源氏物語の和歌で古典力アップ!「桐壺」
源氏物語「桐壺」の和歌で古典力アップ!
大河ドラマ「光る君へ」で人気沸騰中の『源氏物語』、皆さん全部読んだことありますか?
54帖とかな〜り長い物語なので、一部しか知らない人も多いのでは?
この解説シリーズでは、『源氏物語』に出てくる和歌だけに絞って、単語力の強化や『源氏物語』を読んだ気になれるような解説を行っています。
「桐壺」の巻の概要について
出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
光源氏:1〜12歳の頃の話
あらすじ:光源氏の両親の恋が描かれ、無事に光源氏が誕生する。3歳の頃に母を亡くす。学問や芸能の能力はみるみる身につき、政争の的にならないようにあえて臣下させ、源氏姓を与えた。12歳で元服し、左大臣家の葵上と結ばれたが、桐壺更衣(母)のそっくりな藤壺に心惹かれていくのであった。
では、早速和歌を通して単語を押さえていきましょう!
小説風の現代語訳は、全て林望『謹訳源氏物語』から引用しています。
1 限りとて 別るる道の悲しきに いかまほしきは 命なりけり
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限り:
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別る:
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いか:
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まほし:
[現代語訳]
しょせん限りある命ゆえ、こうして別れていく道の悲しいにつけても、いきたいのは死出の旅路ではなく、この命をこそいきたいのでございますものを。
2 宮城野の 露吹きむすぶ 風の音に 小萩がもとを 思ひこそやれ
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むすぶ:
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もと:
[現代語訳]
この宮居の野を吹く風音を聞くにつけても、もしや、あの小さな荻の花に障りはせぬだろうかと、ただ思いやられるばかりだ。
by林望『謹訳源氏物語』
3 鈴虫の 声の限りを 尽くしても 長き夜あかず ふる涙かな
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あかず:
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ふる:
[現代語訳]
鈴虫(今の松虫)もああして鳴いております。それに釣られて私も声の限りに泣いて泣いて、どんなに泣いてもこの秋の夜長を泣き尽くしてもなお涙は尽きません。
by林望『謹訳源氏物語』
4 いとどしく 虫の音しげき 浅茅生に 露置き添ふる 雲の上人
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いとどし:
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しげし:
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露:
[現代語訳]
こんなにおびただしく虫も鳴き私も泣く草深い宿に、なおもまた、新しく涙の梅雨を添えてくださる雲の上の人ですこと。
by林望『謹訳源氏物語』
5 荒き風 ふせぎし 蔭の枯れしより 小萩がうへぞ 静心なき
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うへ:
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静心:
[現代語訳]
世間の荒々しい風を防いでいた木が枯れてしまった今となりましては、その気に守られていた小さな荻の身が気にかかって、気が休まりません。
by林望『謹訳源氏物語』
6 尋ねゆく 幻もがな つてにても 魂のありかを そこと知るべく
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[現代語訳]
ああ、あれの魂を探しに行ってくれる幻術士でもいてくれぬものか。 人づてだっていい、せめてその魂がどこにいるということだけでも知りたいから
by林望『謹訳源氏物語』
7 雲の上も 涙にくるる 秋の月 いかですむらむ 浅茅生の宿
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[現代語訳]
こうして雲の上の宮中でも涙にくれて曇っている秋の月だ、まして草深いあたりでは、どうして澄むことがあろう。やはり涙にくれて住むのであろうな
by林望『謹訳源氏物語』
8 いときなき 初元結ひに 長き世を 契る心は 結びこめつや
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[現代語訳]
幼きものが冠を着するについて、その初めて結ぶ元織に、そのほうは姫と若君との契りの願いを込めたかね
by林望『謹訳源氏物語』
9 結びつる 心も深き 元結ひに 濃き紫の 色し褪せずは
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[現代語訳]
さようでございます。たしかにその思いを結び込めていたしましたうえは、元結の濃き紫の色が、長く褪せずにいてくれること、源氏の君のお心が変わらぬことを祈るばかりでございます
by林望『謹訳源氏物語』