アプリ「okke」で効率よく学ぶ!


日本では羊は観光牧場とか動物園にいるもので、家畜というイメージは薄いかもしれませんが、乾燥地域では羊は大切な農家の財産ですし、羊の方が人間より多い国があったりと、世界的にはわりとメジャーな家畜でもあります。

用途

羊を飼育する主な目的は大きく二つあります。

  • 家畜として
  • 羊毛採取のため

です。

乾燥地域など、作物栽培が難しい地域では家畜として飼育され

オーストラリアやニュージーランド、イギリスなどでは、羊毛を採取することを目的に大規模に飼育されています

また、西アジアやインドなどでは、食用の羊肉を生産するために飼育されている場合も多いです。

生態的特徴

羊はその生態的特徴として、

  • 乾燥に強い

という大きな特徴があります。そのため、乾燥地域の家畜といえば羊一択です

もちろん砂漠くらいまで乾燥してしまうと今度はラクダになるのですが、そんな地域で牧畜は盛んではないので、乾燥地域の家畜は羊! と考えて結構です。

分布

羊の飼育頭数が多い順に並べていくと、

  • 中国
  • インド
  • オーストラリア
  • ナイジェリア
  • イラン
  • スーダン

と、こんな感じになっています。

意外に思う人もいるのではないでしょうか。あれ、ニュージーランドは? イギリスは? 羊の国っていうイメージが全然しない国ばっかり・・・

日本人は羊肉をほとんど食べないため、羊と言えば羊毛の方に意識が持っていかれがちです。そのため、羊が多い国=羊毛生産が多い国と考えてしまいがちです。

しかしながら、世界的には羊肉の需要は結構あります。ランキングに載っている国に共通するのは、羊肉の消費量が多いという点ですね。

例えば中国ですが、中国人は羊肉を日常的に食します。消費量は牛肉より少し少ない程度で、一般的な肉であるのは間違いありません。中国出身の友達のW君も、日本に羊肉がなかなか売ってないことを嘆いていました。羊うまいから、日本人もっと羊食った方がいいそうです。

インドやナイジェリア、イラン、スーダンも羊肉をよく食べる国ですが、これは宗教的理由気候が関係しています。

インドではヒンドゥー教徒は牛と豚を食べず、イスラム教徒は豚を食べません。しかし羊はどちらの宗教でも特に食べるなとは言われておらず、牛肉のように宗教的対立も生まないので便利な食材なんですね。

他の国々、これらはイスラム教徒が国民の多数を占める国です。イスラム教で羊肉食が禁じられていないのは勿論のこと、これらの国々は比較的乾燥しています。乾燥した地域で牛を育てるのは大変なので(牛は大量の牧草と水が必要)、乾燥地でも育てやすい羊が選択されるのです。

残るはオーストラリアですね。これは間違いなく羊毛生産に主軸が置かれており(勿論肉も生産していますが)、羊毛生産でも世界二位につけています。

有名なのは大鑽井盆地グレートアーテジアン盆地)での牧羊でしょう。被圧地下水を掘り抜き井戸で汲み上げ、羊の飲み水としています。この被圧地下水は少々塩分を含んでいるのですが、羊は多少塩分が入っている水でも飲めるため、この地域の農業は牧羊が選択されたのです。

羊毛生産

さっきまで肉の話ばかりしていましたが、羊には羊毛を生産するというもう一つの重要な役割があります。

こちら、生産量が多い順にランキングにすると、

  • 中国
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • トルコ
  • イギリス

となります。だいぶ日本人がぼんやり持っているイメージに近づいたのではないでしょうか?

しかし、この順位、変じゃないですか? 中国やオーストラリアは飼育頭数が多いから分かるとして、さっきランキングにも入っていなかったニュージーランドがいきなり2位? イギリスもそうです。

これには、羊の品種が大きく関係しています。羊にはさまざまな品種があり、毛を採取する目的で作られた毛用種、食用の肉用種などがあります。

種によってかなり形態が違い、例えばメリノ種はプードルみたいな感じで毛が生え変わらないので人間が刈り取らないと延々と毛が伸び続けます。メリノ種というのは、皆さんが羊と言われて真っ先に想像するであろう真っ白でモコモコなあいつです。

メリノ種.png

それに対して肉用種の代表であるサフォーク種は、毛があまり長くなく毛の採取という観点でいえばあまり効率がよくありません。サフォーク種というのは、一言でいえばひつじのショーンです。毛が短めで、顔が黒いあれです。

サフォーク種.jpg

オーストラリアやニュージーランド、イギリスでは毛用種であるメリノ種などの飼育が中心で、羊毛をガンガン刈り取っています。一方で、中東などでは肉用種の飼育が中心で、毛の採取はあまり重視されていません。

現況

近年は羊毛不況・羊肉景気の時代で、化学繊維の台頭により羊毛の価格は低迷、一方羊肉の需要は増加傾向にあるため、以前は羊毛に全振りしていたオーストラリアでも羊肉生産へ舵を切りつつあります。

オーストラリアでは、2008/09年度に、98/99年度比で羊毛生産は41%減に対し羊肉生産量は7%増と、羊毛生産の低迷と堅調な羊肉人気が見て取れます。

このように地理で教えられる知識も日々アップデートされていきますから、決して「オーストラリアは羊毛生産!」というような単純な話ではなくなってきつつあるのです。分かりやすい説明ができなくなってしまい申し訳ないのですが、世界の現実は複雑で、分かりやすくスパっと説明できるものではないというのが本当のところなのです。すみません。。。

タグ

# 羊
# 羊毛
# 羊肉
# 羊毛工業
# 毛織物
# 大鑽井盆地