参考2015年1-B京都大学
ショウジョウバエや哺乳類では細胞あたり雌は2本のX染色体を雄は1本のY染色体をもちます。Y染色体の遺伝子数は非常に少ないですが、X染色体は1000以上の遺伝子数を持ちます。雌の細胞は雄の細胞の2倍のX染色体を持つにも関わらず、雄と雌のX染色体に由来する転写産物はほとんど同じです。つまりX染色体の不活性化を行っているのです。発見者メアリー・ライオンの名からこれを「ライオニゼーション」と言います。
今回はこのライオニゼーションの問題解説を行いました。
(問題内容のまとめ)
制限酵素MspⅠ:活性化X染色体→切断。不活性化X染色体→切断。
制限酵素HpaⅡ→活性化X染色体を切断。不活性化X染色体→切断しない。
(活性化したものではアセチル化、不活性化したものではメチル化が起こっている)
切断されると、PCR法によって指定の領域が増幅できない→バンドができない。
切断されないとPCR法によって指定の領域が増幅できる→バンドができる。
つまりHpaⅡを使ったものでは、
活性化しているものではバンドなし。
不活性化しているものではバンドあり。
(これが紛らわしいですよね。活性化しているものでバンドありの方が普通イメージしやすいので・・)
参考:京大2015年1-B
以下問題文(図はなし)
ヒトでは,女性はX染色体を2本,男性はX染色体とY染色体を1本ずつもつ。女性の2本のX染色体はそれぞれ父親と母親由来であるが,一方が不活性化,もう一方は活性化され,不活性化されているX染色体上の遺伝子が発現しなくなることが知られている。2本のX染色体のどちらが不活性化されるかは細胞により異なり,父親由来のX染色体が不活性化している細胞と母親由来のX染色体が不活性化している細胞の割合は,組織によっても,個人によっても異なる。DNAは4つの塩基(A:アデニン,G:グアニン,C:シトシン,T:チミン)からなる。Cはメチル(CH3)基をもつCmと,もたないCに区別することができる。
X染色体上に存在する遺伝子Aの4塩基配列CCGGは,不活性化したX染色体上においてはCCmGGに変化している。制限酵素MspⅠとHpaⅡは,ともにCCGGを認識部位とするが,MspⅠはCCGGとCCmGGの両者を切断するのに対して,HpaⅡはCCGGのみを切断し,CCmGGを切断できない。図1に示すように,PCRプライマーに挟まれた領域が制限酵素で切断されたDNAはPCR法で増幅されない。また,遺伝子Aは3塩基の繰り返し配列(CAGCAG・・・)をもち,その長さは対立遺伝子により異なるため,対立遺伝子の由来した親を特定することができる。よって,DNAをHpaⅡで処理した後にPCR法で増幅することで,女性における2本のX染色体の不活性化状態を解析できる。
いま,父親および母親の末梢血液の細胞より抽出したDNAを制限酵素処理せずに用いて,図1のように遺伝子Aにプライマーを設計しPCR法により増幅した。父親と母親由来のPCR産物を電気泳動したところ,図2の左から1番目と2番目に示すようなバンドパターンが得られた。
問6 母親のDNAを制限酵素MspⅠで処理した後,図1に示すようにPCR法で増幅した。予想される電気泳動の結果を図2に示されているバンドパターン(a)~(g)から選んで解答欄に記せ。
X染色体上に存在する遺伝子の変異が原因である疾患の多くは男性が発症するが,女性の場合,この変異遺伝子をもつX染色体が活性化している細胞の割合により,様々な程度で発症する。
いま,X染色体上に存在する遺伝子Bの変異によりタンパク質Bの酵素活性を失う疾患にかかっている患者をもつある家系を検討する。このタンパク質Bは,末梢血液の細胞でのみ発現し,末梢血液の細胞を用いた酵素活性を測定することで解析可能である。
図2に,この家系(両親と兄,姉,妹,および,母の弟の6人)におけるタンパク質Bの酵素活性と遺伝子AのPCR法の解析結果を示す。PCR法には,末梢血液の細胞より抽出したDNAを制限酵素処理しなかったもの,および,処理したもの(男性は処理しないもののみ)を用いている。電気泳動の各レーン間のバンドの太さの違いは考慮しない。
なお,この遺伝子Bは活性化されているX染色体でのみ発現する。また,遺伝子Bは遺伝子Aの近傍に位置し,組換えは起こらないものとする。
問7 母親のDNAを制限酵素HpaⅡで処理した後,図1に示すようにPCR法で増幅した。予想される電気泳動の結果を図2に示されているバンドパターン(a)~(g)から選んで解答欄に記せ。
問8 姉のDNAを制限酵素HpaⅡで処理した後,図1に示すようにPCR法で増幅した。予想される電気泳動の結果を図2に示されているバンドパターン(a)~(g)から選んで解答欄に記せ。
問9 妹のDNAを図1に示すように,制限酵素HpaⅡで処理せずにPCR法で増幅した場合と,制限酵素HpaⅡで処理した後にPCR法で増幅した場合,電気泳動のバンドパターンの組み合わせは,複数の可能性が考えられる。次の選択肢(あ)~(し)が示す組み合わせのうち,可能性のあるものをすべて選び解答欄に記せ。
図2のバンドパターンの組み合わせ
DNAのHpaⅡ酵素処理
選択肢 しなかった場合 した場合
(あ) (a) (a)
(い) (a) (d)
(う) (a) (e)
(え) (a) (g)
(お) (b) (b)
(か) (b) (e)
(き) (b) (f)
(く) (b) (g)
(け) (c) (c)
(こ) (c) (d)