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ベンゼン


概要

「ベンゼン」とは、分子式で表される以下のような有機化合物のこと。六角形の見た目がかわいいこともあり、理系科目のアイドル的存在です。このベンゼンが面白い性質を持つため、ベンゼンが関わる有機化合物を「芳香族」と分類して深く勉強していくことになります。

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ベンゼンはこの書き方だと、3個の単結合+3個の二重結合からなるように見えますが、実際には「非局在化」が起こることでいわゆる"6個の1.5重結合"のような状態になっています。これによってベンゼン環は比較的安定な分子になっています。

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通常、二重結合には付加反応が起こりやすいですが、非局在化で安定化しているベンゼンは置換反応の方が起こりやすいです。その他、特別に条件を整えれば付加反応や酸化開裂も起こります。

詳細

ベンゼンとは

ベンゼンは分子式で表される、常温で液体の無極性物質です。また、ベンゼンの環構造(=ベンゼン環)を持つ物質は「芳香族」と呼ばれ、有機化合物の大きな分野の一つになっています。

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ベンゼンは、簡易的には3個の単結合+3個の二重結合からなる構造で描きます。しかし実際は、余った6個の電子を六角形全体で共有します。これを「非局在化」と言います。

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この話は高校レベルを少し離れているので、より深く知りたい人は「非局在化」の方で確認してみてください。要点だけまとめれば、ベンゼンは非局在化によって、

  • 6個の結合の区別がなくなる
  • 3個の単結合+3個の二重結合より安定化する

ということを覚えておきましょう。前者の性質により、ベンゼン環が歪みのない綺麗な正六角形になったり、2置換体の異性体がオルト・メタ・パラの3種類になります(詳しくは「異性体」で)。また後者の性質により、付加反応よりも置換反応が起こりやすくなります

ベンゼンの反応

(1) 置換反応

ベンゼン環は安定なので、ベンゼン環自体が破壊される反応は比較的起こりづらいです。代わりに、ベンゼン環を維持したままの「置換反応」を起こせます。

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簡単に反応の仕組みを説明します。ベンゼン環には、非局在化によりマイナスの電子が集まっています。そこを狙って、電子好き陽イオンが攻撃を仕掛けます。しかしベンゼン環は安定なので、環構造が壊れることはなくが外れることになります。

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これが基本の仕組みです。たとえば硝酸に濃硫酸を加えると、濃硫酸に脱水されてニトロニウムイオンが発生します。こいつが攻撃を仕掛けることでニトロ化が起こります。

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似た仕組みでニトロ化、スルホン化、ハロゲン化、アルキル化などが起こります。詳しくは「置換反応」を確認しておきましょう。

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(2) 付加反応

ベンゼン環では原則置換反応が起こりやすいですが、特別な理由があれば付加反応を起こすことができます。たとえば、などの触媒化で水素が、光を照射してラジカル反応を起こすことで塩素が付加反応を起こします。

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(3) 酸化開裂

ベンゼン環は、触媒下で酸素と反応させることで、環構造が壊れてしまう反応が起こります(*補足1)。

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と言えば、接触法の中で、

を酸化するのに使った触媒です。触媒といいつつ、酸素をけし掛けて強烈に酸化反応を起こすやつ、的なイメージです。

ベンゼンの製法

自然界でベンゼンは、石油や石炭などの炭素を多く含む物質中に混在することが多いです。人工的にベンゼンを作る方法の一つに、アセチレン3分子の付加重合があります。

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具体的には、赤熱した鉄管(鉄触媒)中にアセチレンガスを通すことで作られます。問題文中にこの工程も登場することがあるので、余裕があれば頭に入れておきましょう。

補足

  • (*補足1)スペース的に省略しましたが、ナフタレンの酸化開裂も頻出です。マレイン酸もフタル酸も、分子内の近い位置に-COOHが隣接しているので、加熱した勢いで無水物になっています。 ベンゼン_13.jpeg

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