第2回:僕の血筋は職人!藤春シェフがそう語る訳
(サムネイルの一部は提供 EPICURE)
皆さん、こんにちは。
これから「〇〇ってどんなお仕事?」をテーマに、様々な職業の方へのインタビューを行なっていきます!
高校時代のエピソードからその職業に就いた理由まで、毎回詳しく取材していくので、皆さんもぜひ進路選びの参考にしていただけると嬉しいです!
第2回目の今回は国内外のレストランを経て東京・元麻布にあるレストランEPICURE(エピキュール)のオーナーシェフを務めている藤春幸治さんに「料理人ってどんなお仕事」をテーマにインタビューしてきました!(以前の記事で受験勉強時や、受験当日に眠くならない食事方法についてもシェフにインタビューしています。詳しくはこちら)
盛り沢山の内容になっているので
- 第1回:中卒から麻布のオーナーシェフへ!?藤春シェフの少年時代とは
- 第2回:僕の血筋は職人!藤春シェフがそう語る訳(今回)
- 第3回:藤春シェフが今こそ高校生に伝えたい大切なこと
からなる豪華3本立てでお送りします!。
目次
- 料理人になったキッカケは叔父?
- 衝撃を受けた料理人としての叔父
- どのジャンルにも属さない料理!?
- ケアリングフードの始まり
- 僕の血筋は職人
- ケアリングフード次世代へどう貢献する!?
- お客様ファーストのレストラン
(今回インタビューをした藤春幸治さん)
(EPICUREにて著者が撮影)
料理人になったキッカケは叔父?
幼少時から料理をやっている藤春シェフですが、何をきっかけにプロを目指すようになりましたか?
約20年前、当時の僕はとにかく世界中のシェフについて調べていました。そんな中でとある1人のシェフに辿り着きました。
そのシェフは日本でこそ有名ではありませんでしたが、アメリカ大統領の就任式の食事を創作したり、アメリカにある超有名ホテルの総料理長をしている日本人のシェフでした。
そして名前を見ると私の母の旧姓と同じだったのです。「同じ苗字なのにすごい人がいるなぁ」そう思いました。
そしてお正月に親戚が集まってる時にその話をしました。そうすると衝撃的なことを伝えられました。
「あなたの叔父だよ」って。
衝撃を受けた料理人としての叔父
そのシェフが叔父だと知った時は「早く言ってよ…。存在を知っていたら。僕の料理人としてのキャリアも違ったかもしれないじゃん」と思いました。
ただ当時は30歳。料理人になって15年が経っていまししたが、まだ30歳です。「まだ遅くない!」そう思いアメリカに飛びました。
実際に叔父が働いているアメリカの一流ホテルに行くと更に衝撃を受けることになりました。
前提として日本人で世界的に成功している料理人のほとんどが和食で成功しています。
しかし叔父は違いました。どのジャンルにも属さない、自分だけの料理を作って成功していたのです。
どのジャンルにも属さない料理!?
叔父は18歳でヨーロッパに渡り、料理人としてのキャリアを始めました。その後アメリカ本土に渡り料理人として活躍しています。
アメリカという国は多くの人種や宗教、本当に沢山の文化が混ざり合い成り立っている国なんです。
例えば日本のお店ではフレンチ、イタリアン、中華、和食、焼肉などのようにお店によってジャンルが綺麗に分かれています。
もちろんアメリカにも日本料理屋、チャイニーズレストランなどと分かれているお店もあります。ただ叔父の料理はどれにも属していないのです。
「この宗教でこの時期ならこの原材料は使わないほうがいいよね」や「わざわざここまで来てくれたのにこのスパイスじゃ納得しないよね」などを考えて料理を提供していくスタイルだったんですよね。
僕は強い衝撃を受けました。
同時に「絶対に日本でもやっていかないといけないこと」だと思いました。
ただ相当難しいことだし、なかなか大変だと思いました。
ケアリングフードの始まり
今、藤春シェフは「ケアリングフード」を軸に活動されていると思います。
以前別のインタビューの中で「痩せるために、低糖質ダイエットを行なった際に体重と共に体の筋力までもが減ってしまった」とお話しされていたかと思います。
その体験やそれ以外にケアリングフードを始めたきっかけはありましたか?
やはり叔父の影響は大きかったです。ただ叔父のスタイルを真似したわけではありません。
アメリカと日本ではマーケットが違うんですよね。なので叔父を単に真似しただけではダメなことはわかっていました。
今でこそ日本は、いろんな宗教の方や様々な考え方価値観を持っている方は少なくありません。
しかし当時はそういった価値観を持っている方は極めて少なかったです。
なのでまず「今、日本で必要とされてることはなんだろう」ってところを考えました。
考えた結果、当時日本で言われていた、医療費やアレルギー、アトピーの問題に行きつき、「そこに対応した料理を始めよう」そう決めました。
そしてそれを伝える為には伝える造語が必要です。
なので全ての人をケアしていくような料理を目指しました。
そして僕が考えている思想をケアリングフードという造語にして、仲間達と共にそれを訴求し始めたのが最初ですね。
僕の血筋は職人
アメリカで叔父と会った時に「日本に帰って家系図を見てこい」と言われたので家系図を調べました。
遡ると先祖は名古屋にて鍛冶屋をしていました。
その後を見ていくと、とある場所で職人筋の人と商売人で行く人が綺麗に分かれていたんです。
見ていくと、床屋、和菓子屋、そこから、料理人、料理人、料理人だったんです。
僕もそうなのですが昔から、1つのことに集中すると周りの声が何も聞こえなくなるんです。「そんなこと知ったことない!」「今僕はこれに集中しているから」って。
僕はこの特性を「クリエイティブに特化した人」だと思っています。
そして僕のいとこ達もアニメを作る人や料理人などといった職人気質なお仕事をしています。
「あ、自分が料理人をやっているのは血筋なんだな」と自分の中で消化できました。
自分の血筋は料理人なら次世代に貢献できるものはないかという事も含めて、ケアリングフードという物を造って育ていくことを考えましたね。
(ケアリングフードを造る藤春シェフ)
(提供 EPICURE)
高校生の皆さんも自分の血筋などを調べてみてもいいかもしれないですね!
そうだと思います。
料理人が血筋だと気づくまでは心のどこかでは「ミュージシャンだったらバズっていたのではないかな?」や「あのままサッカーを続けていたらプロとして活躍できていたのではないか」などと思うことがありました。
もちろん人間の可能性は沢山あります。ですが人生のどこかで目標を絞らないといけない時期がやってきます。
そして僕にとって1つ目のターニングポイントが、料理人が血筋だと気づいた30歳の時でしたね。
ケアリングフード次世代へどう貢献する!?
家系図を見たときに自分のDNAは料理人だととことん落とし込みました。
そう考えている内に、せっかく料理人の血筋に生まれてきたのだから「俺らの子孫はよくやったぞ」と自分が亡くなった時に先祖に言わせたいなと考える様になりました。
フレンチとかイタリアンとかやってた料理をそのままパフォーマンスとして出すのではなく、人が喜ぶ形に変えて、お料理を出すっていう風に切り替えようと思ったのがそこなんですよね。
だから小麦粉を使わないだとか、乳を使わないなど自分自身であえて厳しいルールをどんどん課していきました。
そして自分自身の技術を磨きパフォーマンスを上げていくっていう風に切り替えましたね。
お客様ファーストのレストラン
料理人は料理の修行をやってきて、自分のお店を出したい。要は自分のお城を持ちたいものなんです。その上で自分の今まで培ってきた経験と技術を駆使し、自分の作品をお客様に出して「どうですか?」って喜んで貰うのも料理人です。
しかし僕は真逆なんですよね。
逆?…。
僕はお客さんの要望を聞いて、そこに自分の技術とスキルを当てて喜んでもらうスタイルをとっています。
いわばお客様重視なんですよね。
例えば普通の飲食店なら「AからFまでのメニューがありますが今日はどれにしますか?」そしてお客様が「今日はFにしようかな?」と。お店は選ばれたメニューをお客様に出します。
一方で僕のレストラン(エピキュール)にはAからFといったメニューが存在しません。5通りくらいのベースはありますがね。
以前メニューを少し見ましたが複数のベースがあり「メニュー自体は相談の上で決められます」みたいな感じで驚きました。
決められますよ。一切メニュー表が無いレストランなのでお客様に要望を聞いてメニューを決めます。
さらに「今回で何回目の来店なのか」、「家族と来るのか」、「接待で来るのか」によってもメニューの内容を変化させます。
その結果、僕は自分の作りたいものが最優先ではないってこと。
「お客様が食べたいものが最優先であるべきだ」っていう根本の考え方の料理人なんで、他の料理人とはちょっと違うところに進んでいますね。
(お客様第一の料理。この日も著者のアレルギーなどに対応した特製料理を用意してくださった。)
(EPICUREにて著者が撮影)
はい、今回はここまでです。いかがでしたか?
世界で活躍するシェフについて調べて「この人すごいな」そう思っていた人が自分の叔父さんだったという出来事は私自身聞いていて驚きました。
また30歳の時に「僕の血筋は料理人」と落とし込まれたこと。
そして自分が出したい料理ではなく、お客様に合わせた料理を出す「ケアリングフード」の思想。
どちらも高校生の皆さんにとって参考になる考え方だと感じました。
次回の記事では罪悪感の無いドーナツの開発秘話や、藤春シェフの第2のターニングポイントとなった出会いについて詳しく聞いていきます〜。
最後までありがとうございました。