EVシフト
EVシフトとは
ガソリン自動車を電気自動車に置き換えようとする政策。
具体的には、
「新車販売を全て電気自動車にする」
という政策が多い。
要は、「ガソリン車はもう作っちゃいけませんよ」ということ。
全体的な流れ
近年みられる顕著なEVシフトは、コロナ明けの2021年頃、欧州から始まった。
これは、グリーン産業を欧州の経済成長の柱にしたいという大きな構想の一部であった。
これに中国が追随し、EVの世界覇権を狙って、国策でEVを強力に推進し始めた。これにより中国のEV企業が急成長した。
ところが、直近ではEVが思うように売れず、不当廉売でEV覇権を狙う中国を警戒する向きも強まったことから、EVシフトは見直しを迫られている。
各国の政策
欧州、中国で特に推進されている。
EU
2021年、欧州委員会は2035年以降のエンジン車販売禁止を発表。前例のない強力な施策で注目を集めた。
エンジン車の販売が禁止ということは、つまりハイブリッドやプラグインハイブリッドも禁止ということである。かなり厳しい。
しかし、この法案は加盟国の反対により結局可決されず、2023年に一部要件を緩和して暫定合意。合成燃料のe-fuelを使うものであればエンジン車の製造も可能ということになった。
中国
中国政府はEVの普及目標を度々引き上げており、2023年には、2027年までに新車販売に占める電気自動車(EV)など新エネルギー車の比率を45%とする目標を発表した。
EVメーカーへの補助金や税制優遇、ナンバープレート規制などさまざまな優遇策を講じ、EVの生産・普及を強力に推進している。
中国政府はEVの世界覇権を狙っているとみられており、中国企業を支援して安く大量にEVを作らせることで、世界市場を席巻しようという狙いがあると考えられている。
米国
2021年8月、バイデン大統領は新車の50%以上を2030年までにEV、燃料電池車とする大統領令を出した。
これにEVの国内生産支援も加わり、EVシフトを強力に推進している。
しかし、EV否定派のトランプ氏が当選したため、今後政策が変更される可能性もある。
日本
日本政府は、「2035年までに、新車販売で電動車100%」という目標を掲げた。
しかし、この「電動車」にはハイブリッド車も含まれている。
ハイブリッド、つまり今のプリウスでもよいということなので、他国に比べるとかなりマイルドな目標といえる。
補足~EVシフトの実態
EV化が大きく政策目標として掲げられたが、実態はどうだろうか。
現実としては、以下のような状況が懸念されている。
- EVの販売不振
- 中国への警戒
EVの販売不振
EVは思ったより売れておらず、政府やメーカー各社は頭を悩ませている。
その要因として挙げられるのが、
- 値段が高い
- 充電インフラが未整備→不便
- 利便性に劣る(充電時間など)
- 航続距離が短い
などである。
まず、電気自動車は値段が高い。同クラスのガソリン車に比べ、100~200万円程度高値段が上がる。
そのため、各国政府は購入時に補助金を出して価格を低く押さえようとしてきたが、ドイツでは政府の財政悪化のため補助金が停止、普及にブレーキがかかっている。
また、充電インフラが整っておらず、不便である点も挙げられる。充電スポットはガソリンスタンドに比べてまだまだ少なく、充電したいときにできないという不便さがある。
充電に時間がかかる点も、EVの大きな弱点といえる。ガソリン車なら満タンにしても数分しかかからないが、EVだと満充電には数時間かかる。
また、電池の容量によっては航続距離が短く、長距離の運転に向かないという欠点もある。
中国への警戒感
近年、EV市場で急速に存在感を高めているのが中国である。
中国は国策としてEVを強力に推進しており、補助金や税制優遇などでEVメーカーを支援。その結果、中国企業のEVは、その他の国のEVに比べて非常に安くなっている。
そんなに安く売られたら、外国のメーカーとしては困るわけである。政府の支援によって安くなっているのなら、それはズルではないか。中国がズルをするせいでウチの車が売れないというのは当然困る。
ドイツやアメリカ、日本といった自動車産業で飯を食っている国は、自国の自動車産業が衰退してしまったら国全体の経済が破壊されてしまうので、近年の中国のEV支援を非常に警戒している。