iPS細胞
iPS細胞とは
ヒトの皮膚細胞にいくつかの遺伝子を導入してつくられた[幹細胞[(https://okke.app/words/p/zWbQgA0yjcEym)のこと。
iPS細胞は、「人工多能性幹細胞」とも呼ばれる。これを英語で表すと"induced pluripotent stem cell”となるため、頭文字をとって「iPS細胞」と呼ばれているのである。
iPS細胞は、2007年に山中伸弥先生らが初めてヒト細胞での作製に成功した。(ノーベル賞も受賞!)
特徴
iPS細胞は、基本的に体のどの器官の細胞にも分化することができる。この特徴を「多能性」と呼ぶ。
iPS細胞には多能性があることから、体の組織に分化させて移植する「再生医療」をはじめとした医学や薬学分野での応用が期待されており、現在研究が盛んにおこなわれている。
つくりかた
ではここからは、iPS細胞はどうやってつくられるのか、についてみていこう。
iPS細胞は、上でも説明したとおり、皮膚などの体細胞を材料として作る。
まず、体細胞を取り出して、そこに細胞を初期化する情報を持つ遺伝子を4種類導入する。
遺伝子が導入された細胞は、細胞を初期化できるようになり、その結果、分化したはずの細胞が再び未分化な状態に戻る、すなわち初期化する。
そうして、多分化能と高い増殖力を持つiPS細胞ができるのである。
~4つの初期化遺伝子が発見されるまで~
ここで、iPSが発見された経緯のお話をしよう。(これは必ずしも覚える必要はないよ!)
iPS細胞が発見される前の、ES細胞のみが知られていた頃、山中伸弥さんは「ES細胞は未分化のまま増殖するため、細胞を未分化に戻す遺伝子が常に発現しているのではないか」という考えを持った。
そしてES細胞の遺伝子を調べたところ、細胞で数十個の遺伝子がたくさん発現してることを見つけた。山中さんは、この遺伝子の中から初期化遺伝子の可能性が特に高そうな24個の遺伝子に注目した。
実際に分化後の細胞に、この24個の遺伝子を導入したところ、細胞は初期化した。これにより、24種類の遺伝子の中に初期化遺伝子が含まれている可能性がさらに高まった。
次に、では24個のうち一体どれが初期化遺伝子なのかを特定するために、山中さんは次のような実験を行った。
分化後の細胞に、候補の24個の遺伝子から1種類だけ除いた23個の遺伝子を導入し、細胞が初期化するかどうかを観察した。
1から24までの遺伝子を1種類ずつ除き、計24通りのパターンをそれぞれ導入してみた。
すると、24通りのうち20通りは初期化し、残りの4通りは初期化しなかった。 このことから、除くと初期化しなくなった4種類の遺伝子が、初期化に必要な遺伝子だと考察されたのである⋯! そして山中さんは、「この4つの遺伝子があれば、細胞を初期化できるのではないか」と考え、実際に分化した細胞に4つの遺伝子を導入した。その結果、細胞が初期化され、これがiPS細胞の発見となったのである。
利用における課題点
iPS細胞を用いるにあたっては、いくつか課題点がある。そのため、使用には細心の注意を払う必要がある。
実は、iPS細胞は、ガン(腫瘍)化する可能性があるのだ。(ちなみにES細胞もだ)
またほかに、自分の細胞から器官を作ろうとすると、何か月も時間がかかってしまうという課題もある。
ES細胞との比較
iPS細胞は、ES細胞と比較されることが多い。両者とも同じ人工的につくられる幹細胞なのだが、材料や作り方が異なるのだ。
以下に主な違いをまとめたので、把握しておこう。
ES細胞もiPS細胞も、現在盛んに研究が行われている。
ちなみに
ES細胞は、未分化な細胞を未分化なまま増殖していたのに対して、iPS細胞は、人の手によって、一度分化した細胞を未分化に戻すことができた。この点こそがiPS細胞の優れている点であり、iPS細胞が注目される理由なのだろう。
近い将来、これらの細胞を利用した治療が、一般的な治療法の一つとなる日が来るかもしれない。
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