【 note : https://note.com/yaguchihappy 】
ハチの血縁度について講義します。どうして子供を残さない生物がいるのか、ダーウィン論者が悩んだという謎の解明に挑みます。
●母から見た娘の血縁度の式は
(1/2×1/2) + (1/2×1/2)=1/4
です。板書の×が+みたいになってます。7:52の所です。計算結果は変わりません。ごめんなさい。
● ドーキンス博士は著書『利己的な遺伝子』の中で、不妊のカーストを持つハチについて、次のように述べている。
「動物の体は遺伝子の生存を確保するために子作りや、あるいは、同じ遺伝子を共有する他個体の世話に励むように仕向けられている。この場合、他個体を保護するために、自殺行為をするようでは将来自分の子供を作ることができなくなる。自殺的な自己犠牲がほとんど進化し得ないのはこのためだ。しかし働き蜂は自分の子供をつくりはしない 。彼らは子供ではなく血縁者を世話することに全力を注いで、自らの遺伝子を保存しようとする。
不妊の働き蜂が1匹死ぬのは、その遺伝子にとってごく些細なことだ。それは木の遺伝子にとって、秋に葉を1枚落とすのが些細なことなのと同じようなものだ 。社会性昆虫を神秘的な存在に仕立てようとする誘惑があるが、実際にはそんな必要は全くない 」ドーキンス著( (翻訳)日髙敏隆、 岸 由二 、 羽田節子、 垂水雄二)『利己的な遺伝子 40周年記念版』(紀伊國屋書店)より
●社会性の進化については、様々な仮説が提唱されており、未知の部分も多い。今回紹介した3/4仮説について厳密に議論するには、以下のようなことも考慮しなければならない。
・ワーカーがオス(自身から見た血縁度1/4)も養育するという事実。オスとメスを同数ずつ養育するのなら、平均血縁度は(3/4×1/2)+(1/4×1/2)=1/2となり、ワーカーが進化しやすいという根拠はなくなる。
・オスとメスの存在比。
・1つのコロニーに女王が複数いる場合。
・1匹の女王が複数のオスとの間に子をつくる場合。
・膜翅目(ハチ目)と他の動物の性決定機構以外の違いの影響。
*より詳しく知りたい人は、大学に行ったら、デイビスら著『デイビス・クレブス・ウェスト 行動生態学 原著大4版』(共立出版)、粕谷英一著『行動生態学入門』(東海大学出版)、伊藤嘉昭ら著『動物生態学』(蒼樹書房)などを読んでみるとよい。
●社会性昆虫とはなんだろうか ?
さまざまな定義が提唱されているが 生物学者ウィルソンは 3つの性質で 真社会性昆虫を特徴づけた 。
1つ目は、母親だけでなく多くの個体が共同で子供の世話をすること。
2つ目は、不妊のカーストがあること。
3つ目は、世代が重複していて、母と成長した子と、幼い子が、同時に生活を行うこと
である。
真社会性の主役はハチ目である。ほかのどんな分類群よりハチ目で真社会性が発生している、つまり不妊カーストが生じている。その特別な性質として、オスが未受精卵から育った1倍体であるのに対し、メスは人と同じく受精卵から育った2倍体になることがあげられる 。
オスは減数分裂をすることなく配偶子を作るので、そのオスの娘たちの染色体の半分は同一の遺伝子セットである。
つまりオスが1倍体であるために、姉妹同士は 通常の2倍体の生物における親子間よりもさらに近い血縁関係にあることになる。
だからメスの不妊ワーカーが(仮に彼女らが繁殖力を得たとして、)自分で娘を産むよりも、後から生まれてくる妹を育てるほうが、遺伝的には大きな利益を得るのである。
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