:26 短日処理
1:02 接木と環状除皮
#高校生物
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#花芽形成
受験生へ
君の人生にもいずれ花が咲く。花が咲く時期は人それぞれである。どの時期に花が咲くかで人生の優劣が決まることはない。冬にサクラの花が咲かないからといって、それで誰かから文句を言われる筋合いはない。
心身の健康に気を付けて、無理せず、しかし油断せず、最後まで徹底的に頑張りなさい。応援しています。