ユーロ
簡単なまとめ
主にEU加盟国で使用される、欧州の共通通貨。
EUの全加盟国が使用しているわけではないことに注意。
ヒト・モノ・カネが移動する際、通貨を両替する必要がなくなり、経済交流の活性化に寄与した。
一方で、自由な通貨政策がとれないことや、欧州債務危機に代表されるわずか一か国の問題が欧州全体に飛び火してしまうリスクなど、負の側面も無視できない。
ユーロ導入国
通貨の信用を担保するため、ユーロ導入には高いハードルが設けられている。したがって、欧州でも特に豊かな国しかユーロは導入できない。
なお、EU非加盟国でユーロを使用している国は、ユーロを「使わせてもらっている」ような状態。
EU加盟国
- ポルトガル
- スペイン
- フランス
- ルクセンブルク
- オランダ
- ベルギー
- アイルランド
- ドイツ
- オーストリア
- スロバキア
- スロベニア
- クロアチア
- ギリシャ
- キプロス
- イタリア
- ギリシャ
- フィンランド
- エストニア
- ラトビア
- リトアニア
EU非加盟国
- モナコ
- サンマリノ
- バチカン
- アンドラ
- モンテネグロ
- コソボ
発展~ユーロの功罪
以下はやや高校地理の範囲を超えるため、読む必要はない。通貨政策は経済・金融の範疇なので地理では踏み込んだ解説はしないし、入試で問われることも少ないが、把握しておくことは損にはならないはずだ。
通貨を統一することには良い点も悪い点もある。
利点
国を越えた取引をする際、両替をしなくて済むため、貿易が非常に楽になる。
また、旅行や国境を越えての買い物もしやすくなり、人の交流も活性化させる効果もある。
専門的な話になるが、国境を越えた投資をする際の為替リスクがなくなるので、外国への投資もしやすくなる。
さらに、通貨の価値が乱高下することを防ぐ効果もある。
欠点
通貨価値と国家の経済状況が連動しないことは、共通通貨の最大の欠点と言える。
景気が悪化した場合、金融緩和を行って自国通貨安に誘導するのが定石の景気刺激策だが、共通通貨を使用する場合、一国の都合だけで通貨価値に影響を及ぼすことはできない。そのため、景気刺激策が限定されるという問題点がある。
また、ユーロ圏の中で比較的貧しい国にとってユーロの価値は高すぎ、自国の輸出産業に不利となる。イタリア、スペイン、ポルトガルなどはこの欠点が目立っている。
逆に、ヨーロッパの中で最も経済が強いドイツにとってはユーロの価値は安く、輸出に極めて有利な状況になったことでドイツの製造業は大きな恩恵を受けた。90年代以降、ドイツが安定した成長を遂げてきたことにはこのような要因もある。
以上のように、共通通貨の導入は、経済が強い国をより富ませ、貧しい国の競争力を削ぐという問題も抱えている。
さらに、欧州債務危機のように、一カ国でも経済状況が悪化するとユーロ圏全体に悪影響が広がるという問題点もある。
欧州債務危機は、ギリシャが財政破綻したことでユーロ圏全体に信用不安が広がった事件で、ドイツなど財政の健全な国々がギリシャを支援することで終息した。
当時はユーロが暴落し、安全資産とされた日本円が買われて最高1ドル=76円台の超円高となる一因になった。