日本文学史マスターへの道【付録】⑥『新古今和歌集』代表歌人
〔新古今時代〕
藤原定家(ふじわらのていか/さだいえ)
〔伝藤原信実筆 鎌倉時代〕
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藤原俊成の子で、「艶」や「有心」を目指したとされる
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家集『拾遺愚草』
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日記『明月記』
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歌論書『近代秀歌』『毎月抄』
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『伊勢物語』『源氏物語』『更級日記』などの古典研究にも注力した。
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余情を重視し、妖艶な歌風
源通具(みなもとのみちとも)
- 藤原俊成女の夫で、子をもうけたがのちに離別した。
藤原有家(ふじわらのありいえ)
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六条藤家の歌人。
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藤原定家などの御子左家の歌人とも近しい距離にあった。
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家集はあったらしいが、伝わっていない。
藤原家隆(ふじわらのいえたか)
〔菊池容斎・画、明治時代〕
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藤原俊成の門人で、家集『壬二集』(みにしゅう)がある。
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温和な人柄で、平淡・清澄な歌風。
藤原雅経(ふじわらのまさつね)
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飛鳥井雅経(あすかいのまさつね)ともいう
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飛鳥井家の祖で、家集『明日香井集』がある。
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鴨長明と交友があった。
寂蓮(じゃくれん)
〔寂蓮(歌川国芳画)〕
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俗名:藤原定長
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藤原俊成の養子であったが、定家が生まれたのちに出家した。
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家集『寂蓮法師集』がある。
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精巧で緻密な歌風
西行(さいぎょう)
〔西行像(MOA美術館蔵)〕
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俗名:佐藤義清
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鳥羽上皇に北面武士として仕えていたが、出家し修行と諸国遍歴を続けながら歌を読んだ。
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家集『山家集』がある。
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平明・率直な歌風
慈円(じえん)
〔慈円〕
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俗名:藤原
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関白藤原忠通の子で、天台座主になった僧。
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家集『拾玉集』や史論書『愚管抄』がある。
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自由闊達な歌風
藤原良経(ふじわらのよしつね)
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九条兼実の子で、太政大臣となった。
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定家を庇護し、その歌風を学んだ。
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家集『秋篠月清集』がある。
清新な歌風
藤原俊成(ふじわらのしゅんぜい)
〔藤原俊成(菊池容斎・画、明治時代)〕
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藤原定家の父で、歌壇の第一人者として「幽玄」について触れ主張していった。
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私家集『長秋詠藻』
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勅撰和歌集『千載和歌集』
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抒情性に溢れる歌風
→定家にも大きく影響した
式子内親王(しょくしないしんのう)
〔(1883年(明治16年)新撰百人一首より)〕
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後白河上皇の皇女で、藤原俊成に和歌を学んだ。
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賀茂の斎院を務めた。
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女流歌人としては『新古今和歌集』に一番多く入選する。
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家集『式子内親王集』がある。
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憂えを帯びた繊細な歌風
後鳥羽院
〔後鳥羽院像(伝藤原信実筆、水無瀬神宮蔵)〕
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高倉天皇の皇子。
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和歌の他に、諸芸に秀でている。
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定家に憧れて和歌を学んだ。
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承久の乱で敗北し、隠岐に流された。
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家集『後鳥羽院御集』
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歌論書『後鳥羽院御供伝』
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格調高く優艶な歌風
藤原俊成女(ふじわらのしゅんぜいのむすめ)
〔皇太后宮大夫俊成女 - 嘉永四年版女百人一首〕
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藤原俊成の養女
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家集『俊成卿女集』
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物語評論『無名草子』
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艶麗な歌風
宮内卿(くないきょう)
〔後鳥羽院宮内卿 - 寛文年間 清原雪信〕
- 後鳥羽院の女房。
- 藤原俊成女と双璧とされたが、和歌に没頭し夭折した。
〔古歌時代〕
柿本人麻呂
〔柿本人麻呂(歌川国芳画)〕
- 持統・文武朝の宮廷歌人。
- 枕詞や序詞などの修辞法を多用し、長歌の形式を完成させた。
- 後世、山部赤人とともに「歌聖」と称される。
*肖像を掲げて和歌を献じる「人麻呂影供」という風習も生まれた。
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日並皇子(ひなみしのみこ)挽歌(167番歌)は作歌年代が知れるうちの最も早いもの。
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最も遅いものは明日香皇女挽歌(196番歌)である。
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挽歌を多く残しているため、挽歌歌人と言われることもある。
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時間表現、主体操作、影の描写など歌の表現性を開拓していった。
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重厚壮大な歌風
紀貫之(きのつらゆき)
〔紀貫之(菊池容斎画『前賢故実』)〕
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仮名序を作成し、和歌の復興を高らかに宣言し、『土佐日記』も執筆した。
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見立て技法などに基づく理知的な歌風
→古今集時代の和歌表現を方向付けることになる
伊勢(いせ)
〔佐竹本三十六歌仙絵巻より〕
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宇多天皇の更衣として、寵愛を受けた。
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子の中務も有名歌人。
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『古今和歌集』では、小野小町と並んで有名な女流歌人。
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家集『伊勢集』がある。
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女流唯一の晴(非日常・公的・聖)の歌の作者。
*晴の対概念として「褻」(日常・私的・俗)がある。
- 情熱的な歌風
和泉式部(いずみしきぶ)
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〔小倉百人一首56番「あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな」〕
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橘道貞と結婚し、小式部内侍をもうける。
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やがて、為尊親王と恋愛関係になる。
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親王の死後は、敦道神王と恋愛関係となる。
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藤原保昌と再婚するが、小式部内侍に先立たれる。
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趣向を凝らした和歌の連作に才能を発揮し、平安朝屈指の女流歌人。
曽禰好忠(そねのよしただ)
〔曽禰好忠〕
- 新たな詠歌の形式や素材を和歌史に提供した。
- 家集『好忠集』がある。