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滑り説・アクチンフィラメント・ミオシンフィラメント【筋収縮】 高校生物


矢口はっぴー

5分4秒

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説明

【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
滑り説について講義します。

*解説が不快な方は、教科書的な言葉で字幕を作ってあるので、音声を消して字幕をONにしてください。
*申し訳ありません。動画の初めのほうで、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが離れている図を描いてから「ATPはミオシンフィラメントと結合します」と言っていますが、正確には、動画の後半に説明した通り、ミオシンフィラメントはATPと結合してからアクチンフィラメントと解離すると考えられています。不正確でした。すみません。

*筋収縮についての少し詳しい講義はこちら↓
   • 筋収縮 高校生物  


問題:アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの相対的な滑りが筋収縮の原因だとする説を何というか。また、ATP分解酵素活性があるのは、アクチンとミオシンのどちらか。
答え:滑り説、ミオシン(ミオシン頭部にATP分解酵素活性がある)

*サルコメアの長さと張力のグラフについての解説はこちら↓
   • サルコメア(筋節)の長さと張力のグラフ【筋収縮】 高校生物  

●T管=筋細胞の細胞膜は長い落とし穴のように陥入し、それはT管と呼ばれる。T管は筋原繊維を取り囲んでいる。骨格筋では、神経筋接合部に達した興奮により、ニューロンからアセチルコリンが分泌される。興奮はT管を伝わり、筋小胞体を活性化する。そして、筋小胞体からのCa2+の放出が促進される。
●トロポニン=横紋筋のアクチンフィラメント上にある球状タンパク質であり、トロポミオシンに強く結合している。トロポミオシンとの結合は特異的であり、筋収縮反応を制御する役割を担っている。Ca2+と結合して筋収縮を開始させる。
(トロポニンは、弛緩時には、トロポミオシンとともに、アクチンとミオシンの相互作用を抑制している。
収縮時に細胞内に増加したカルシウムイオンが結合すると抑制は打ち消され、アクチンとミオシンは相互作用を起こし、筋は収縮する。)
●トロポミオシン=横紋筋のアクチンフィラメント上にある長い棒状タンパク質である。
アクチンフィラメントに生じている溝のなかに埋め込まれるようにしてアクチンに結合している。
トロポニンとの複合体は筋収縮の調節を担っている。
横紋筋においては、トロポニンにカルシウムイオンCa2+が結合すると、トロポミオシンを介して何らかの変化を起こし、収縮を発生させる。その機構は不明であるが、トロポニンへのCa2+結合がトロポミオシン位置を変化させるという説がある。
すなわち弛緩時には、トロポミオシンがミオシンフィラメント上のミオシン頭部とアクチンフィラメントとの結合を阻止する位置にある。収縮時には、トロポミオシンの位置が変化し、ミオシン頭部とアクチンの結合が可能になる。
●筋収縮全体の流れ
①神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)において、運動神経の軸索末端からアセチルコリンが分泌される。
語呂「運動して汗が散る(運動ニューロンがアセチルコリンを分泌)」
*下図には描いていないが、アセチルコリンは筋細胞の細胞膜上の受容体に結合する。これにより筋細胞内にNa+が流入し、活動で荷が発生する(②が起こる)。
*運動ニューロンと筋細胞との接合部を神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)という。
②筋細胞内にNa+が流入し、活動電位が発生する。膜電位の変化はT管を介して筋細胞の奥まで伝わる。
*筋細胞の細胞膜は深く陥入し、筋小胞体(特殊化した滑面小胞体)に達している。この筋細胞の細胞膜が陥入しているところをT管という。
③T管の活動電位に伴って、筋小胞体からCa2+が細胞質に放出される。
④ Ca2+がトロポニンと結合する。すると、トロポミオシンの構造が変化する。
⑤トロポミオシンによって塞がれていたアクチンフィラメントのミオシン結合部位が露出し、アクチンフィラメントとミオシン頭部が結合できるようになる(アクチンのミオシン結合部位が露出する)。
*トロポミオシンはミオシン頭部とアクチンフィラメントの結合を阻止している。トロポミオシンにくっついているトロポニンにCa2+が結合すると、トロポミオシンの構造が変化し、ミオシン頭部とアクチンが結合できるようになると考えられている。
⑥ミオシン頭部がアクチンフィラメントに結合する。
⑦ミオシン頭部がリン酸とADPを放出する。ミオシン頭部の立体構造が変化してアクチンフィラメントをたぐり寄せる。これにより筋肉が収縮する。
⑧ATPがミオシン頭部に結合すると(アクチンとミオシン頭部の親和性が低下し)、ミオシン頭部がアクチンフィラメントから離れ、筋肉がし緩する。
⑨ATPを分解したミオシン頭部は、立体構造を回復する。 
⑩筋小胞体は『能動輸送』でCa2+を回収する。(良く問われる!!!)

●コナン・ドイルによる小説『シャーロック・ホームズ』には、クラーレという毒が登場する。クラーレは、南米の原住民によって用いられた矢毒で、有効成分の一つであるd-ツボクラリンは、運動神経終末から分泌されるアセチルコリンと拮抗して、終板(運動終板ともいう。神経筋接合部に形成される筋表面の板状の構造のこと)に存在するアセチルコリン受容体を占拠し、アセチルコリンの作用をブロックする。結果、神経筋遮断を引き起こす。
●江橋節郎は、筋収縮のメカニズムについて、筋小胞体から放出されるカルシウムイオンによって収縮が引き起こされるという説を提唱した(当時、筋収縮がカルシウムイオンによって制御されているという説は大反対を受けたが、現在では正しいことがわかっている)。さらに江橋はカルシウムイオンと結合するタンパク質「トロポニン」を発見し、カルシウムイオンによる筋収縮・弛緩制御の分子機構を明らかにした。
●筋肉において、力を発揮する過程の終わりになっても、アクチンとミオシン頭部の架橋は解消されない。新たなATP分子との結合が架橋の解消には必要である。細胞の膜構造は、死後、その密閉性を失い、カルシウムイオンが壊れた筋小胞体から漏出する。これがきっかけとなってミオシン頭部がアクチンに結合する。しかし、ATP合成が停止しているので、ミオシン頭部とアクチンの連結が解消されない。その結果、筋は硬くなり、収縮も伸展もしなくなる。これが「死後硬直(死体硬直)」である。死後硬直は死後3~4時間に始まり、約24時間続くが、リソソームからのタンパク質分解酵素が架橋を分解し消失する。なお、死後硬直の評価は主観的であり、死亡時刻の推定に利用するには、あくまでも参考程度にとどめておく必要がある。
●かつて、筋繊維は、ゼンマイのようにぐるぐる巻かれたもの(引き延ばすことができるが、放すとすぐにぐるぐる巻きにもどるようなもの)であると考えられていた。
●イギリスの生物物理学であるハンソンは、ミオシンとアクチンのフィラメント構造を明らかにし、同じイギリスの生物物理学者ハクスリとともに筋収縮の滑り説を発表した。また、ハンガリーの生理化学者セント・ジェルジは、アクチンとミオシンの複合体(アクトミオシン)が、ATPによって、ガラス管内で収縮することを示した。
●サリン (メチルホスホノフルオリド酸イソプロピル)は化学兵器用剤の神経ガスである。1930年代からドイツにおいて殺虫剤の研究の中で開発された。
サリンは、1994年の松本サリン事件、1995年の東京地下鉄サリン事件でテロに使用された。
サリンはアセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用(アセチルコリンの分解を阻害する作用)を有し、極めて毒性が高い。
神経終末はアセチルコリンをシナプスに放出し筋肉を収縮させる。筋肉はアセチルコリンが存在するかぎり、収縮を持続する。そのため、通常は、アセチルコリンエステラーゼが、直ちにアセチルコリンを分解している。
サリンが組織のアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害すると、アセチルコリンエステラーゼはアセチルコリンを分解することができなくなる。すると、アセチルコリンがシナプスに過剰に蓄積し、筋収縮をコントロールできなくなる。その後、短時間で様々な症状が現れ、呼吸筋が麻痺状態になり死亡する。




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