日本文学史マスターへの道⑤『古今和歌集』
日本文学史マスターへの道
『古今和歌集』
〔「古今和歌集仮名序」(巻子本)仮名序の冒頭。大倉集古館蔵。〕
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《確認ポイント》
✔︎最古の勅撰和歌集
✔六歌仙と呼ばれる人たち
✔︎仮名序と真名序という2つの序文
《書名》
『古今和歌集』と言う書名は、
-
古(『万葉集』からのちの古い時代=古歌)
-
今(撰者たちの時代=今の歌)
を集めた歌という意味!
- 『古今集』や『古今』と言われることもある。
《撰者》
- 紀友則(きのとものり)
→最初は中心的人物であったが完成する前に死去
- 紀貫之(きのつらゆき)
→紀友則死後、中心人物となる
-
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
-
壬生忠岑(みぶのただみね)
編集作業は、どの歌を掲載するか判断すること
=選歌と並んで、撰者の重要な仕事
(→構成や配列の部分につながる)
《成立過程》
延喜5(905)年、醍醐天皇の勅命によって、
最初の勅撰和歌集として撰進された。
序に延喜5年とあるため、この頃に大方完成したと思われる。
最終的な完成は延喜13年もしくは延喜14年頃と考えられている。
なぜかというと、、、
延喜13年の歌合の和歌が入っている!!
これに関して説は主に二つ。
① 延喜5年は下命であるという説。
② 延喜5年に完成しているが、追加や改変が行われ、その際に延喜13年のものも追加されたという説。
どちらにせよ、現在伝わるものと歌数が異なるので、追加や改変があった可能性は高い。
《構成》
『古今和歌集』にはおよそ1100首の歌が20巻に収められている。
序文は、巻頭と巻末にある。
- 巻頭→仮名序(和文による序文)
紀貫之が執筆し、女手とも呼ばれる仮名文字を使用した。
→和歌の歴史や意義についての記述や漢詩に劣らぬことを主張する内容となっており、国風文化の開花とともに和歌の地位が向上したことを示す
→最初の歌論として注目される
- 巻末→真名序(漢文による序文)
紀淑望(きのよしもち)が執筆し、男手とも呼ばれる漢字を使用した。
◎歌体
- 短歌(約1090)
- 長歌(5)
- 旋頭歌(せどうか)(4)
短歌がほぼ全てを占めている。(横の数字がおよその歌数)
それぞれ歌体をもう少し詳しく見ると、
- 短歌【5・7、5・7、7の和歌の代表的な形式】
- 長歌【5・7、5・7、5・7…7となっており、長さに制限はない】
- 旋頭歌【5・7・7、5・7・7と片歌(5・7・7)の形式を2首繰り返す形で問答の歌に多い】
◎部立
部立(ぶたて)とは、ジャンル分け・部類分けのことで、『古今和歌集』では、以下のように分けられている。
- 「春(上・下)」
- 「夏」
- 「秋(上・下)」
- 「冬」
- 「賀」
- 「離別」
- 「羇旅」
- 「物名」
- 「恋(一〜五)」
- 「哀傷」
- 「雑(上・下)」
- 「雑体」(ざってい)
- 「大歌所御歌(おおうたどころのおんうた)・神遊びの歌・東歌(あずまうた)」
→この分類は、巻数(20巻本)とともに、のちの勅撰和歌集の模範となった。
◎歌の配列
季節の移ろいと心情の移り変わり
EX. 立春→夏→秋→冬の雪、まだ見ぬ恋→忍恋→成就→心変わり→諦め
→時間の推移の中に自然美や人生における美を捉えており、王朝美意識と言える。
《歌風》
『古今和歌集』に収められた歌の時代はおよそ150年で約130人の歌人が和歌を詠んだ。
一般的にこの期間を3つに分けて歌風の展開を考える事ができる。
⚫︎よみひと知らず時代
《期間》
『万葉集』に次ぐ時代〜平安初期の嘉祥3(850)年頃
→奈良時代から平安時代への過渡期
《歌風などの特徴》
『万葉集』の歌風である素朴で率直、おおらかな調子を色濃くとどめる一方で、王朝的優雅さや繊細さも伺うことができる。
序詞や枕詞といった修辞法が多用され、五七調のリズムが多い。
素朴な民謡風の和歌が多い。
《代表歌人》
「よみひと知らず」と作者未詳歌ばかりのため、不明
『古今和歌集』には全体の4割が作者未詳歌
⚫︎六歌仙時代
《期間》
嘉祥3(850)年〜寛平2(890)年頃
→9世紀後半で、漢詩が流行し若はやや低迷した時期
《歌風などの特徴》
だんだんと理知敵・技巧的な詠み方へと変化し、豊かな感情が詠まれ、『古今和歌集』の歌風が確立しつつある。
縁語や掛詞といった修辞法が多用され、七五調のリズムが発達し、優勢となる。
《代表歌人》
〔六歌仙のメンバー〕
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僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
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在原業平(ありわらのなりひら)
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文屋康秀(ぶんやのやすひで)
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喜撰法師(きせんほうし)
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小野小町(おののこまち)
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大友黒主(おおとものくろぬし)
〔そのほか〕
-
在原行平(ありわらのゆきひら)
-
藤原敏行(ふじわらのとしゆき)
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大江千里(おおえのちさと)
⚫︎撰者時代
《期間》
**寛平2(890)年頃〜『古今和歌集』成立時 **
→『古今和歌集』の歌風が完成した時期
《歌風などの特徴》
六歌仙時代よりも、理知敵・技巧的・観念的になり、「たをやめぶり」と呼ばれる言葉の機知を尊び、技巧的で優美かつ繊細な歌が多く出てきた。ここに『古今和歌集』の歌風が確立された。
縁語や掛詞、見立て・擬人法などの比喩といった修辞法が多用され、七五調で三句切れが多くなる。
《代表歌人》
〔撰者〕
-
紀友則(きのとものり)
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紀貫之(きのつらゆき)
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凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
-
壬生忠岑(みぶのただみね)
〔そのほか〕
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素性法師(そせいほうし)
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在原元方(ありわらのもとかた)
-
伊勢(いせ)
《史的意義》
初の勅撰和歌集として、後世の和歌の規範となった。
テーマや表現方法は、日本人の美意識に影響を与えたが、
理知的・技巧的な歌風は真情からかけ離れていると正岡子規に批判されることにもなった。