緑のダム
緑のダム
緑のダムとは、森林が降水を蓄え、時間をかけて徐々に水を放出していく様子をダムに例えたものです。
貯水機能
皆さん、森林の土って踏んだことありますか? なかったらぜひ体験してみることをおすすめします。経験したことのある人はわかるでしょう、あのフカフカ感…
そう、森林の土壌はめっちゃフッカフカなのです。足首まで沈み込むくらいふかふかです。そういう土壌は、スポンジのように水を吸収し、蓄えることができるわけです。 このように、土壌が水をため込むことのできる能力を保水力といい、森林の土壌は保水力が高いといえます。
森林があるとそんなフカフカな土壌ができるわけですが、森林がなかったらどうでしょう。典型的な例は学校の校庭ですね。植物は全く生えておらず、砂の地面がむき出し。雨が降ったらあちこちに水たまりができ、地面にはほとんどしみこまずどんどん排水溝に水が流れていく…校庭は、保水力が低いわけです。
木が生えているのと生えていないのとでは土壌が全く別物になり、その結果保水力に違いが出てくるわけですね。
そして、水をため込んだ森林の土壌は雨が上がるとちょっとずつ水を放出していきます。雨が上がった後でもちょろちょろと水が流れ続けることで、河川の流量の安定化に貢献しているということですね。
森林の限界
とはいえ、緑のダムにも限界があります。スポンジが無限に水を吸えないのと同じで、森林の土壌が吸収できる水の量にも限界があるからです。
森林が保水力の限界に達すると、降った雨はそのまま河川に流れ込みますから、やはり河川の流量は一気に増加することになります。
そういう意味で、洪水被害を防ぐためにやはりダムの果たす役割は大きいのです。けっして森林だけで洪水は防げません。もし緑のダムで洪水が完璧に防げるのであれば、人間が森林伐採を始めるより前の時代には洪水は一切起こっていなかったということになりますからね。
緑のダムの減少
人間が水源地の森林を伐採することによって森林が減少、緑のダムがその機能を十分に果たせなくなるという事態が現在世界各地で起こっています。
特に顕著なのがタイです。タイでは急速な経済発展に伴い農村部で森林の過伐採が深刻になっており、森林面積がものすごいスピードで減少しています。そのためタイ国内を流れるチャオプラヤ川の洪水発生件数が急増しており、社会問題となっているのです。2011年にも大規模な洪水が発生しており、800人以上が死亡したほか経済活動にも大きな影響を与えました。