概要
「けん化価」とはずばり、油脂の平均分子量を見積もる値のこと。具体的な定義は「油脂1gをけん化するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]」です。

けん化価が大きいほど平均分子量が小さく、けん化価が小さいほど平均分子量が大きくなります。

詳細
けん化価とは
けん化価とは、油脂1gをけん化するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg] です。けん化価を測定することで、油脂の平均分子量(*補足1)を見積もることができます。
油脂はエステルなので、強塩基を加えることでけん化が起こり分解します。このとき同じ1gの油脂でも、分子量が小さいほど粒の数が多いため、けん化に必要なが増えます。逆に、分子量が大きければ粒の数が少ないため、けん化に必要なが減ります。

以上より、けん化価(=けん化に必要な)で平均分子量が見積もれることがわかります。
最後に一応公式っぽくまとめておきます。油脂の平均分子量をとすると油脂1gは。油脂1粒あたり3粒の脂肪酸がくっついているので、けん化に必要な物質量はこの3倍の。よって、けん化価の定義はmgであることとに注意すると以下のように表せます。

一応公式っぽく書きましたが、意味がわかっていればその場で導出できるので、必死に暗記する必要は一切ありません。
練習問題

(解答)
けん化価とは、1gの油脂をけん化するのに必要なの質量[mg]でした。油脂の平均分子量をとすると、

以上で平均分子量を計算できました。ちなみに超ざっくりした話ですが、グリセリン+3つのステアリン酸からなる油脂の分子量は890であることを考えると、今回の答え884はそれなりに妥当そうだと考えることもできます。
補足
- (*補足1)原則油脂は自然界から取れることが多いです。だから1種類の油脂の中でも、脂肪酸の付き方が異なり分子量が異なる分子が混在するのが普通です。よってけん化価により実験的に"平均"分子量を求めています。
- 似た名前の概念の「ヨウ素価」の定義は、「100gの油脂に付加できるヨウ素の質量[g]」です。けん化価とヨウ素価で、油脂の量が1gと100g、最後の単位がgとmgで異なります。これはまあ結果出てくる値がそれなりに見やすい大きさの値になるための調整だと思っておきましょう。