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ダニエル電池


概要

「ダニエル電池」とは最も簡単な電池の1つで、正極のを浸した水溶液・負極のを浸した水溶液を素焼き板で仕切った電池のこと。日本語で説明されても意味不明ですね。

ダニエル電池_1.png

正極活物質は・負極活物質は、起電力は1.1Vであり、電池式は以下の通り。

の濃度を薄く、の濃度を濃くするとより効率が良くなります。

詳細

仕組み

ダニエル電池は、

という酸化還元反応を利用した電池です。「電池」で説明した通り、酸化剤と還元剤をリモートで反応させる必要があるため、素焼き板で溶液を仕切っています。素焼き板の働きは後で説明するとして、この電池が働くときどんな現象が起こっているかから見ていきます。

1. が電子を投げる

が導線に向かって電子を投げ、自身はとなって溶液に溶け出します。ちなみにそもそもこの酸化還元反応が起こるのは、イオン化傾向だからということにも注意。

ダニエル電池_2.png

2. が電子を受け取る

導線からやってきた電子を正極の表面でが受け取り、となって正極に張り付きます。

ダニエル電池_3.png

このときに導線を流れる電子のエネルギーを利用します。

3. が移動する

しかしこれだけでは、にはが増え・からはが減るので、どんどん電荷が偏ってしまいます。そこで、素焼き板を通して側に、もしくは側に移動することで電荷が調整されます

ダニエル電池_4.png

素焼き板とはかなり小さな穴が空いた板のことで、水やイオンをほとんど通さないけど超ゆっくりなら通すことができます。この板で基本は溶液を仕切りますが、左右で電荷が偏り始めると必要に迫られるてイオンが移動します。

以上の流れで電池として働くことができます。

電極と溶液の注意点

負極のと正極が浸っている中のが反応するのなら、は関係ないので別の溶液・電極でもいいように見えます。結論から言えば、別のものに入れ替えても電池として働きます

ただし、ダニエルさんは上で説明した溶液と電極で電池を作りそれがダニエル電池と呼ばれているので、別の溶液と電極に変えたらそれはダニエル電池とは呼べないのかもしれません。また、実は電池ではもう少し細かい現象も起こっていて(*注1)、溶液や電極を変えた結果、電池の性能が劣化する可能性もあります。

素焼き板の注意点

素焼き板とは、植木鉢っぽい材質の板です。水捌けがいい=水などの粒子が通過できるという感じです。負極のと溶液中のが直接反応しないための仕切りなわけですが、ずっと放置しておけばが徐々に移動して溶液が混ざっていきます。つまり、(素焼き板を使った)ダニエル電池は実用的な電池ではないということです。

ただ「酸化剤と還元剤をリモートで反応させる」という電池の基本をきっちり押さえていて、電池を理解する第一歩にはちょうどいいですね。

効率UPのコツ

の濃度を薄く、の濃度を濃くするとより効率が良くなります。これは化学平衡を考えればわかります。

ルシャトリエの原理から右辺が少なく左辺が多いほど反応が進みます。となるとが少なく、が多ければ良さそうですね。また単純にがなくなれば反応が止まるので、が多いほど電池の寿命も延びることになります。

補足

  • (*注1)たとえば電極をから炭素棒に変えれば内部抵抗が大きく変わります。またたとえば溶液をなどに変えて溶液中にが全く存在しなければ、化学平衡的にの方向に反応が進みやすくなり、ともすれば電池のスイッチを切っているときにも無駄に亜鉛が溶け出す反応が起こる可能性もあります。こういう超複雑な現象が絡み合っているので、とりあえずは教科書に載っている電極と溶液を鵜呑みにしておくのがいいでしょう。

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