【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
中枢パターン発生器について講義します。
※たまに超難問のテーマになりますが、あまり気にする必要はないです。解説を見て納得しておけば良いです。試験本番でも、解ける問題で点をとっていきましょう。
問題:動画の神経回路において、⑥のニューロンが興奮している時、⑤のニューロンは興奮しているか、していないか。
答え:していない(⑥が興奮している時、④が興奮しており、⑧を介して③の興奮は抑制されている。よって⑤は興奮していないと考えられる)
● 外部からのリズミカルな入力が無くても、リズミカルな運動出力を形成することができる神経回路を、中枢パターン発生器(ちゅうすうぱたーんはっせいき)という。
● 中枢パターン発生器は、様々な動物の様々な運動(歩行、泳動、食事、呼吸、飛翔など)に関わっていることが明らかになっている。たとえば動画で示したような神経回路が中枢パターン発生器のモデルの一つとして知られている。
● 動画中の神経回路(中枢パターン発生器)について
①~⑧はニューロンを表している。⑦と⑧は抑制性の介在ニューロンである(⑦は④の、⑧は③の興奮を抑制する)。この神経回路では、⑤と⑥が交互に興奮する。
*はじめ(図に書かれていない別の細胞から)①や②に興奮が伝わる。ただし、③と④は入力に対して興奮が生じるまでの時間がわずかに異なり(例えば活動電位発生の閾値が異なる)、一定時間しか活動が持続しないニューロンであるとする。今回は、③のほうが早く興奮するとする。
興奮した③は、⑤に「興奮しろ」という命令を送る。と同時に、⑦に「興奮しろ」という命令を送る。⑦は抑制性の介在ニューロンであり、④を抑制する。④の興奮が抑制されれば、⑥は興奮しない。結果として、⑤が興奮する時、⑥の興奮が抑制されることになる。
やがて③の活動が止むと、④が活動を始め、その間は⑤の活動が抑制される(④は⑧を興奮させ、⑧は③の興奮を抑制する。③が興奮しないので、⑤が興奮しない)。このような神経回路があると、⑤や⑥では、興奮が交互に(リズミカルに)生じる(ただし、動画で示したモデルはかなり単純なモデルであり、実際はもっと複雑な神経回路が存在していると考えられる)。
● 哺乳類の中枢パターン発生器は非常に複雑なため、まだわかっていないことが多い。無脊椎動物などで中枢パターン発生器の研究が進んでいる。
● このような神経回路についての難問を解く際は、その問題が伝達にかかる時間等を考慮しているのかいないのか、どのシナプスが興奮性で、どのシナプスが抑制性か(興奮を抑制するニューロンがある場合、どのくらいの時間、相手側の興奮を抑制し続けるのか)、活動電位の発生後しばらく活動を休止するニューロンはあるか等に気を付けると良い。
● かつては、リズミカルな運動の実現には以下のようなしくみが働いていると考えられていた。
①筋肉Aが収縮する。②筋肉Aの収縮がきっかけとなって感覚神経Bが興奮する。③感覚神経Bは筋肉Bを収縮させる。④筋肉Bの収縮がきっかけとなって感覚神経Aが興奮する。⑤感覚神経Aは筋肉Aを収縮させる。→①へ戻る。
しかし、③と⑤のような感覚入力のフィードバックがなくても、リズミカルな運動が形成されることが発見され、中枢パターン発生器の存在が明らかになった(ただし、感覚フィードバックという仕組みが存在しないわけではない。感覚フィードバックは多くの運動で重要な働きをしている)。
*動画の図はかなり大雑把に描いています。正確なモデルについては大学生になったら神経科学の教科書で学んでください。
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