源氏物語の和歌で古典力アップ!「明石②」
源氏物語「明石」の和歌で古典力アップ!
大河ドラマ「光る君へ」で人気沸騰中の『源氏物語』、皆さん全部読んだことありますか?
54帖とかな〜り長い物語なので、一部しか知らない人も多いのでは?
この解説シリーズでは、『源氏物語』に出てくる和歌だけに絞って、単語力の強化や『源氏物語』を読んだ気になれるような解説を行っています。
「明石」の巻の概要について
出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
光源氏:27~28歳の頃の話
あらすじ:夢の中に今はなき桐壺院が現れ、源氏にこの地を去るよう命じ、現実でも同じ時に明石入道一行が訪れてきた。源氏は明石に移り、入道の強引な策略によって明石の君と結ばれたが、明石の君は自らの身分をわきまえた。源氏は当初、明石の君を不相応と思うが次第に心惹かれていった。都ではよくない事態が続いていたが、源氏は明石の君との別れを惜しみつつ帰京し、権大納言の位に就く。
では、早速和歌を通して単語を押さえていきましょう!
小説風の現代語訳は、全て林望『謹訳源氏物語』から引用しています。
秋の夜の 月毛の駒よ 我が恋ふる 雲居を翔れ 時の間も見む
- ****: [現代語訳] 秋の夜の月に、なあ月毛の馬よ、月毛と名乗っているのなら、私が恋してやまぬ都の、あの雲のあたりへ月のように翔って行っておくれ。すとしの間でも、あの愛しい人を見たいから
むつごとを 語りあはせむ 人もがな 憂き世の夢も なかば覚むやと
- ****: [現代語訳] 私は睦言を交わしあう人が居て欲しい、そうしたら、こんなに辛い世も、夢のように半ば醒めてくれるかと思いますゆえ
明けぬ夜に やがて惑へる 心には いづれを夢と わきて語らむ
- ****: [現代語訳] 無明の長夜にそのまま惑うておりますわたくしの心には、どこまでが夢、どこから醒めてのうつっと、案じ分けることもできませぬもの、夢かうつつかを弁えて語りあうことなど、とてもできません
しほしほと まづぞ泣かるる かりそめの みるめは海人の すさびなれども
- ****: [現代語訳] …しおしおとして、私はそなたのことを思うては、自然と泣けてきてしまうのです。 潮(いわ)に濡れて海松布(みるめ)刈る海士の順に相見ることは、ほんの戯れにすぎないのですけれども
うらなくも 思ひけるかな 契りしを 松より波は 越えじものぞと
- ****: [現代語訳] 私は、疑うことも知らず思い込んでいたものでした…とうして待つあいだに、『末の松山波越さじ』と契ったあなたが、まさか心変わりなさることはあるまいと
このたびは 立ち別るとも 藻塩焼く 煙は同じ 方になびかむ
- ****: [現代語訳] このたびの旅を以て、ひとまず立ち別れるけれど、藻塩を焼いている運は、同じ方角にくであろう…必ず迎えにくるから待っていておく
かきつめて 海人のたく藻の 思ひにも 今はかひなき 恨みだにせじ
- ****: [現代語訳] かき集めて海士が焼いている薬の火のような、わたくしの胸の思ひという火は、どんなに燃えさかって思っても、いわば貝(かい)のない浦見(うらみ)のようなもの、今は甲斐(かい)のないことでございます。お恨みも申しますまい
なほざりに 頼め置くめる 一ことを 尽きせぬ音にや かけて偲ばむ
- ****: [現代語訳] きっとなおざりなお気持ちで、そんな宛てにしたくなるような一言を添えて一琴を下さるのでしょうね。私はその一言を、その琴が尽きせぬ音に鳴るように、限りなく音を上げて泣きながら、あなたを偲んでおりましょう
逢ふまでの かたみに契る 中の緒の 調べはことに 変はらざらなむ
- ****: [現代語訳] また逢うまでと、二人で互(かたみ)に約束した仲(なか)ではありませんか。この形見(かたみ)の琴の中(なか)の緒の調べがいつまでも変わらぬように、二人の仲(なか)もずっと変わらないであってほしいものです
うち捨てて 立つも悲しき 浦波の 名残いかにと 思ひやるかな
- ****: [現代語訳] そなたをうち捨てて立つけれど、この浦にとうして立つ波も悲しく思えて、立ったあとで、その余波(なごり)のような悲しみの名残(なごり)が、どうであろうかと思いやられることだよ