ますます高くなる,日本のiPhone!? 背景の円安を考える.
米アップルが9月13日に「iPhone15」を発表しました.iPhoneは日本で大人気のスマートフォンの1つであり,新しいiPhoneに注目していた人も多くいるのではないでしょうか.iPhone15の発表では,「みんなうれしいUSB-C」とあるように,新しく「USB-Cコネクタ」を搭載するなど,色々と新しい内容が公開されていました.
https://www.apple.com/jp/iphone-15/
ただ,その中でも話題になっていたのが価格です.日本のiPhone15のエントリーモデルの価格は,去年のiPhone14のエントリーモデルより5,000円高い124,800円でした.一方で,米国のiPhone14とiPhone15の価格はどちらも799ドルと価格が変化しなかったんです.
米国では価格が変わらないのに,日本では値上げをしている?数年前と比較して日本で買うiPhoneの価格めちゃ高くなってない?なんて思った方も多いのではないでしょうか.
この背景には「金融政策の違いによって発生している金利差の拡大と、金利差の拡大による円安」が影響していると考えられています.
ただ,急に「金融政策」「金利差の拡大」「円安」と言われても,「雰囲気はわかるけど具体的にどゆこと?」て感じの人も多くいるかと思います.
この記事では,なんだか分かりにくい「金融政策」「金利差の拡大」「円安」について説明しながら,日本のiPhoneの価格上昇の背景を捉えていこうと思います.読み終わる時には,iPhoneの価格上昇の背景や日本の金融政策の状況について少し理解が深まるとともに,「経済学部ではこんなことを学ぶんだ~」という感じに経済学部への理解も深まること間違いなしです!
そのため,学部選びをこれからする方,ちょっと経済学部に興味のある方,必見です!!
前編
·iPhoneの価格の確認 ~日本のiPhoneの価格が上昇している!~
·iPhoneの価格の上昇の原因 ~円安の説明~
後編
·円安の原因 ~金利差拡大の説明~
·金利差拡大の原因 ~金融政策の説明~
日本,米国,韓国のiPhoneの価格
まず,日本と米国,さらに韓国のiPhone13,iPhone14,iPhone15のエントリーモデルのiPhoneの価格を見ていきます.
各国のAppleのサイトより
冒頭で確認したように,日本のiPhoneの価格は年々高くなっている一方で,米国のiPhoneの価格は一定であることがわかりました.また,韓国ではiPhone13とiPhone14の価格の間には違いがありますが,iPhone14とiPhone15の間には価格の変化はありませんでした.
なんででしょう?
この変化について,為替レートに着目しながら考えていきます.
日本のお金と米国のお金
では,早速価格上昇の要因の一つであると考えられている「円安」について,日本と米国のiPhoneの例を使いながら説明していきます.
まず,日本のお札を米国に持って行っても,そのお金は使えないことはご存知ですか?
例えば,米国に行って現地で何か買おうとする時,日本のお札では買い物はできません.なぜなら,米国ではドルというお金が使われているからです!
そのため,日本のお金を持っている人が米国でお買い物をしたい時には,日本のお金を米国のお金に交換しないといけないんです.しかし,米国ドルを得るためにどれくらいの円を払わないといけないのでしょうか?
この疑問に答えていくために,日本のお金と米国のお金を交換する方法を,学校の給食を例にしながら説明していきます.
たまに,学校の給食でシュークリーム等の子どもが大好きなデザートが出る時ありますよね.今回は,デザートにシュークリームが出た時を例にして,「日本のお金と米国のお金の交換方法」を「お金の人気度」の観点から説明していこうとお思います.
ある日,学校の給食でトマト,そしてみんな大好きシュークリームが出ました!
ただ,クラスのAちゃんは乳製品が嫌いでシュークリームはいらないと言いました.
そこで,Aちゃんは隣の席のB君に物々交換を提案しました,「私のシュークリームあげるから,B君のトマトを1個ちょうだい」,と.
B君はシュークリーム1個とトマト1個の交換に応じようとしました.
しかし,隣のクラスのC君が交換の噂を聞きつけAちゃんにこう提案しました.
「僕はトマト2個あげるから僕とシュークリーム交換しよう!」,と.
そうすると,B君も負けじと「それじゃあ,僕はトマト3個あげる!」それに応戦する形でC君も「それじゃあ,僕はトマト4個だ!」
こんな感じに,シュークリーム1個と交換するためのトマトの量はどんどん増えていき,最終的にはシュークリーム1個とトマト10個で交換が成立しました.
つまり,シュークリームの人気が高いがために,トマトの量で測ったシュークリームの価値が高まっていったてことですね.
この例で伝えたいことは,人気なものほど価値が高くなるということです.上の例では,最終的にトマト10個とシュークリーム1個の交換が成立したので,シュークリーム1つの価値はトマト10個分ということです.
つまり,1単位あたりの価値はトマトよりシュークリームの方が高いということです.
この「人気なものほど価値が高くなる」という法則は,お金の交換でも通用します.
例えば,日本のお金と米国のお金を比較した際に,米国のお金の方が人気があるとします.つまり,上の例でいうとシュークリームが米国のお金で,トマトが日本のお金です.この場合,日本のお金を持っている人が日本のお金を米国のお金と交換するには,日本のお金を多く払う必要があります.
つまり,米国のお金1単位の方が日本のお金1単位より人気が高い(価値が高い)場合,米国のお金を得るために日本のお金を多く払わないといけないんです.
このように「米国のお金1単位の方が日本のお金1単位より人気が高い(価値が高い)」状況を円安(ドル高)と言います.日本の円(お金)が米国のドル(お金)よりも価値が”安い”から円安です.
例えば,前までは1ドルを100円で交換できていたのに,円安のせいで円を多く払わないといけなくなってしまうと,1ドルをもらうのに140円払わないといけなくなってしまった,みたいな感じです.
逆の状況「米国のお金1単位の方が日本のお金1単位より人気が低い(価値が低い)」を円高(ドル安)と言います.日本の円が米国のドルよりも価値が”高い”から円高です.
現在,日本の円と米国のドルを比較すると,多くの人が米国のドルを欲しがっている状況(米国のドルの方が人気)であるため,円安となっています.2023/9/15時点では1ドルを買うのに147円払う必要があります.つ
まり,日本の円と米国のドルを交換する比率は1ドルあたり147円ということになります.この交換比率のことを為替レートと言います.
円安下のiPhoneの価格
ここまで長くなってしまいましたが,次に円安の状況だとなぜ日本のiPhoneの価格が高くなるのかを,iPhoneを作るApple Inc.目線で説明していきます.
米国に会社をおくApple Inc.の社長になりきってみてください.まず,米国ではiPhone15を799ドルで売ることにしました.そして,日本でも売るとしましょう.その時,考慮しなければいけないのが為替レートです.
例えば,なんとなく日本で79,900円で売ってしまう場合を考えます.1ドルあたり147円の状況では,米国ドル換算のiPhone1台あたりの売り上げは540.78ドルになってしまいます.米国での売り上げより低い売り上げになってしまっていますよね.これでは,売り上げが下がってしまい大変です.
そのため,アメリカに本社を置くApple Inc.が日本でiPhoneを売る場合は,しっかりと為替レートを考慮しなければいけないんです.
ちなみに,1ドルあたり147円の状況では,799ドルは118,056円になります.
このような感じで,iPhone13が発売された2021年とiPhone14が発売された2022年の年間平均為替レートを見ていきます.
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場情報」より
iPhone13が発売された2021年の年間平均為替レートは1ドルあたり110.8円.つまり,799ドルは日本円で88,529円.
iPhone14が発売された2022年の年間平均為替レートは1ドルあたり132.43円.つまり,799ドルは日本円で105,811.57円.
そして,現在の為替レートは1ドルあたり147円と年々高くなっていることがわかります.つまり,円安が進行しています.(ただ,一貫して為替レートが高くなっているわけではないのでご注意ください.)
このように年々円安が進行していることが,日本のiPhoneの価格上昇につながっていると言われています.
また,冒頭で見た韓国のiPhoneの価格のなぜも上の表を見ると納得がいきます.2021年から2022年にかけては,韓国ウォン安が急激に起こっています.一方で,2022年から2023年にかけては対ドルの為替レートはあまり変化がありません.
もしかしたら,これが韓国でiPhone15の価格が上昇しなかった理由かもしれないですね.
では,なぜ円安が続いているのか?一番の大きな要因は,日本と米国の金融政策の違いによる金利差の拡大だと言われています.後編では,金融政策と金利差の拡大について説明していきます.
おわり
今回は,主に円安の背景とドル高円安におけるiPhoneの価格設定について説明していきました.経済学部では,円安ドル高下ではどのような貿易がされるのか等のことについての理論を学んだり,数学が得意な人は数式を用いて論理的に学んでいったりします.経済学部では,数式を使いながら論理立てて学んでいくこともあるので,実は理系チックな考え方をする人も楽しめる学問なんです~.
今回は読んでいただきありがとうございます.後半はより経済っぽいので是非読んでみてください~.
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