インドのIT産業
インドのIT産業
インドでは、
- 低賃金労働力をいかしたアウトソーシング業務(会計処理、データ入力、コールセンター業務など)
- 研究開発(R&D)
など、多様なIT産業が発達しており、インド経済の重要な柱となっている。
南部のバンガロールはインドのIT産業の中心として発展し、大学や企業の研究開発拠点が集積している。
インドのIT産業の発達
インドではIT産業が発達しており、IT産業がGDPに占める割合は約10%に達するとみられている。
これは日本と同じくらいの割合で、まだ所得の低い発展途上国としては極めて高い水準といえる。
かつてはデータ入力、コールセンターなど、低賃金労働力を活かしたアウトソーシング業務が中心だった。
近年では、高度な理数人材が多くいることを活かし、研究開発拠点としての存在感が高まってきており、独自の製品やサービスを開発している。
インドでIT産業が発達した理由
- 充実した理数教育
- 英語が通用する
- 人件費が安い
- 米国との時差
- カーストにとらわれない人材登用
- 巨大なインフラが不要
などが挙げられる。
理数教育
インドの学校教育は理数系科目を重視しており、小学生の年齢からプログラミング言語を学ぶこともある。
ただし、インドは長年PISAによる学力調査に参加しておらず、客観的な数学力の国際比較ができないので、インド人全体の平均的なレベルは分からないというのが本当のところ。
とはいえ、トップ層の理数教育が充実しているのは間違いないようで、インドは高度な数学・IT人材を多く輩出している。
英語が通用する
インドでは英語が準公用語に指定されており、ある程度教育を受けた人であれば英語が通じることも多い。
そのため、米国とのやり取りがしやすく、米国の企業からの業務委託・受注などがスムーズに行える。
人件費が安い
インドの一人当たりGNIは約2400ドル(2022年)と、米国(76000ドル)と比べて圧倒的に安い。
米国との時差
インドは米国のちょうど裏側に位置していて、アメリカ東海岸とはちょうど12時間の時差がある。
つまり、アメリカが夜のとき、インドは昼であるということになる。
これはインドに業務委託する上では非常に便利といえる。たとえば、コールセンターをインドに置けば、昼間はアメリカ、夜はインドのオフィスを稼働させて24時間体制を簡単に作れる。
他にも、会計処理、データ入力などの事務作業などを夜の間にインドで済ませておくことで、アメリカの企業が効率よく業務を行えるようになる。
このように、時差を利用してインドは米国からのIT産業、サービス業の受注を伸ばした。
カーストにとらわれない人材登用
カーストの項で説明したとおり、カーストは職業と結び付いた身分制度である。
ところが、IT産業は新しい産業なので、「IT産業に従事するカースト」というものは存在しない。
そのため、どんな身分の人でもIT産業に就くことができるという特徴がある。このため、低い身分の人でも有能ならば出世することができ、人材の幅が広い。
巨大なインフラが不要
IT産業は、極端に言えばコンピュータと電気とインターネットがあればできる。
IT産業は、原料や製品の輸送を必要としないため、大規模な道路や鉄道、港湾といったインフラが必要ない。
インドは公共投資が遅れ、インフラが十分に整っていない地域も多いことから、製造業に比べてIT産業の方が有利といえる。