源氏物語の和歌で古典力アップ!「早蕨」
源氏物語の和歌で古典力アップ!
大河ドラマ「光る君へ」で人気沸騰中の『源氏物語』、皆さん全部読んだことありますか?
54帖とかな〜り長い物語なので、一部しか知らない人も多いのでは?
このサイトは、『源氏物語』に出てくる和歌だけに絞って、単語力の強化や『源氏物語』が読んだ気になれるような感覚を持つために作成しました。
【このサイトを特におすすめする人】
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受験生で古典単語が全然わからない人
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受験生で和歌が全然わからない人
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『源氏物語』を軽〜く知りたい人
では、早速学びスタート!
683 君にとて あまたの春を 摘みしかば 常を忘れぬ 初蕨なり
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[現代語訳]
亡き父宮さまにとて、ずいぶん多くの年数を積(うんで、春の初物を摘んで差し上げましたから、今年もその常々のご奉仕を忘れずに進上いたします初でございます
by林望『謹訳源氏物語』
684 この春は 誰れにか見せむ 亡き人の かたみに摘める 峰の早蕨
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[現代語訳]
さあ、この春はいったい誰に見せたらよいのでしょうか。今は姉も亡くなってしまって…亡き父宮の形見(かたみ)として、との竹籠(かたみ)に摘んでくださった峰の早族を…
by林望『謹訳源氏物語』
685 折る人の 心にかよふ 花なれや 色には出でず 下に匂へる
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[現代語訳]
折る人の心と気心の通う花なのであろうか、見ればその梅、色には出さず、ひっそりと匂うているな・・・・・・もしや表面には顕わさねど、下心にあの姫君を思っているのではあるまいかね
by林望『謹訳源氏物語』
686 見る人に かこと寄せける 花の枝を 心してこそ 折るべかりけれ
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[現代語訳]
ただこうして賞翫しているだけの私に、とんだ言いがかりを・・・・そんなことなら、花の枝は、もっと用心して折ってもよいところであったな
by林望『謹訳源氏物語』
687 はかなしや 霞の衣 裁ちしまに 花のひもとく 折も来にけり
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[現代語訳]
あっけないほどたちまちに時は過ぎて、いつしか霞(かすみ)も立(た)お、霞(かすみ)の(愛服)を裁(た)ち着たと見るまに、はやくも花が紐を解くように咲く頃になって、その服の紐を解く時がやってきましたね
by林望『謹訳源氏物語』
688 見る人も あらしにまよふ 山里に 昔おぼゆる 花の香ぞする
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[現代語訳]
私が都へ行ってしまったあとには、もう見る人もあらじと思えるとの山荘..折しも春のあらしに吹き荒らされる山里に、昔を思い出させる花の香がしています
by林望『謹訳源氏物語』
689 袖ふれし 梅は変はらぬ 匂ひにて 根ごめ移ろふ 宿やことなる
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[現代語訳]
いつぞや一度は我が袖を触れたあの梅は、今も変わらぬ匂いがしていますが、これより根こそぎに移っていかれるという家は、もうこことは違う所なのですね
by林望『謹訳源氏物語』
690 さきに立つ 涙の川に 身を投げば 人におくれぬ 命ならまし
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[現代語訳]
老いたわが身に、まず先立つものは涙々々、いっそその涙の川に身を投げてしまったなら、こんなふうに姫君に死におくれるというようなこともありませんでしたろうに
by林望『謹訳源氏物語』
691 身を投げむ 涙の川に 沈みても 恋しき瀬々に 忘れしもせじ
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[現代語訳]
そなたは涙の川に身を投げたいという、いや、私とて思いは同じだが、その厚の川の底に沈んだとしても、恋しい思いに駆られる折々は、とてもあの姫君のことを忘れることはできぬにちがいない
by林望『謹訳源氏物語』
692 人はみな いそぎたつめる 袖の浦に 一人藻塩を 垂るる海人かな
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[現代語訳]
他の人たちはみなど新居へ発(た)の準備とて、衣を裁(た)つことに余念もないように見える袖の浦(うら)の浜辺にて、わたくしひとりは、まるで漢塩の黒を垂れている海士のように、その神の裏(うら)に涙をぽたぽた垂れでいる尼でございます
by林望『謹訳源氏物語』
693 塩垂るる 海人の衣に 異なれや 浮きたる波に 濡るるわが袖
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[現代語訳]
そなたは、藻塩垂れる海士の衣だと言うけれど、私だって、ちっとも変わることはありませんよ。ふわふわとどとへ漂っていくかも分からない今の私は、浮いて漂って彼に濡れて、そして源に濡れるわが油なのですからね
by林望『謹訳源氏物語』
694 ありふれば うれしき瀬にも 逢ひけるを 身を宇治川に 投げてましかば
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[現代語訳]
生き長らえていればこそ、こんな嬉しい瀬にも巡り合えるものを、これで早まって、我が身を心憂(う)く思って、この宇治川(うじがわ)に身投げでもしてしまっていたら…ああ、どれほど梅やまれたことでしょう
by林望『謹訳源氏物語』
695 過ぎにしが 恋しきことも 忘れねど 今日はたまづも ゆく心かな
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[現代語訳]
お亡くなりになられた姫君が恋しいという思いも忘れはしませぬが、今日はまた、何といっても晴れやかなところへ行(ゆい日、心ゆくまで嬉しく感じられま
by林望『謹訳源氏物語』
696 眺むれば 山より出でて 行く月も 世に住みわびて 山にこそ入れ
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[現代語訳]
こうして空も遥かに眺(なが)めながら、沈愁(ながめ)てみると、あの山から出て西へ行く月も、結局は、この俗世には住(す)みかねて…ああして澄(す)みつづけてはいられなくなって、西の山に入るのですね
by林望『謹訳源氏物語』
697 しなてるや 鳰の湖に 漕ぐ舟の まほならねども あひ見しものを
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[現代語訳]
しなてるや(注、「しなてるや」は「鳩の湖」にかかる枕詞)鳩の湖…あの琵琶湖を漕いでゆく船が風をはらんだ真帆(まほ)…真剣(まほ)に契ったわけではないけれど、たしかにあの夜あの姫とひとつ金に共寝はしたものを
by林望『謹訳源氏物語』
「早蕨」の巻について
薫:25歳の頃の話
あらすじ:大君の死に暮れる中、光も見え始める。匂宮が中君を迎え入れ、薫は世話役に徹する一方、未央飲み屋に譲ったことを後悔する。
出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」