薄膜による干渉
概要
水面に、油などの薄い膜(薄膜)が広がっているとする。このとき、空気と薄膜の境界で反射した光と、薄膜と水の境界で反射した光が、干渉して色づいて見えることがある。この現象を、薄膜による干渉という。
ここでは水面上でとりあえず考えるが、実は空気によってはさまれた薄膜でも干渉が起こり、これがまさに、シャボン玉が、見る角度によって色々な色に見えるカラクリである。「薄膜」ってどんくらい薄いのか気になって、これまで夜しか眠れなかった人もいるかと思うが、思ったより薄いなとわかると思う。
まずは、干渉が起こる条件について、結論を示そう。下の図のように、厚さ
その膜へ、波長
このとき、その光の干渉条件は、
となる。明線・暗線と聞くと、レーザーのようなイメージが浮かぶかもしれないが、明線とは、薄膜上のその点が明るく見えること。逆に、暗線とは、薄膜上のその点が暗く見えること。膜として平面で見たときに、そういう点が薄膜上に直線上に並ぶので、明線・暗線と呼んでいる。
導出
こういう干渉の条件の導出はワンパターンなので、考え方を身につけてしまおう。
1. 光路差を考える
2. 位相のずれに注意する
3. 光路差が
光路差
この場合の光路差は、折れ線を伸ばすとわかりやすい。
まずは経路差を求める。
オレンジの波はそこから反射し、水色の波は
となる。点
となるので、経路差は
錯角より
を得る。(もうちょっとでゴール!)
今、経路差を求めたが、空気中の波長
薄膜の(絶対)屈折率は
となる。
位相のずれ
干渉の問題で大事な事実として、
- 絶対屈折率が小さい媒質から、大きい媒質に入射する波が反射すると、位相が
ずれる。 - 絶対屈折率が小さい媒質から、大きい媒質に入射する波が反射すると、位相はずれない。
正弦波の式を思い出すと分かる通り、位相が
この証明は大学になってから学ぶ事になるが、固定端・自由端と同じイメージで、硬そうなものにバンっとぶつかって反射するときには
なお、ややこしいが屈折波については、媒質の屈折率によらず位相は変化しない!
では、この薄膜の問題では、どこで位相がずれるだろうか。
上の図の赤の文字が、それぞれの媒質の絶対屈折率を表す。これより、オレンジの波は、反射する際に位相が
明線・暗線の条件
- 光路差が空気中(真空中)の波長
の整数倍であれば、重なった波はピタリと波形が一致するので、波は強め合い、明るく見える。つまり明線になる。 - 一方で、光路差が空気中(真空中)の波長
の整数 倍であれば、重なった波は完全に打ち消しあうので、波は弱め合い、暗く見える。つまり暗線になる。
※ この波の色は、今回の問題の波の色とは関係ありません...
一方で、どこかで位相の
- 光路差が空気中(真空中)の波長
の整数倍のとき、位相のずれを考えると、重なった波は完全に打ち消しあうので、波は弱め合い、暗く見える。つまり暗線になる。 - 一方で、光路差が空気中(真空中)の波長
の整数 倍のとき、位相のずれも考えて、重なった波はピタリと波形が一致するので、波は強め合い、明るく見える。つまり明線になる。
よって、干渉の条件(明線・暗線の条件)は、
であることが示される。
※位相のずれが片方に
補足
ここでは説明上、空気・薄膜・水の三段腹で考えたが、導出を確認すれば、何でも良いので三層構造になっていれば干渉が起こりうる(ただし屈折率の条件によって、暗線・明線の条件は異なる)んだと分かるし、それが応用力につながっていく。
厚膜じゃダメなの? と思う方もいるかもしれない。実は
また導出において、経路差のまま考えても結論は変わらない。経路差は上で見た通り、
となり、両辺に
あと、難しい問題になると、薄膜内でピンボールみたいに何回も反射しながら干渉したりするが、その際にも上の考え方で考えていけるので、とにかくこのテーマは考え方を正しく理解しよう!