高校地理の解説授業動画「5. 世界の農林水産業」、第9回は「日本の農業」です。
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【練習問題へのリンク】
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https://www.geography-lesson.com/japan-agriculture/
【目次】
00:00 はじめに
00:28 日本の農業構造
03:20 日本の農業政策
06:27 日本の農業の新たな挑戦
【世界の三大穀物に関連する映画や書籍へのリンク】
・『人間の営みがわかる地理学入門』https://amzn.to/3QCfV8G
特に農業分野について詳しく解説されている入試レベル+αの本です。大学受験レベルの内容でありながら、参考書とは違った読みやすさやエピソードが満載です。
・『瀬川聡の 大学入学共通テスト 地理B[系統地理編]超重要問題の解き方』https://amzn.to/47x1Qj4
共通テスト対策として問題演習を重ねたいならこちらが定番です。「これはおさえておきたい!」という問題ばかりが紹介されています。
・『共通テスト 地理B 地図・統計の考察問題71』
https://amzn.to/3KM5KdP
共通テストではセンター試験以上に、初見のデータから考察するという問題が増えています。読み取り考察に焦点をあてたこちらの問題集は練習にぴったりです。
・『リアルな今がわかる 日本と世界の地理 (だからわかるシリーズ)』砂崎 良(2020) https://amzn.to/3giMeGS
高校地理の参考書の一つですが、写真がとにかくたくさん載っていて、パラパラと眺めているだけでも楽しい一冊です。
・『村瀬のゼロからわかる地理B 系統地理編』 https://amzn.to/3sV5CRi
基礎からかみ砕いて丁寧に説明されており、図表も分かりやすいです。この動画を作るときにも参考にしています。やや分厚いので、困った時に調べるために使うと良いと思います。
・『目からウロコの なるほど地理講義 系統地理編』https://amzn.to/3FVeZE8
上記の本と並んで、非常に詳しく網羅的な解説がされている参考書です。上よりもやや専門的な解説も含まれているので、地理をさらに得意にしたい人におすすめです。
【関連動画へのリンク】
・5-9 日本の農業
https://youtu.be/Vd2NMxjFXzE
・5-8 世界と日本の水産業
https://youtu.be/bEZbFKaj6hw
・5-7 世界と日本の林業
https://youtu.be/38rFn7fWpfQ
・5-6 世界の三大穀物
https://youtu.be/IjHmLnkZbHQ
・5-5 企業的農業
https://youtu.be/x4DYmw7Cx6c
・5-4 商業的農業
https://youtu.be/zrLv5yCSgB8
・5-3 自給的農業
https://youtu.be/XDSpaynSTwI
・5-2 農業の生産性と集約度
https://youtu.be/Njx97X8TkVY
・5-1 農業の成立条件と起源
https://youtu.be/ktckyIzF9UQ
・[再生リスト] 4.世界の環境問題
https://www.youtube.com/playlist?list=PLAGMl9dyU1zmtpDsA4oOhzAvqfH1v_p2a
・[再生リスト] 3.世界の気候
https://www.youtube.com/playlist?list=PLAGMl9dyU1zl95tQN7qwuvThmVWcLqec5
・[再生リスト] 2.世界の地形
https://www.youtube.com/playlist?list=PLAGMl9dyU1zlwg91fAqYGbf5jUpU3Fwe6
・[再生リスト] 1.さまざまな地図と地理的技能
https://www.youtube.com/playlist?list=PLAGMl9dyU1zkrQ4sMmzWiM7v8O4ZcUTzb
#共通テスト #地理 #農業 #地理総合 #地理探究 #高校地理
【動画本文全文】
世界と比べて、日本の農業にはどんな特徴があるのか。構造、政策、事例という3つのパートから理解して、この単元を得意分野にしましょう。
世界と比べた日本の農業構造
最初は、日本農業の構造をデータから整理します。
1人あたり耕地面積
早速ですが皆さん、日本の農民1人あたりの耕地面積って、どのくらいだと思いますか?答えは、約1.6ha。陸上競技場くらいの大きさですね。
けっこう大きいじゃんって思うかもしれませんが、他国は
オーストラリア、約95ha。アメリカ合衆国、約73ha。
先進国の中では、日本の農民1人あたり耕地面積は圧倒的に狭いです。日本農地、陸上競技場なのに対して、アメリカやオーストラリアの農地はディズニーランド(※51ha)の約1.5倍。作れる量が全然違うため、大量に作って安く売る、という戦略が日本の農業では難しいのです。
耕地面積の割合
では、なぜ狭いのか。理由の一つは、地形です。日本は国土の約7割が山地で、平地が約3割しかない。平らで広い農地を作れる場所が、そもそも少ないのです。
実際、日本の国土全体に占める耕地の割合は、約12%しかありません。この数字が、ヨーロッパの農業大国フランスだと約36%、広大な国土を持つアメリカ合衆国でも約17%もあります。
人件費
でも待って。タイや中国だって、農民1人あたり耕地面積が小さいのに、どうして安く作れるのでしょう?それは、人件費の違いです。
日本の人件費は、東南アジアの数倍。例えばタイの農業日雇い労働者の賃金は、1日1500円ほど。日本では最低賃金でも1日9000円はかかります。日本は人件費が高い分、商品価格を上げざるを得ないのです。
農業産出額
でも、日本の農業がアメリカやオーストラリアに勝っているもあります。なんだと思います?それは、耕地1haあたりの農業産出額。日本では、限られた土地でも売上を増やせるように、高品質で高価格な農産物を作る努力をしてきました。
そのため、コストはかかるのですが、同じ面積からの売上額では日本の農業が圧倒的に高いという特徴があります。
農業人口
最後のデータは農業人口。
日本の農業就業人口は、過去数十年間、ずっと減り続けています。しかも、7割近くが65歳以上。高齢化が深刻です。
まとめると、日本の農業は、土地が狭い、人件費が高い、高齢者が多い、という特徴があります。かなりのハードモードですが、そんな中でも経営を成り立たせるために、単価の高い農作物を作る方向に発展してきたわけです。
でも、日本の農作物が高い理由は、これだけではありません。
日本の農業政策
今度は、政策という視点からも日本の農業を理解しましょう。
日本の農業政策の歴史は、少し乱暴に言えば:
「とにかく作れ!」→「やっぱり作るな!」→「どうぞご自由に」
です。どういうことでしょう? 順番に解説します。
戦後農政
戦後は「とにかく作れ!」の時代。日本中で食料が不足していて、農家はとても貧しい状況でした。
もし皆さんが当時の総理大臣なら、どんな方法で国民に食料を行き渡らせますか?
当時の政策は、農家が作った米を全て政府が買い取って、政府が決めた価格で販売するというものでした。米を作れば必ず国が買い取ると約束することで、どんどん米を作らせたわけです。
減反政策
ところが、米の生産が増えて国が豊かになると、今度は逆に米が余るようになりました。そこで、「やっぱり作るな」の時代です。
政府は1971年から「減反政策」を導入。政府は農家に「米を作らないで」とお願いし、作らなかったら補助金を出すという仕組みにしたんです。
農家にとっては、作らない方が補助金がもらえるわけなので、当然規模拡大は進まずに、小規模経営が多く残って、生産コストが高止まりすることとなりました。
一方その頃、タイやベトナムは何をしていたか?“さあ、水田を広げよう!”と政府主導でどんどん農地を開墾。結果、世界有数の米輸出国になりました。もちろん色んな事情が日本と違いましたが、まさに“内向き vs 外向き”の戦略ですよね。
牛肉・オレンジ輸入自由化
減反政策で補助金を出すだけでなく、海外からの農産物の輸入を制限することでも、日本政府は農家を守ってきました。ところが、1991年に牛肉とオレンジの輸入が自由化。そこから他の農作物の輸入制限も緩和されて、日本の農家は外国の安い農作物と競争していくことになりました。
流通自由化
そして1995年からは「どうぞご自由に」の時代がやってきます。
農家は米を政府に強制的に売る必要がなくなり、スーパーなどに自由に販売できるようになりました。これを、米の流通自由化と言います。要は「補助金を減らすので頑張って競争してください」ということです。
減反政策終了
そして2018年には、50年近く続いた減反政策がついに終了しました。作りたい人がより自由に作れるようにしたのです。
とは言え、今さら「好きにしていいよ」と言われても、すでに日本の農家は高齢化しており、農地はそう簡単には変えられないのも現実です。
まとめると、特に米については、海外と比べて価格が高いという構造が、政策的にも作られてきたと言えるでしょう。
日本の農業の新たな挑戦
なかなか厳しい日本の農業ですが、最後のパートでは、近年の新たな動きを解説します。
ブランド化と輸出拡大
一つ目の動きは、農業のブランド化と海外輸出です。特に、和牛や日本の果物は、高品質で安全ということで、アジアの富裕層を中心に人気が高まっています。こちらのグラフは日本のリンゴの海外輸出量の推移ですが、大幅に増えているのが分かりますね。リンゴの輸出先は、そのほとんどが台湾です。
実は私先日、タイに旅行に行ってきたのですが、そこで1個1000円で売られている青森産のリンゴを見つけました(写真)。現地で作られるリンゴの10倍の値段です。日本の農家の努力と挑戦を感じました。
企業の参入
もう一つの動きは、企業の参入です。家族経営が中心だった日本の農業において、新たな担い手として注目されています。
例えば、株式会社イオンなども農業に進出し、自社のスーパー向けに農業生産法人を立ち上げ、野菜や果物を生産しています。
とは言え、採算が合わずに撤退した例もたくさんあります。
外国人技能実習生の急増
そして近年では、不足する労働力を補うために、外国人技能実習生の受け入れも急速に進んでいます。
農業の6次産業化
最後は、農業の6次産業化です。6次産業化とは、農業(1次産業)に加えて、加工(2次産業)や販売・サービス(3次産業)を組み合わせることで、付加価値を高めようという取り組みです。
例えば、アグリツーリズム。田植えとか、ジャム作りとか、野菜の収穫体験などを行える体験型の観光サービスです。皆さんの中にも、実際に参加したことがある方がいれば、コメントで教えてください!