【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
魚類における体液濃度調節について講義します。
語呂「探偵が多い!だから怪盗が少ない!(『淡』水魚は『低』張な尿を多量に排出。『海』水魚は『等』張な尿を少量排出)」
無脊椎動物(カニなど)の体液の濃度調節についての講義
• 無脊椎動物の体液の濃度調節 高校生物基礎
●淡水魚はえらから塩類を能動的に『取り込み』、『大量の薄い尿』を排出する。
●淡水魚は、体液に比べて外界の方が低い濃度である淡水中で生活している。そのため、濃度の低い外界から体内へ水が浸透し、体液濃度が低下する傾向にある。
そこで、淡水魚は、えらにある塩類細胞で塩分をエネルギーを用いて取り込む(エネルギーを用いて、濃度勾配に逆らうように行う物質輸送を能動輸送という)。
また、多量の薄い濃度(低張)の尿を排出する。
●海水魚はえらから塩類を能動的に『排出し』、『少量の体液と同じ濃さの尿』を排出する。
●海水魚では濃度の高い海水中へ体内から水が奪われ、体液濃度が上昇する傾向にある。
そこで、海水を積極的に飲み、えらにある塩類細胞から塩類を能動輸送によって排出する。
また、腎臓から体液と同じ濃度(等張)の尿を少量排出する。
●ウミガメやウミツバメは塩類腺から余分な塩類を排出する(産卵時、ウミガメは塩類腺[眼の後方の隅に開口している]から塩類を排出しているので、泣いているように見える。ウミツバメの塩類腺は眼の上にあり、その分泌液は鼻孔から放出される[ウミツバメの塩類腺から分泌される溶液の塩化ナトリウム濃度は海水の20倍以上にもなる])。
●アメーバやミドリムシやゾウリムシは収縮胞で余分な水を排出し、細胞内の浸透圧を保っている。
●どうして海水魚は体液と等張の尿を排出するのだろう。実は、そもそも海水魚はエラでATPを使った塩類濃度調節を行なってしまっている。腎臓では、エネルギーを使ってまで尿を濃縮するようなことはしない。腎臓では、過剰な塩類の排出というより、有害なイオンの排出が主に行われていると考えられている。
●海水魚について、えらでは塩類細胞がCl-を能動輸送で排出し、Na+はそれに従って受動輸送で出ていく。腎臓では少量の水分の排出と同時に、Ca、Mg、硫酸イオンを除去する。海水魚の尿量は少ない(当然である。体液が濃くなる傾向があるので、水を大量に捨てるわけにはいかない)。一般に海水魚の糸球体は淡水魚のそれよりも小さい。
海水魚の中には、アンコウ、タツノオトシゴなどのように糸球体をほぼ消失したものもいる。
一般に、陸上動物は、体液よりも濃い尿をつくることができる。これは、進化の過程における乾燥への適応と考えることができる。
問題:一般に、えらからエネルギーを用いて塩類を能動的に排出する(能動輸送する)のは①海水魚 ②淡水魚 のどちらか。
答え:①(海水魚は水が体外へ出て行ってしまい、体液の塩類濃度が濃くなる危険がある。そのため塩類を能動的に排出する必要がある[体液が薄くなる方向に物質を能動輸送する必要がある]。ちなみに、正確にはえらにある『塩類細胞』で塩類を排出する。淡水魚は、逆に、えらにある『塩類細胞』で能動的に塩類を体内に取り込んでいる[塩類細胞の働きが海水魚と淡水魚で正反対]。)
*ウナギやサケのように淡水域と海水域を移動する魚類は、えらなどの器官の働きを変えることができる。
問題:海水魚の尿は体液に比べて①低張、②等張、③高張 である。正しい番号を選べ。
答え:②
問題:①海水魚と②淡水魚で、一般に、低張の尿を大量に排出するのはどちらか。
答え:②(淡水魚は大量の薄い尿を排出し、体液が薄まらないようにしている。海水魚は、等張の尿を少量排出する)
問題(発展):ゾウリムシやアメーバ、ミドリムシは一般に細胞壁をもたないが、淡水中に生息する。淡水中では環境から水が細胞内に流入することが知られているが、これらの生物が吸水して破裂しないのはなぜか。
答え:収縮胞で水を排出しているため。
●サメやエイなどの軟骨魚は、血液中に尿素を溶かし、体液と海水の濃度を等しくすることで、水分の流出を防いでいる。
●海水生の無脊椎動物は体液濃度を調節するしくみを持たないことが多い(したがって、体液の濃度が海水の濃度とほぼ同じになっている)。
●淡水生の無脊椎動物の体液の濃度は種によって大きく異なるが、一般に淡水生の硬骨魚類より低い。
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